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ラピダスの2nmノードに対し、JSファンダリはパワーで勝負

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日本発の先端ファウンドリのラピダス社が北海道の千歳市に量産工場の設置を決めた。元三洋電機の半導体工場であった新潟工場を日本のファンドが買収、JSファンダリとして2022年12月に出発したが、そのレポートを3月6日の日経産業新聞が報じた。SiC開発を進めてきたロームがGaNパワーIC技術にも乗り出している。

千歳美々ワールド / 北海道千歳市工業団地

図1 北海道の新千歳空港に近い千歳美々ワールド工業団地 出典:北海道千歳市工業団地


ラピダスは千歳市に最初の量産工場を建設すると2月28日に発表した。決め手となったのは豊富な水と千歳空港に近い立地、北海道大学や室蘭工業大学などからの人材確保などだ。欧米では雪の降る地域での半導体生産は珍しくはないうえに、広大な土地も北海道の魅力。北海道の鈴木直道知事が東京麹町のラピダス本社を訪問したことに続き、ラピダスの小池淳義社長も北海道庁を訪問し、用地を決定した。

北海道千歳市には多くの工業団地があるが、ラピダスが決めたのは、千歳美々ワールドと呼ばれる工業団地(図1)。空港からのアクセスが良く、公立千歳科学技術大学があり、産学連携の拠点の一つとなっている。3月1日の日本経済新聞は、「再生エネも有望視されており、国の評価では、陸上風力発電、太陽光発電などの導入余地が全国で一番大きいとされる。北海道は50年までに温暖化ガス排出量実質ゼロを掲げており、ラピダスの進出についての『重要なファクタ』(小池社長)となった」と報じている。

2nmプロセスの半導体ICの量産を目指しているラピダスに対して、JSファンダリはアナログやパワー半導体など先端プロセスを用いない半導体のファウンドリを目指す。旧三洋半導体の新潟工場は、パナソニックに買収された後、onsemiが買い取り、数年間稼働させていたが、古い設備が多く300mmへの移行が難しく、onsemiが半年ほど前から買い手を探していた。その手を挙げたのが、M&Aアドバイザの産業創生アドバイザリや、国内ファンドのマーキュリアインベストメント、地銀系金融機関などであった。買収後すぐにJSファンダリを立ち上げた。onsemiは旧IBMイーストフィッシュキル工場を譲渡されたGlobalFoundriesから300mm工場を手に入れたため、新潟工場が不要になった。

JSファンダリの新潟工場で手掛けるアナログやパワー半導体の線幅は350nm以上で、「30年以上前の技術でも十分通用する」(岡田社長)製造プロセスだという。onsemi時代はIPM(Integrated Power Module)などパワーICを生産していた。パワー半導体のファウンドリを設立した理由は、「ひとつは産業機械や自動車、家電製品などに搭載するパワー半導体の需要が増えて生産が間に合わなくなっていること。2つ目の理由は経済安全保障の観点から半導体の国内生産の必要性が高まっていること」だという。もちろん、設備を刷新する場合の政府の助成金制度も活用する。

すでに30社から製造委託の商談が来ており、これまで中国や台湾のファウンドリに委託していたが、国産ファウンドリを歓迎する声が多いという。日経産業によると「新潟工場では約300億円を投じて27年度までに生産能力を2.5倍に引き上げる計画」。日本のパワー半導体メーカーは残念ながら、電力機器会社の1部門として存在するため、内製市場という自社向けの製品しか製造していないところが多い。外販が少ないため、成長市場にもかかわらず日本のパワー半導体はそれほど大きく成長していない。

パワー半導体には、例えばGaNやSiCトランジスタを使えば、シリコンのIGBTなどよりも効率が高く、少ない電力で制御できるというメリットがある。このため、GaNではこのメリットに目を付けたPower IntegrationsやNavitas Semiconductorなどが市場の先頭争いを繰り広げている。特に用途が多いのは、スマートフォン用の電源ICだ。電力効率を上げれば小型にできる上にGaNは高耐圧・大電力を扱いやすいため、急速充電器にもたくさん使われている。今後は、EV(電気自動車)の急速充電器への応用も注目されている。

この市場を狙うのが外販に強い、半導体専業メーカーのローム。ロームは、GaNパワートランジスタ(HEMT:高移動度トランジスタ)を高速に駆動するためのGaNドライバICを開発した。パルス幅2nsで細かく制御できるようにしたことによって、最大60Vから0.6Vまで一気に変換するDC-DCコンバータが作れるようになるという。中間の12Vなどへ変換しなくても済むため、従来と比べボード面積が1/7に小さくなるとしている。2023年後半に100V入力のサンプル出荷する予定。

(2023/03/06)

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