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華為のスマホ用SoC、SMICの7nmプロセスで作製、九州のTSMC体制着々と

中国の通信機器メーカー華為科技が最新発表したスマートフォン「Mate 60 Pro」に搭載されているSoC「Kirin 9000s」がSMICの7nmプロセスで製造されていることがわかった。また、TSMCの誘致に成功した熊本をはじめ九州が再びシリコンアイランドの様相を示し始めた。中国にある韓国2社と台湾TSMCに対して米国製半導体製造装置を再び容易に輸出できることになった。

中国のファウンドリSMICが7nmプロセスで「Kirin 9000s」を製造したといわれる根拠は、華為が8月末に発売したスマホをカナダの調査会社TechInsightsが分解調査した結果、わかったもの。10月15日の日本経済新聞が報じた。スマホの頭脳となるアプリケーションプロセッサ「Kirin 9000s」は、従来の14nmプロセスで製造されたプロセッサ「Kirin 9000」と比べ、チップ面積が105mm2から107mm2に増加した。従来チップよりも機能が増えているのにもかかわらず、チップ面積はそれほど増えていないことになる。

また、今回のCD(Critical Dimension)は、TechInsightsがこれまでに分析した5nmプロセスノードのチップで観察したCDよりも大きかった。この分析会社は、ロジックゲートピッチや、FinFETのFinピッチ、BEOL(Back-End of Line)の配線ピッチなどから、7nmプロセス、と結論付けたという。

実際の寸法であるCDと、プロセスノードの7nmという数値とはかなりかけ離れているため(チップ上に7nmという微細な寸法は存在しない)、TSMCやIntel、Samsungなどのファウンドリメーカーは、エリアスケーリングで表現する(TSMCは密度スケーリングと呼んでいる)。各社の呼び名はまちまちだが、DTCO(Design Technology Co-Optimization)という呼び名で学術論文では表現されている。

DTCOでは単位面積当たりのトランジスタ数で、Xnmプロセスノードと表現する。例えば、単位面積当たりのトランジスタ数が9000万個/mm2だとTSMCの7nmプロセスに相当する。このトランジスタ数は、Intelの10nmプロセスに近い。今回のKirin 9000sでは8900万トランジスタであったことから7nm相当のプロセスと呼ぶことは妥当であろう。


建設中のTSMC第1工場 2023年3月撮影

図1 建設中のTSMC第1工場 写真は2023年3月時点 出典:筆者の友人より提供


TSMCの熊本第1工場の建設(図1)が着々と進む中、第2工場に対する政府の予算の準備が進んでいる。10月13日の日経によると、TSMCが日本国内で回路線幅6nmの国内最先端の半導体製造を計画していることがわかり、熊本第2工場で製造するという。総投資額はおよそ2兆円で、経済産業省が最大9000億円ほどの資金支援を検討するとしている。TSMCの第2工場は、24年夏をメドに着工し、27年に量産を始める見通しで、6nmや12nmの演算用のロジック半導体の量産を見込んでおり、ソニーグループなどに販売する計画だという。

熊本にTSMCの工場が完成し、サプライヤやユーザーなどとの取引が始まることに備え、台湾の中堅銀行である台新国際商業銀行が福岡市内に出張所を置くという計画を13日の日経地方版が報じた。日本の関係当局の承認を前提に2023年上半期の開業を目指す。日本に進出する台湾企業法人顧客を支援する。

九州は熊本だけではなく、福岡や長崎でも半導体人材育成の教育が活発になっている。11日の日経地方版によると、九州大学では、10月5日に新講座「半導体技術マップ」が始まった。この講座は、6月に九大が開設した「価値創造型半導体人材育成センター」が学部学生向けに用意したカリキュラムのひとつ。同センターは社会のニーズを踏まえた半導体の材料開発や設計、製造を担うスペシャリストの育成をめざす新組織だ。長崎大学でも11月に「マイクロデバイス総合研究センター」を開設する。半導体の回路設計や新素材の開発に加え、各種センサやバッテリなども組み合わせたマイクロデバイスを実社会でどのように活用していくかも学ぶ。熊本大学でも24年4月に半導体デバイス工学課程を開設、さらにデータサイエンスなどを用いて品質管理に当たる人材を、DS半導体コースで育成する。


韓国のSamsungとSK Hynix、台湾のTSMCはそれぞれ中国内に工場を持っているが、自社工場に半導体製造装置を追加投資することが米国政府に認められた。米政府は2022年10月に半導体の先端技術を中国に導入するのを規制した。いわゆるオクトーバーセブンである。米国政府は韓国2社に対して1年間の猶予期間を設定していた。今回の許可によって、米国半導体製造装置メーカーは韓国2社とTSMCの中国工場に装置を特別な申請がなくても輸出できるようになる。

(2023/10/16)
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