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ラピダスの進展、社員200名確保、高圧ガスは海上輸送へ

半導体産業は着々と進んでいる。ラピダスの進展状況について、9月8日の日経産業新聞が報じている。9月1日に北海道千歳市で起工式を行ったときに日経が取材して報じたもの。また、半導体産業に欠かせない技術者をはじめとする人材の強化策について福岡県が方針を打ち出し、北海道でも議論が始まっている。

起工式での小池淳義代表取締役社長 / ラピダス

図1 9月1日に千歳市で行われたラピダスの起工式 出典:ラピダス


ラピダスは9月1日に起工式(図1)を行い、海外から米LAM ResearchやオランダのASML、ベルギーの半導体研究所imecの幹部も出席した。ラピダス社の進展について日経産業が報じている。同社は9月1日時点での社員数は約200名で、内60人の技術者が米ニューヨーク州オールバニにあるIBMの半導体研究拠点で2nmプロセスノードの設計技術を学んでいるという。2nmという寸法は、チップ上の実寸法である13nm前後から大きくかけ離れており、設計、特にトランジスタと配線の3次元化を進める必要がある。MOSトランジスタと配線、スルーホールなどレイアウトがこれまでの、7nm、5nm、4nm、3nmのライブラリとは大きく異なるためレイアウト設計技術の習得がマスク設計には欠かせない。

ラピダスの製造に欠かせない半導体製造ガスの供給に関しても、これまで高圧ガスは青函トンネルを通れないという規制があり、その対処法が問題視されてきた。半導体材料ガスを扱う大陽日酸電子機材ガス事業部の野尻昌史課長は、「東京港か横浜港からガスを海上輸送する」結論づけた(9月8日の日経産業)。大陽日酸は24年に産業ガス供給用の設備を着工し、25年1月からラピダスの新工場にガスを供給する計画。25年4月から稼働するラピダスの試作ラインに間に合わせるためである。

ラピダスの工場建設は鹿島建設が4月に選定されており、24年の10月までに建屋を完成させて試運転を始める計画となっている。24年末からは次世代半導体の製造に欠かせないEUVリソグラフィ装置など、大型設備の搬入を始める。

2nmプロセスノードでは、実寸法の13nm前後を加工するため、波長13.5nmのEUVリソグラフィが欠かせない。その先にはダブルパターニング技術も使うと見られており、唯一のEUV装置サプライヤーであるASMLの協力が欠かせない。ASMLにはすでに台湾に4500名程度のメンバーが常駐していると言われており、ASMLとの協力は必要不可欠。ASMLのEVP & Chief Business OfficerのChristophe Fouquet氏は、25年までにラピダスに導入するようにしっかり準備を進める、と話したという。EUV装置と一緒に使う、レジスト塗布現像装置であるコータ・デベロッパは東京エレクトロンに発注しているという。

ただ、試作ライン稼働までに2兆円、27年の量産までに合計5兆円が必要と日経は報じており、その資金調達に関しては今のところ明確になっていない。ただ、3300億円の国家予算があてがわれているが、全て税金で賄うのか、民間からの調達も含めるのか、まだ明らかにしていない。全て税金なら国民を納得させるための説明が求められる可能性がある。

福岡県は、このほど半導体分野に特化した人材育成拠点「福岡半導体リスキリングセンター」を福岡県産業・科学技術振興財団(福岡市)の施設内に開設し、eラーニング形式で最先端半導体の設計や関連技術を学べる計20講座の配信を始めた、と8日の日経産業が報じた。10月以降は対面での講座も順次予定している。県内の中小企業に無料で提供し、関連産業の振興につなげるという。

北海道でもラピダスの進出を踏まえ、半導体の製造や研究、人材育成の複合拠点の実現を目指す「北海道半導体関連産業振興ビジョン」を検討する有識者懇話会の初会合を9月8日に開いた、と日経地方版が伝えた。北海道は12月上中旬に開催予定の3回目の懇話会でビジョンの素案を議論し、パブリックコメント(意見公募)を経て、2024年3月に最終決定する方針。

(2023/09/11)
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