ラピダスの工場誘致に北海道が名乗り、工場建設がさらにグローバルに展開
国策ファウンドリ会社ラピダスの工場誘致をめぐって、候補地の一つに北海道が上がっている。台湾UMCが日本の三重工場の敷地に新しい半導体工場を検討している。また、世界の半導体および関連メーカーがシンガポールに集結し始めている。1月の台湾IT企業は半導体も含み2桁成長を示した。半導体業界は短期的に景気後退期にあるが、長期的な成長への見通しは変わらない。
図1 ラピダス社がimecと提携した際の写真
北海道の鈴木直道知事は2月16日、最先端半導体の国内生産を目指すラピダスの本社(東京・千代田)を訪問した、と17日の日本経済新聞が報じた。小池淳義社長と面会し、同社が検討している工場を北海道に建設するよう誘致活動を進めた。2020年代後半に2nmプロセスの半導体を量産するためラピダスは工場を探しており、すでに複数の都道府県が名乗りを上げているという。北海道でも千歳市や釧路市は降雪が少なく、空港までのアクセスも良い。千歳にはすでにミネベアミツミの半導体工場がある。
台湾のUMCは旧富士通の三重工場を買収し、40nmプロセスでファウンドリ事業を運営しているが、この敷地内に新たに製造棟を建設する方向で検討していると16日の日刊工業新聞が報じた。2025年以降に稼働を開始し、総投資額は5000億円規模に上る可能性があるという。UMCは最も微細なプロセスで22~28nmだが、この寸法なら厄介なエリアスケーリングを使わなくても済むため、プロセスが比較的簡単でウェーハ処理の価格は安い。14/16nm以降は、ファウンドリが持っている各種のスタンダードセルを立体的な配線や構造を駆使するエリアスケーリングを使って、スタンダードセルを作り直すためコストがかかる。UMCは、俗にいう「枯れたプロセス」で、2022年の売り上げは前年比31%増の2787億台湾元(1元=約4円)、営業利益率37%と健全な運営をしている。
シンガポールには、Micron Technology やGlobalFoundries、UMCなどの半導体工場がすでにあるが、GFは新工場を40億ドルで拡張建設中だ。ここにSOI(Silicon on Insulator)ウェーハを製造販売するSoitecが4億ユーロを投じてウェーハ工場の生産能力を倍増する。Applied Materialsも6億シンガポールドルを投じて新工場を着工した、と17日の日経産業新聞が報じた。
Soitecは、シンガポール東部のパシルリスウェーハ工業団地内の既存工場の隣に拡張工事を進めている。工場・オフィスなど計4万5000平方メートルを増床し、2024年の完成を目指すとしている。これにより、拡張後には300mmのSOIウェーハの生産能力は年200万枚に倍増するという。人員は26年までに600人超と倍増する見通しだ。同社が80%の株式を持つ仏半導体設計Dolphin Designもシンガポールに拠点を設ける方針だ。このIC設計会社がSOIに合ったCMOSトランジスタや回路設計を受け持つ。
AMATはシンガポールのチャンギ空港に近いタンピネス地区に大きな工場建設を2022年12月に開始した。24年の完成を目指す。大型工場は、オフィス部分を含め床面積6万5000平方メートルで、人員は3500人超と現状より約4割増やすという。新工場では新技術の商用化や半導体の能力向上、省エネに向けた研究にも取り組む。シンガポール科学技術研究庁傘下の電子工学研究所と組み、ハイブリッドボンディングなど複数のチップを積み重ね る3D-ICの製造技術について共同研究するとしている。
台湾のIT産業は半導体も含めて調査している。台湾メーカーの主要19社の1月売上額は前年同月比11.6%増の1兆3390億台湾ドルになった。iPhoneの約7割を生産する鴻海精密工業は同48.1%の増収だった。22年10~12月は新型コロナや労働運動により稼働が低迷したが1月に入り生産が回復した。TSMCの1月も同16.2%増の2001億台湾元だったが、iPhone向けのアプリケーションプロセッサが1月にずれ込んだため増収となった。中国向けスマホに強かったMediaTekは同48.5%の減収だった。