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インドでの半導体集積基地が現実的に

デリスキング(De-risking:脱中国)への動きから、インドに半導体集積基地を作ろうとするインド政府の呼びかけに西側諸国が応じている。インド政府は日米連携の覚書を交わした。米国のApplied MaterialsやLam Research、Micronなどが早速インドへの投資を強化する。ディスコもインド拠点を検討する考えを示し、鴻海精密工業がApplied Materialsと組んで半導体製造装置をインドで作る。

7月31日の日経産業新聞は、AMATがインドのバンガロール市にエンジニアリングセンターを設立し、製造装置の部品やシステム開発を進める計画を報じた。センターの設立のために今後4年間で4億米ドルを投資、半導体人材の育成も行う。Lamは、インドで次世代の半導体エンジニアを育てるため、仮想空間上に半導体の製造プロセスを再現してトレーニングできる環境を提供する予定である。


バンガロールとハイデラバードにあるMicronのインドオフィスを訪れたSanjay Mehrotra CEO / Linked-In

図1 MicronのインドオフィスでのSanjay Mehrotra CEO 出典:Linked-Inの同氏のページ


Micron TechnologyのCEOであるSanjay Mehrotra氏は、バンガロール市とハイデラバード市にある同社のオフィスを訪れ(図1)、従業員を鼓舞した(参考資料1)。ここでは、DRAMとNANDフラッシュの先端半導体の設計とスマート製造技術、ITなどを手掛ける社員であり、従業員は4年前の数百名から現在3200名に増やし、成長が著しいと述べている。ハイデラバードでは大学を卒業した若いエンジニアとも話を交わしたという。

Mehrotra氏は1週間前にはインドのモディ首相とも会っており、西部のグジャラート州にDRAMとNANDフラッシュ製品の組み立て工場の設立を計画しており、インドに投資する可能性について話をしたという。新工場では5000名を雇用し、数年後には1万5000名に追加する予定だとも述べた。日経産業によると、プロジェクト費用の50%をインド政府が支援し、グジャラート州もプロジェクト費用の20%に相当する奨励金を支払うという。

国内でもディスコの吉永晃副社長は顧客支援や営業活動用の拠点を「インドに用意したい」と述べた、と8月1日の日経が報じた。切る、削る、磨くの3つをコアコンピテンスとするディスコは、顧客の要望に応じ加工実験などを担う「アプリケーションラボ」の開設を想定し、顧客企業のインド展開の進捗を踏まえ、具体的な検討を進める、と述べている。

台湾の鴻海は、インドの天然資源技術会社Vedantaと半導体製造会社を立ち上げるプロジェクトを進めてきたが、1カ月前にVedantaとのプロジェクトを解消した。鴻海はインドで半導体製造会社を設立する意向はあるが、Vedantaは半導体製造の経験がなく、半導体製造企業を探していたところ、メドが付かずコンビを解消したようだ。その直後にAMATとの共同プロジェクトを発表した。新プロジェクトはインド南部のカルナタカ州政府と鴻海とLOI(意向表明書)を締結したと4日の日経は伝えている。AMATとの半導体製造装置の生産に200億ルピーを投資するだけではなく、iPhoneの外装部品の生産も行いこれに300億ルピーを投資するという。1ルピーは約1.7円。

AMDは今後5年間で4億ドルをインドに投資し、2028年までに3000名を擁するデザインセンターにする計画だ。カルナタカ州のバンガロールに新しいAMDキャンパスを建設する。今年中に一部ラボを開設、最新の共同で設計するツールなどを揃える。AMDは2001年からすでにインドのデリーやムンバイなどにオフィスを構えてきて6500名の従業員がいる。バンガロールのデザインセンターはインド最大の施設になる。

先週のニュースでは、キオクシアホールディングス(HD)が岩手県北上市に建設中の製造棟の稼働時期を、当初予定していた2023年中から24年以降に延期すると8月6日の日経が報じた。スマートフォンやパソコンの需要が回復せず、ようやく底を脱出したばかりで回復に向かっているものの、メモリ不況前の状況には戻っていない。

キオクシアだけではない。Samsungも23年下期以降の減産を続け、NANDを中心に生産量を下方修正すると8月6日の日経は報じている。さらにSK HynixもNANDフラッシュの在庫水準がまだ高く、さらに5〜10%減産するという。

ただし、NANDフラッシュと違い、DRAMは大口取引価格が下げ止まった、と1日の日経が報じた。DDR4の4Gビットおよび 8Gビット品が共に前月と同じ値段で落ち着いた。日経は、ある半導体商社から「サーバー関連でDRAMの注文が入り始めた」というコメントを紹介している。生成AIプロセッサの需要が極めて強く、GPUやAIプロセッサのそばにDRAMを置くことで性能を上げる。DRAMとしてはDDR5あるいはHBM3が求められている。

参考資料
1. Sanjay Mehrotra氏のLinked-InのActivity page

(2023/08/07)
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