最新世界半導体企業ランキング、直近の四半期決算から算出
世界の主要半導体メーカーの2023年7〜9月期の業績発表が出そろった。セミコンポータルがまとめた主要半導体企業のこの四半期における売上額を整理した(表1)。企業によっては決算期が1月ずれているところもあるが、決算期を明示しできる限り最新のデータを集めた。これによれば、1位は初めて首位に立ったNvidia、2位がTSMC、3位Intelとなった。
表1 最新の四半期における世界の主要半導体メーカーの売上額 出典:各社の決算発表資料をセミコンポータルがまとめた
この表1は、世界の半導体メーカーが発表した決算報告を集めたものであり、ファブレスもファウンドリ、IDM(Integrated Device Manufacturer)も含めている。半導体企業の規模感を示すためである。
前年同期比約3倍も売り上げた第1位のNvidiaは言うまでもなく、生成AI需要である。生成AIは従来の「専用AI」と比べソフトウエアの規模が桁違いに大きく、学習させるのに必要なGPU(グラフィックプロセッサ)が数千個以上も必要である(チャットGPTでの回答)。このため求められるGPU数量も桁違いに大きくなり、需要が供給をはるかに上回るという結果につながった。GPUの正確なチップ面積をNvidiaは明らかにしていないが、1辺が10mmを超す巨大なチップであり、価格も高い。GPUカードには百万円を超すものもある。また、チャットGPTのGPT-3の学習には当時最先端のGPUでさえ300日もかかったと言われている。もっと高性能なGPUへの期待は大きい。
2位は172.9億ドルを売り上げながらも前年同期比14.6%減のTSMC、3位は同8%減のIntel社、4位はメモリメーカーのSamsung、5位はデータセンターネットワークに強いBroadcomという順になった。これらの中でNvidia以外、BroadcomとAMD、STMicroelectronics、Sony Computer Solutionsだけがわずかなプラス成長となり、残りの企業は全てマイナス成長になった。
特にメモリメーカーは全て2桁マイナス成長となっており、回復が最も遅れている。それでもAIやHPC(高性能コンピューティング)分野で需要が高まっているHBM(High Bandwidth Memory)でトップを行くSK Hynixの落ち込みが17%減と最も低く、HBM開発で出遅れたMicronは40%減と最も悪い。NANDフラッシュしか手掛けていないキオクシアもDRAM需要を受けられず38.3%減。
半導体の応用では特にスマートフォンとパソコンの需要が低迷、流通在庫を吐き出し続けているが、まだ過剰在庫が続いている状況だ。このため特にスマホ向けの半導体メーカーの売り上げが悪い。
日本メーカーは、ドル表示で世界のメーカーと比較されるため、超円安が続いている状況では世界から遠く離されてしまっている。かつて日本の半導体メーカーが初めてトップに立った1985年はプラザ合意で円高が容認され、いきなり上位に複数社が上がったことを思い出す。円高は国際競争をするうえで日本経済の強さを示す指標でもある。150円という超円安が続く限り日本企業が世界企業と競うことは難しい。最近は日本経済新聞でも11月25日の朝刊で「『円安無策』の時代に幕を」という表題のオピニオン記事を掲載している。