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キオクシア、WDとの統合ならず、SBI/PSMC、デンソーなど半導体投資は活発に

キオクシアホールディングスとWestern Digitalとの統合交渉が頓挫した、と10月27日の日本経済新聞が報じた。SBIホールディングスと台湾のファウンドリPSMC(Powerchip Semiconductor Manufacturing Co., Ltd)が日本に半導体工場を設立することで合意していたが、宮城県に作る方針を固めた、と28日の日経が報じた。デンソーは2030年までに5000億円を投資、ソシオネクストは3nmプロセス向け設計を手掛ける。

四日市工場 / キオクシア

図1 キオクシアの四日市工場 出典:キオクシア


日経によると、WDは26日までにキオクシアに交渉打ち切りを通知した。キオクシアに出資している韓国のSK Hynixの同意が得られなかったためだとしている。SK Hynixは、もともとDRAMに力を入れており、NANDフラッシュはそれほど強くない。このため、キオクシアに出資し、NANDフラッシュの強化に役立てようとしていた。

2023年第2四半期のSK Hynixの実績では、DRAMの売上比率は全社売り上げの62%だがNANDフラッシュは30%にすぎない。その他を合わせ全社7.3兆ウォン(53.9億ドル)の売上額となっている。1年前の実績でもNANDフラッシュの売り上げは全社のそれの32%にすぎなかった。TrendForce社の2023年第2四半期でのNANDフラッシュの売上額では1位Samsungに次いで2位はキオクシア、3位SK Hynix、4位WDとなっている。SK HynixはHBM(DRAMを3次元ICとして4枚あるいは8枚積層した高バンド幅の製品)では世界トップシェアを占めているが、NANDフラッシュでは買収した大連のIntel工場生産分を加えて全社の30%程度にとどまっている。

SK Hynixとしては何とかしてキオクシアに追いつきたいところだが、もしWDと統合するとなると、SKの出資額は薄まり立場は相対的に弱くなる。また、ビジネス的にはWD+キオクシアとなれば、追いつくことは極めて難しくなる。このためHynixは最後まで反対の姿勢を貫いた。半導体、特にメモリの業績は悪いが、最近発表されたSK Hynixの第3四半期の全社売上額は、前四半期比24%増の9.66兆ウォン(71.2億ドル)となっており、メモリは回復傾向にある。キオクシアも回復傾向にあると期待される。


10月28日の日経によると、SBIとPSMCと協議中の半導体ファウンドリ工場を宮城県に建設、第1期工場に約4000億円を投資し26年の稼働を目指すとしている。経済産業省は第1期の投資額の約3割に相当する最大1400億円を補助する計画だという。仙台市近郊の工業団地などが候補地となると日経は伝えているが、仙台市近郊は半導体技術に強い東北大学があり、半導体関連の材料や製造装置メーカーも進出している。半導体製造のインフラが整った地域である。

複数棟の工場を計画しており、第1期は24年に着工する。総投資額はおよそ8000億円とみられる、と日経は報じている。2社は共同出資会社を国内に設立する。出資比率はSBIなど日本勢が過半を占めることで調整しているという。

27日の日経は、「デンソーの林新之助社長は26日、東京ビッグサイト(東京・江東)で開催中の『ジャパンモビリティショー2023』で2030年までに半導体分野に約5000億円を投資すると明らかにした」、と報じた。デンソー傘下でソフト開発を手がける企業も吸収合併し、一体となって開発することで開発スピードを現在の2倍に高めるという。デンソーはシリコン半導体だけではなくSiCパワー半導体も開発している。

ソシオネクストはTSMCの最新の3nm車載プロセス「N3A」を採用したADAS(先進運転支援システム)および自動運転向けのカスタムSoC(System-on-Chip)開発に着手した、と10月23日に発表した。20年の量産を目指す。24日に東京六本木で開かれたTSMCのOIP Ecosystem Forumでもソシオの吉田久人取締役が登場し、TSMCのN3プロセスで自動車、ネットワーキング、データセンターといった3つの分野でそれぞれ基本となるプラットフォームのSoCを3nmプロセスで設計すると述べている。TSMCから半導体に詳しいパートナーとしてソシオネクストが選ばれたという。

(2023/10/30)
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