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中国市場、減速するも稼ぐTEL、ニコン、米国は中国のRISC-Vを警戒

11月10日、東京エレクトロン(TEL)の2023年7〜9月期の決算発表で、中国向け製品の売上額が全体の40%以上も占めることが明らかになった。ニコンも中国向けにi線の露光装置を積極的に売り出す。ただ、中国市場全体は減速している。経産省の2023年度補正予算で半導体・生成AI支援に2兆円を充てることが報じられた。

東京エレクトロンが発表した2024年度第2四半期(23年7〜9月期)の売上額は前年同期比39.7%減の4278億円と大きく減少した。それでも営業利益率22.5%の営業利益961億円を確保した。2024年度上半期で見れば、前年同期比20.1%減の8195億円と減少率は小さい。8月10日に発表した時の上半期は7900億円であったため、予想額よりは295億円大きい。

世界全体の半導体製品そのものは昨年の11月から2023年5月までは前年同月よりも1000億ドル前後の低下であったが、6月以降連続して300億ドル前後の低下にとどまっており、回復基調に入ったことは確かだ。半導体製品の回復基調を受けて、装置メーカーTELも回復基調に入っている。半導体不況が入り始めた1年前の7〜9月期はTELとして最高レベルの7092億円を稼いでいたため、そのピーク値から見ると落ちてはいるものの、四半期ベースでは前四半期の3917億円が底で、前四半期比は9.2%増となり回復しつつある。


地域別売上高構成比(FY2024 Q1-Q2) / 東京エレクトロン

図1 東京エレクトロンの23年7〜9月期の地域別売上額 出典:東京エレクトロン


TELの今期売上額4278億円の内、最も多く稼いだ地域は中国の1829億円で、TEL全体の42.8%を占めた。2位が韓国市場の674億円であるから、中国市場の比率は圧倒的に大きい。これまで中国向け最高額を稼いだ前年同期は1686億円であったから、その時よりも8.5%増えている。1年前はTEL全体でも中国向けは23.8%しかなかったために今期の中国向けは極めて大きいといえる。


かつてリソグラフィ装置で世界トップだったニコンは、今やシェアは7%まで落ちた。半導体製造装置で巻き返しを図るニコンは、中国向けに波長365nmのi線ステッパ露光機で勝負をかける。成熟プロセス向けのリソグラフィ装置で中国市場を攻め、シェアを上げようという狙いのようだ。報じた11月7日の日本経済新聞は、「ニコンは装置の性能を抑えて非先端品の半導体生産にしか使えないようにした。こうした対応の結果、大半の製品が『輸出管理の対象外になると認識している』という。浜谷正人・精機事業本部長は『経済産業省と議論しており、問題ないと考えている。中国でしっかり販売していく』と意気込む」と報じている。

ただ、中国市場全体は減速している。10日の日経が世界の製造業1万3000社の業績を集計した結果、7〜9月期の純利益は前年同期比9%減の1兆981億ドルとなり、4期連続減益だった、と報じた。特に中国向け売上比率が30%以上の日中国企業約240社の純利益は3割減り、中国比率10〜30%の企業は1%減、同比率10%未満の企業は7%増となっており、中国依存の企業ほど減少額は大きい。

中国市場に対しては特に米国が軍事転用を懸念している。オープンソース技術である新しいCPUコアのRISC-Vを、中国の半導体開発に米国企業が関わることを規制するように米国の一部の連邦議員がバイデン政権に働きかけている、と8日の日経が報じた。RISC-Vは米国と中国で採用する企業が急速に増えていることから、中国への規制を働きかけた格好だ。日本では立ち上がりが極めて遅いが、米中ではRISC-Vを専用プロセッサとして採用する動きが急である。


経済産業省は2023年度の補正予算案で、半導体や生成AI(人工知能)の支援に2兆円を充てる、と9日の日経が報じた。TSMCの熊本工場などに7700億円、ラピダスの試作ラインやIntelの研究拠点の整備などに6500億円、PSMCの宮城工場建設費用や製造装置、パワー半導体に4600億円を追加する、と伝えている。生成AIには1900億円を充てるという。

(2023/11/16)
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