日本各地に半導体ユーザーからサプライヤーまで新拠点建設相次ぐ
半導体の開発拠点や工場を新設する動きが相次ぐ中、半導体ユーザーである米国IT業者を自治体が誘致し始めた。日本のITは世界では圧倒的に弱いため、これを強化する必要がある。Microsoftは神戸市にAI Co-innovation Labsを設立する。半導体側もキオクシアや、SUMCO、SCREEN、凸版などがポスト半導体不況に向け新拠点・工場を設立する。
6月11日の日本経済新聞は、8月をめどにMicrosoftが神戸市の神戸商工貿易センタービルに「AI Co-innovation Labs」を開設すると報じた。このラボは現在、Microsoftの本社がある米ワシントン州シアトルの隣町レッドモンド、ドイツのミュンヘン、中国上海の3カ所にあるが、神戸は4カ所目となる。IoTおよびAIを使ったソリューション、すなわちDX(デジタルトランスフォーメーション)化を提供するための共同ラボである。MSはクラウドを利用するIoTプラットフォームであるAzureを提供しており、これを利用してDXを推進する支援を行う。新拠点の整備費用は神戸商工貿易センターや川崎重工などの企業が負担し、年間の運営費は企業連合やMSが捻出するという。
図1 キオクシアが新設したFlagship棟(左)と新子安テクノロジーフロント(右) 出典:キオクシア
キオクシアは、研究・技術開発拠点の横浜テクノロジーキャンパス(横浜市栄区)に建設した技術開発新棟「Flagship棟」(図1左)と、新設する「新子安テクノロジーフロント」(図1右)(横浜市神奈川区)が完成し、本日稼働を開始したと発表した。神奈川県内に分散していた部門を両施設に集結させて研究開発の効率性を高める予定だ。Flagship棟では製品評価機能を拡充する。新子安テクノロジーフロントではクリーンルームを設置し、新材料や新プロセス、新デバイスなどの幅広い先端研究を行う。投資額は200億円程度だと9日の日経産業新聞は伝えている。
半導体関連企業も続々と拠点を設けている。シリコン結晶ウェーハを供給するSUMCOは、佐賀県神埼郡吉野ヶ里町に22万平方メートルの工場用地取得の準備を始めたと6月8日発表した。佐賀県議会の議決を経て正式に承認される。SUMCOは、工業用水・電力供給などのインフラ面と、人材確保の観点から、この土地を選んだとしている。
凸版印刷はフリップチップのBGA(Ball Grid Array)基板の生産能力を2027年度に22年度比で3倍以上に高める、と6月9日の日刊工業新聞が報じた。新潟工場(新潟県新発田市)に生産設備を導入し、23年度と26年度にそれぞれ稼働する。投資額は明らかにしていない。データセンター用サーバのCPU向けなどでFC-BGAの需要が高まっていることに対応する。
洗浄装置のSCREENセミコンダクターソリューションズの子会社であるSCREEN SPEサービスが、保守・サービス体制強化の一環として、熊本事業所内に新たに最先端機器のグローバルトレーニングセンター「匠-TAKUMI-」を設置した。半導体製造装置の新規セットアップやメンテナンス、装置改造の技術・知見を活用し、顧客への製品メンテナンス研修を行うほか、製造装置の搬入・セットアップ、各種サポートを担う全世界のフィールドサービスエンジニアを育成する。
TSMCは熊本にあるJASMの工場を建設中で、第2工場を日本に設立すると言われていたが、JASMの近くになりそうだ。これは、6日に開催した同社の株主総会で会長のMark Liu氏が述べたもので、まだ土地を取得する段階だが、日本政府が第2工場を望んでおり、補助金が検討されていると語っている。14/16nmや28nmのチップはコストパフォーマンスの点で要求が強く、無理に微細化せずに性能を上げたいユーザーの需要に応えることができる。