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海外工場への増設に積極的になったTSMC、ただしCHIPS法案が前提

台湾のTSMCが日本に第2工場の建設を検討しているというニュースが先週流れた。これは、1月12日にTSMCが2022年第4四半期の決算報告をした折に、CEOのC.C. Wei氏(図1)がこれからのTSMCの取り組みについて述べたもの。また、日本だけではなく台湾と国外についても言及している。ここではその決算報告とその内容について紹介する。

TSMC CEOのC.C. Wei氏 / TSMC

図1 TSMC CEOのC.C. Wei氏 3D-IC研究開発センター開所式での写真 出典TSMC


TSMCの決算報告はメモリ以外の半導体の動向をよく表しているため、景気動向を示す材料の一つになっている。TSMC決算報告の際は必ず次の四半期についても正確な見通しに近い数字が発表される。米国の上場企業の決算では、次の四半期に関するコメントも述べられることが多く、その時点での受注状況から次の四半期の見通しは正確に近い。

2022年第4四半期の決算報告では、前年同期比26.7%増の199.3億ドルとなった。この数字は、第3四半期での見通しが199〜207億ドルであったから下限ぎりぎりである。ただ、世界の為替レートにおいて、円安と同様、台湾元安となっていたため(日本ほど極端な通貨安ではなかったが)、台湾元で表すと、前年同期比42.8%増の6255.3億台湾元となった。1米ドル=31.386台湾元である。2022年初は1ドルが27〜28台湾元だったため、ドル換算では通貨は弱くなっていた。ただ、この昨年の11月初めからは現在は少し台湾ドル高の30元になっている。

売上額は2桁成長を示す一方、利益も粗利益率は売上額の62.2%、営業利益率は同52%と絶好調といえる超健全な数字である。


TSMC 4Q2022売上の内訳 / TSMC

図2 TSMCの2022年第4四半期売上額のプロセス別内訳 出典:TSMC


さて、第4四半期の売上額をプロセス技術ごとに見てみると(図2)、5nmや7nmプロセスが全売り上げの54%も占めている。日本でも立ち上がったファウンドリ企業のラピダスの小池淳義CEOが、微細化すれば投資資金は大きくなるが儲かる、と述べているのは、この数字が根拠となっている。TSMCは5nmと7nmプロセスに加え、16nmも加えると全売上額の64%、すなわち2/3にまで達する。

TSMCは用途別の売上額も公表しており、データーセンターやスーパーコンピュータのようなHPC(High Performance Computing)分野と、スマートフォン分野で80%も占めている。5nmや7nmは、モバイルプロセッサやCPUを含むSoCの売り上げであるが、これらが合計で64%だということは、HPCやスマホ分野では微細化しないプロセスでも市場があることを示している。両分野でも電源用IC(PMIC)や、アナログICなどが使われているが、これらのICはそれほど微細化が必要ではない。

TSMCは今後の見通しについて、2023年第1四半期の見通しも発表している。それによると、売上額の見通しは167~175億米ドルとなっている。前年の第1四半期売上額が175.7億ドルであるから、5.0%〜0.4%減と一桁台前半の減少になるとみている。

2023年全体としては、前半まで底に来るが、後半は前年並みに回復してくるとみている。特にメモリを除く半導体全体の市場は4%減で、ファウンドリ市場は3%減に減少するものの、TSMCは若干のプラス成長を見込んでいるという。ただし、23年前半のN7/N6プロセスの稼働率は3カ月前の予測よりももっと下がるが、後半には前年並みに戻るとみている。むしろ次のN3プロセスが22年第4四半期に量産体制に入り、歩留まりが好調なので23年から立ち上がるものの、供給体制が間に合わず半導体不足も予想されるという。

N3プロセス製品は2023年、24年、25年と需要が強まると期待しており、N3プロセスノードの製品は長期間に渡って続くとみる。

半導体需要は続くという長期的な見通しの下に、TSMCは台湾国内だけではなく、海外にも展開する。アリゾナ州に完成したファブ1はN4プロセスの製品を2024年に量産し始める。建設し始めた第2のファブは2026年にN3プロセスの生産を始める予定となっている。日本の熊本では12/16nmと22/28nmのプロセスで2026年に生産開始する予定だが、2番目のファブの建設も考えているとしている。顧客からの要求があり、政府の支援があるという前提である。欧州でも日本と同様のプロセスのファブで、中国でも28nmの南京ファブを拡張する計画だ。

台湾国内では、台南の工場でN3プロセスの量産に入り、N2プロセスの量産は2025年に開始するように準備中だという。N2プロセスファブは新竹と台中工場で量産する。

(2023/01/16)
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