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メモリは不調だが、産業用・車載用は2桁成長の好調

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先週、SamsungとSK Hynixの2022年第4四半期における決算が発表された。メモリICを手掛けない欧州勢2社STMicroelectronicsとInfineon Technologiesが車載・産業用向けに20%以上の2桁成長を果たしたことと対照的だ。車載ではEVのシェアが15%以上に達し、EV時代の到来を告げている。パワー半導体の出番が来た。ロジック系ではイビデンが先端パッケージに巨大投資を計画する。

2022年第4四半期(4Q)におけるSamsung半導体部門の売り上げは20.07兆ウォン(1ドル=1247ウォン)と、前年同期比24%減となった。そのうちメモリは38%減の12.14兆ウォン、システムLSIやCMOSセンサ、LCDドライバ、ファウンドリなどメモリ以外のICは16%増の7.93兆ウォンであるから、メモリが大きく足を引っ張った。営業利益は前年同期の8.83兆ウォンからわずか0.27兆ウォンへと大きく沈んだ。メモリ以外が10%程度の営業利益があると仮定すると、メモリ部門は赤字になる。

メモリしか手掛けないSK Hynixは4Qの売り上げは7.7兆ウォンと前年同期比38%減となり、営業損益は1.7兆ウォンの赤字になった。前四半期が1.66兆ウォンの黒字だったことから、急速に悪くなった。

メモリトップメーカーに対して、欧州勢ではSTMicroに続きInfineonからも2022年第4四半期の決算発表があった。STMicroが24%増の44.2億ドルであり、Infineon は25%増も39.51億ユーロ(1ドル=0.93ユーロ)であり、共に20%以上の成長率で好調だった。つまり欧州勢は共に強い車載向けが今、旬になっていることを示している。


Tesla社のEV

図1 TeslaのEV「モデルS」


車載半導体はやはり伸びている。今週、ルネサスの決算があるからその成長率も気になるところだ。車載半導体にとって今後大きな成長が見込めるEV(電気自動車)やFCV(燃料電池車)などにも巨大市場となりそうだ。特に、マイコンやメモリに加え、ゲートドライバICやパワートランジスタ、パワーモジュールなども大きなチャンスとなる。

2月2日の日本経済新聞は、欧州自動車工業会(ACEA)が1日発表した2022年の欧州主要18ヵ国の電気自動車(EV)の販売台数は21年比で29%増の153万台だった、と伝えた。新車販売に占めるEVのシェアは15%と前年より4ポイント上昇したという。「PHV(プラグインハイブリッド)のシェアは前年並みの10%だった。ハイブリッド車(HV)は9%増の234万台(シェア23%)。一方、内燃エンジンを使うガソリン車のシェアは4ポイント減の35%、ディーゼル車のシェアは4ポイント減の14%」と報じている。このレポートからEVへのシフトがはっきりと読み取れ、しかも当初の予想以上に速い。

市場調査会社のマークラインズによると、2022年におけるEVとPHV、FCVの販売台数は主要14ヵ国で合計前年比63%増の966万8000台と伸び、新車販売全体に占める比率は17%に迫った。集計対象は中国と米国、日本、インド、ドイツ、フランス、ブラジル、英国、韓国、カナダ、イタリア、ノルウェー、スウェーデン、フィンランドの14ヵ国。この14ヵ国でEVなどの世界販売の約9割を占める。

将来のクルマの光源用にマイクロLEDを使った応用を狙い、日亜化学工業はInfineonのLEDドライバICと組み合わせたモジュールを今夏にも出荷すると2月3日の日経が報じた。これは、16,384個のマイクロLEDチップを使ったマトリックスソリューションにして、アダプティブなハイビーム切り替えヘッドランプに使う(参考資料1)。すなわち、欧州では暗い夜道を走行するのに通常ハイビームを使い、対向車が来るとロービームに切り替えている。これを対向車の運転手だけを照らさずにそのままハイビームで走行できるようにするシステム。LEDがマトリックス状に配置されているため、LEDが照らす領域を部分的に運転手や助手席部分だけを照らさないようにアダプティブにロービームを変えるのである。

マトリックスソリューションであれば、道路脇の人物やモノを照らし運転手に危険を知らせることもできる。また、工事現場や交差点で道路上にマークを投影することも可能になる。マイクロLEDにとってようやく訪れた応用分野と言えそうだ。

先端パッケージでは、イビデンが半導体パッケージ基板の増産に向け、巨大な工場を投資額2500億円かけて設置すると、2月2日の日経産業新聞が報じた。2026年3月期の稼働開始を目指すという。Intel社をはじめとする高集積プロセッサのパッケージには微細なプリント基板を使っているが、この上位は日本のイビデンと新光電気工業である。プリント回路基板は先端パッケージ基板の重要な技術の一つであり、イビデンは投資する価値があると読んだのであろう。

参考資料
1. 「インフィニオン、日亜化学工業と業界初の高精細マイクロLEDマトリックス ソリューションを発表」、Infineon (2023/01/03)

(2023/02/06)

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