Samsungが20年間で31兆円投資、三菱電機は8インチのSiCラインに投資
Samsungが韓国内に今後20年間で300兆ウォン(約31兆円)を投じ、新たな半導体生産工場を設立すると表明した。また、日本では韓国との懸案事項であった半導体材料3品目の輸出管理を緩和すると経済産業省が発表した。また、三菱電機は熊本のパワー半導体工場において1000億円を投資、SiCのための新棟を建設する。Infineonが車載マイコンでUMCと長期契約した。
半導体は経済成長をけん引する先端産業であることから、各国の政治上の思惑が半導体産業に影響を及ぼすようになっている。Samsungが300兆ウォンを投資することが発表されたのはソウルの迎賓館で15日午前に開かれた経済会議の席上だった、と16日の日本経済新聞は伝えている。各国の通信社やメディアも一斉に報じた。ユン・ソンニョル大統領や政府・企業の幹部が集まり、Samsungが新半導体工場の建設を発表したという。
日経は「Samsungにとって国内4カ所目となる半導体生産拠点は、ソウル近郊の龍仁市に新設する。710万平方メートルの敷地を確保して2026年に着工し、29年ごろの 稼働を目指すという。その後も、受託生産とメモリの先端半導体を量産する工場を計5棟建設する計画で、42年までの総投資額は計300兆ウォンを想定している」と報じている。
SamsungはTrendForceのファウンドリ上位10社ランキングでTSMCに続く2位の地位を占めているが、Samsungはファウンドリだけの財務を公表せず、メモリ、その他の2つに分けて公表してきた。その他には、ファウンドリ事業に加え、自社製スマートフォン向けのAPU(アプリケーションプロセッサ)とディスプレイドライバIC、CMOSイメージセンサなどを含んでいるが、内製の製品が多そうだ。ファウンドリだけの売上額は公表していない。
ただし、外部向けにはファウンドリ事業で5nmプロセスの量産を今年開始する予定だと発表しており、3nmのGAA(ゲートオールアラウンド)構造のトランジスタを使ったプロセスも生産開始した、と技術を誇示する発表を行っている。
今回の長期的な発表では、メモリだけではなくファウンドリ事業にも力を入れていくことを表明している。米国にも半導体工場の新設を発表しているが、韓国から中国へのICの輸出は2022年に前年比6.1%増の6837億ドルとなっており、中国依存が大きい。加えてSamsungは中国の西安にNANDフラッシュの工場があり、蘇州にはパッケージング工場がある。韓国にとってこれ以上中国に工場を作ることは米中対立上、難しいため、韓国国内での工場ではなく自国内の工場を増設することを決めたとみられる。
日本と韓国との間の貿易に関しても、フッ化水素や高性能レジストなどを日本は事実上制限してきたが、供給メーカーは日本以外の工場から韓国の半導体メーカーに輸出してきたため余り効果はなく、政治的な感情だけが先走っていた。政府が輸出を緩和することは、民間の材料企業にとっても手続き上の煩わしさがなくなり歓迎される。
図1 8インチのSiCウェーハプロセスラインの新棟イメージ 出典:三菱電機
また国内でも三菱電機が熊本県の菊池市の工場にSiCウェーハプロセス工場を新設する。SiCウェーハの8インチライン(図1)に加え、6インチのSiCラインも拡充する。さらに100億円でパワー半導体の後工程工場にも新棟を福岡地区にも新設し、福岡地区内に点在する組み立て・検査工程を集約する。三菱は、2021年度から25年度までの累積設備投資額を従来計画から倍増し、2600億円を投資する。
ウェーハプロセスラインで使われる搬送システムを製造する村田機械は、28億円を投じて三重県伊勢市の工場に新棟を建設中で、2023年10月の操業開始を見込む、と17日の日経が報じた。半導体の前工程で使われる天井走行搬送システムでは、粉塵防止のための非接触給電や、多数の台車のリアルタイム一括制御などに強みがあるとしている。
クルマ向け半導体の供給を確保するため、GM(General Motors)がGlobalFoundriesと長期契約を結んだことに続き、Infineon TechnologiesはUMCと長期契約を結んだ。40nmのマイクロコントローラの生産を確保する。これまでTSMCに依頼していたが、供給ソースを広げる狙いがある。InfineonはパワートランジスタやレーダーセンサなどのアナログICを自前で設計・製造しているが、マイコンはファウンドリに製造を委託していた。