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iPhone 15 Pro、Apple Watch Ultra 2に新型半導体が搭載

先週、Apple社の新しいiPhone 15およびiPhone 15 Proが発表され、Pro製品には初めて3nmプロセスの量産品である新しいCPUチップ「A17 Pro」が搭載されることがわかった。またArmがNASDAQ市場に株式上場され、当初の売り出し株価51ドルが14日の終値は25%高の63.59ドルまで上昇した。

iPhone 15 Pro, Pro Max / Apple

図1 9月22日から売り出すiPhone 15 ProとPro Max 出典:Apple


発表されたiPhone 15にはiPhone 14 Proの「A16 Bionic」チップが搭載されており、iPhone 15に割安感(799ドルから)を持たせ、iPhone 15 Proは200ドル高い999ドルと設定した。最上位機種のPro Maxはストレージ容量を従来の128GBから256GBへと大きくし価格を1199ドルとしている。半導体不況の中でストレージ用のNANDフラッシュが値下がりを続けてきてもセットの小売価格を下げていない。

TSMCの4nmプロセスで製造されていた従来のA16 Bionicチップと比べ、CPUはマイクロアーキテクチャの設計の改良で、チップ性能を10%高速化し、Neural Engineを最大2倍高速化したという。これによって自動補正やPersonal Voice機能を強化したという。自動補正とはどのような機能を補正するのかについては明らかにしていないが、Personal Voice機能は、声を発することができない人のために開発された技術で、テキストを読んで音声を録音するのに15分で済むという。従来の方式だと1500の文を録音するのにかなりの時間を要したとしている。

A17 Proチップは、むしろグラフィックス機能を強化したようだ。GPU設計を再設計し大幅に改良したという。ピーク性能やエネルギー効率を上げるためにGPUには6コアを集積し20%高速化したという。さらにこれまでソフトウエアベースで行っていた Ray Tracing機能を専用IP回路で構成したことによって4倍高速化した。これによって実写のような鮮明なグラフィック動画がスムーズに動くようになり、ARなどでは没入感が増すという。

加えて、A17 ProにはビデオデコーダAV1機能を集積し、ストリーミングビデオの高速化に対応した。4K画質のビデオを60fpsという高速のフレームレートで再生できるようになったためスローモーション動画を鮮明に描くことができる。A17 Proチップの詳細はこれ以上明らかにしていない。

iPhone 15/ 15 Proに合わせて発表されたApple Watch Ultra 2の半導体「S9 SiP」もやはりAppleが独自に設計した製品で、SiP(System in Package)構造となっている。搭載したダイの種類などは公表していないが、前モデルのApple Watch Ultraと比べ、Neural Engineを4コア集積し機械学習プロセスを2倍高速化しているという。Neural Engineは、加速度センサとジャイロスコープ、光学式心拍センサからのデータを、新しい機械学習アルゴリズムを使って処理することによってさまざまなジェスチャー機能を実現する。

Apple Watch Ultra 2では特に新しいタップ方法を採り入れている。これは、Apple Watchを着けている手の人差し指と親指を2回タップすると、画面の表示を変えることができるため、もう一つの手がふさがっているときに使える便利な機能になる。この機能は、人差し指と親指でダブルタップを実行する時のわずかな手首の動きと血流の変化による独特なサインを検出しているという。

Armの上場では、ソフトバンクグループ(SBG)が持っているArm株式の10%を売り出しており、1株当たりの売り出し価格を47〜51ドルとしていたが、その上限の価格に決めた。初日の最終価格は63.59ドルまで上昇したが、2日目は4%安の60.75ドルで取引を終えた、と16日の日本経済新聞が報じている。

Armだけではなく、この日の半導体銘柄が一様に下がり、Nvidiaが4%安、Intelは2%安となっている。これはTSMCが最先端半導体向け製造装置の納入を遅らせるよう取引メーカーに要請したと報じたというニュースを受け、半導体の需要低迷を警戒したものだとしている。上場によって、SBGは約8兆円の資産が増えたという。

(2023/09/19)
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