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レゾナックが本格始動へ、半導体関連材料の需要に応える

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2023年1月1日に昭和電工と昭和電工マテリアルズ(旧日立化成工業)が合併、持株会社レゾナックホールディングス(HD)が事業戦略を明らかにした。半導体分野を強化する。また、レゾナックに限らず、半導体関連材料分野のスタートアップも続出している。大陽日酸は熊本に産業用ガスの拠点を設ける。

レゾナックホールディングス 代表取締役社長兼CEO 高橋秀仁氏

図1 レゾナックホールディングス 代表取締役社長兼CEO 高橋秀仁氏


1939年に設立された昭和電工は、石油化学を中心に事業を進めてきたものの、将来の成長となる半導体へは2000年代に入り参入した。ハードディスクの円盤を手始めにパワー半導体の冷却器、さらにGaAsなどの化合物半導体を手掛けた。半導体の中核であるシリコンへの参入は、なかなか叶わなかったものの2020年に日立化成を買収することで手に入れた。一方、1962年創立の日立化成は、1970年代に電子材料に参入、銅張り積層のプリント配線基板や感光性フィルム、エポキシ樹脂、CMPスラリーなど半導体材料を強化した。2012年に日東電工から半導体封止事業を譲り受け、モールドパッケージでIC分野を増強した。

今年に入ってレゾナックHDの事業会社であるレゾナックは、パワー半導体材料の一つSiC材料をパワー半導体トップのInfineon Technologiesに供給することで長期的に契約した。Infineonは1枚のウェーハを2枚にカットする低コスト技術を持っているものの、ウェーハそのものを製造していない。レゾナックと長期契約することでSiCの調達を確保する意味があった。レゾナックにとっても今後成長が期待されるSiCを安定的に供給できる顧客を獲得できた。

SiCは電車などにはすでに使われているが、数量は非常に少ない。大量消費が見込まれる電気自動車(EV)には高コストゆえに浸透が遅れているが、Infineonはコストを下げるための技術開発に余念がない。レゾナックは現在6インチのSiCブール(インゴット)を8インチに大口径化する技術開発でもInfineonと合意している。Infineonは、オーストリアのフィラハ工場でSiC半導体を生産しているが、マレーシアのクルムにも2024年に生産開始する予定で工場建設を進めている。

レゾナックはInfineonという最大手のパワー半導体の顧客をつかんだことで、小山事業所(栃木県小山市)内に、EV向けパワーモジュール材料の評価・開発拠点「パワーモジュールインテグレーションセンター」を本格始動させる。EVではインバータやパワー半導体を搭載するサブシステムからの熱を逃がしたり電気的な損失を減らしたりする技術を開発する。これによってパワーモジュールの開発期間を短縮するという。

レゾナックは、半導体後工程の材料にも強くなり、モールドだけではなく、異方性導電フィルやロール2ロールのフィルム生産技術、ソルダーレジスト、5Gアンテナ材料に向けた高誘電率で低損失のモールド材料などを持つようになった。単なる買収による製品ポートフォリオの増強だけではなく、研究開発においても、旧日立化成のウェーハ研磨剤を旧昭和電工の原料技術で補強するなどの「イノベーションのリレーが起きている」と語る高橋秀仁社長のコメントを1月18日の日刊工業新聞は掲載している。20日の日経産業新聞は、高橋社長の「足元では半導体需要が弱まっているが、長期トレンドは伸びる。投資のブレーキを踏む気はない」というコメントを載せている。

SiCのスタートアップでは、名古屋大学でSiC材料を研究する宇治原徹教授がSiCブールを溶液法で形成することを目的として2021年6月に設立したUJクリスタル社のインタビュー記事を日刊工業新聞が掲載した。SiC結晶そのものは常圧では温度を上げても液化せず昇華するため、現在では昇華法で作製しているが、新会社は溶液成長法で作るとしている。デジタルツインを使って新しい方法を見つけるという。

パワー半導体は、パッケージ基板側をMOSFETのドレインと接続されているため、基板に放熱フィンをつけるためには電気的に絶縁する必要があった。マイカを敷いたりグリースを塗ったりしていたが、今後の急速充電には800Vをかけるため絶縁が十分ではない恐れが出てくる。このためAlNやBNなど、電気的には絶縁体で熱的には良伝導体が望ましい。名古屋のスタートアップU-MAPは、AlNの放熱板を2024年後半から量産する、と23日の日刊工業は報じた。繊維状のAlNを使ったセラミック基板で、年間4000平方メートルを供給する計画だという。

大陽日酸は、熊本県の菊陽町に半導体用ガスの物流拠点を併設した事業所を新設した、と20日の日刊工業が報じた。熊本市内にある支店をこの新事業所に移し、ガスの保管施設を倍増する。菊陽町に建設中のTSMCの新工場や、ソニーグループの半導体新工場などの需要を見込む。

(2023/01/23)

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