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車載半導体だけは23年も成長中、モールド封止機や検査装置も動く

車載半導体の需要が旺盛だ。2023年第1四半期(1Q)における各社の決算発表を見ても車載向け半導体分野だけが前年同期比でプラス成長となっている。車載半導体の旺盛な需要に合わせ、パワー半導体およびその関連事業への新しい投資が増えている。パワー半導体最大手のInfineonがドレスデンに300mmの第2工場の建設に着手、さらにモールド装置のTOWAや検査装置のタカノがパワー半導体関連事業を強化する。

ゴールデンウィーク中も海外勢の決算報告が出され、ほとんどの企業の売り上げがスマホやPCによって減速する中で、車載向けだけがプラス成長という特徴があった。例えば、米国時間5月3日に決算を報告したQualcommは、全社売り上げが前年同期比17%減という中で、車載向けだけが20%増の4億4700万ドルとなった。もちろん同社全体の売り上げ79億ドルと比べると、車載の売上比率はまだ小さいものの、Qualcommにとって車載向け半導体は成長領域だ。

この状況は売り上げを大きく落としたIntelでも同様で、2023年の1Qにおける全社売り上げは前年同期比36%減の117億ドルだったが、車載部門であるMobileye事業は16%増の4億5800万ドルであった。まだ金額的には小さいが、Intelはドメインコントローラの概念を5年前から打ち出しており、車載向けビジネスを強化することになろう。

国内で自動車向けに力を注いできた村田製作所の決算報告でも、1Q(2022年度第4四半期)は全社売り上げが前年同期比6.7%減であったものの、移動体(モバイル)部門は同16%成長であった。またAMDの決算報告でも1Qは同9%減の54億ドルにとどまったが、組み込み系の売り上げは163%(2.63倍)増の15.62億ドル、とゲーム部門に次ぐ2番目の売り上げになった。同社は車載部門という区分けをしていないものの、AMDのプロセッサがスバルの新しい自動ブレーキシステム「アイサイト4」に搭載され、スバルの全車種に搭載されるという。

車載半導体が全社売り上げの約半分近くにも及ぶInfineon Technologiesの1Q(2023年度第2四半期)の決算報告が現地時間5月4日に発表されたが、他の半導体メーカーとは大きく違い、前年同期比25%増の41億1900万ユーロと成長を遂げた。営業利益率も28.6%と好調だ。特に自動車向け半導体部門では同40%成長を示した。


図1 Infineonの300mmドレスデン新工場の起工式 出典:Infineon Technologies

図1 Infineonの300mmドレスデン新工場の起工式 出典:Infineon Technologies


Infineonは、EV(電気自動車)や従来の内燃自動車にも搭載されているパワー半導体やアナログ/ミクストシグナル半導体向けの300mm工場の建設に着手した。現地時間5月2日に起工式を行い、EUのフォンデアライアン委員長(図1の左から4人目)やドイツのショルツ首相(同右から2番目)なども出席した。同社CEOのJochen Hanebeck氏(図1の右から3番目)は「新工場は再生可能エネルギーやデータセンター、EVなどの需要に応えるもので世界的に大きな需要が見込める」と述べている。新工場への総投資額は50億ユーロ(7500億円)でこのうちの10億ユーロがEUからの補助金として交付されるようInfineonは申請している。欧州でも米国と同様CHIPs法案が可決され、今後数年間にわたり430億ユーロが欧州に投じられる。今回のInfineonの新工場の稼働は2026年秋の予定。

国内では製造装置や検査装置への投資が動いた。後工程のモールド機に強いTOWAは、4月にマレーシア企業から金型の製造事業を約9億円で買収したが、これは東南アジア市場向けに半導体モールド封止機を製造する狙いがある。Infineonはマレーシアのクリム工場でSiCウェーハプロセスを開始するなど、シンガポールやマレーシアなどでパワー半導体やミクストシグナルのウェーハプロセス工場が増えている。TOWA7の狙いは後工程のモールド封止の需要に応えようというもの。5月3日の日経地方版によると、買収した企業の売上額は約3億円と小さいが26年までに倍増させる計画だという。

TOWAは、最先端の超薄型半導体製品向けのコンプレッションモールド機に強いが(参考資料1)、パワー半導体向けのトランスファーモールド機でも独自のマシンで利益を上げているという。主なオプションを標準機に一体化した量産機を製造・販売したことで競争力を持たせることができたとしている。

産業機器製造のタカノは、米国で半導体検査装置の販売を強化すると5月3日の日経地方版が報じた。ウェーハに異物が混入していないか調べたり、回路が正しく形成されているかを検査したりする。特にパワー半導体のウェーハを検査では、数千万円のミッドレンジの検査装置需要が米国で高まっていることに対応した。

参考資料
1. 「弱いLow-k材料や細い金ワイヤーを守る低応力の新しいモールド技術」、セミコンポータル、(2008/07/14)

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