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クルマ一色のCES 2023、ソフトウエア定義のクルマを狙うQualcomm、Nvidia

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1月5日から米国CESが開幕、ソニーグループとホンダが発表した電気自動車(EV)を1月6日の日本経済新聞が報じたように、米国の他にメディアを見ても今年のCESはクルマ関係が注目されたようだ。単なるクルマメーカーのEV展示よりも、クルマのデジタル化に向かう動きが活発だ。特にQualcomm とNvidiaが車載SoCの開発にしのぎを削っている。

ソニーとホンダの合弁会社であるソニー・ホンダモビリティは、ソニーのDNAであるゲームや映画、音楽などエンターテイメントをクルマにも導入することを念頭に置いた、新EV「アフィーラ(AFEELA)」を発表した。6日の日経は、「新型EVは外部クラウドと通信でつながる「エンタメカー」で、高性能ゲームを車内で楽しめる。ゲーム機『プレイステーション』との融合を目指し、消費者の車内での楽しみを追求する」と報じている。

クルマのネーミングからして、AとFeelとの合成語のAFEELAは、次の三つのAを意味する。自動運転(Autonomy)、メタバース活用などによる時空間の拡張(Augmentation)、そして人との協調と社会との共生をうたうAffinityという三つのコンセプトを価値として掲げる。AutonomyとAugmentationを実現するためにQualcommとパートナーシップ(Affinity)を築く。ソニー・ホンダは、Qualcommのコンピューティング中核技術のSoC「Snapdragon Digital Chassis」を採用する。

これらのコンセプトをテクノロジー側から見ると、SD-V(ソフトウエア定義のクルマ)になる。つまりコンピューティングは、コンピュータというハードウエアプラットフォームを用意してソフトウエアでカスタマイズする技術。ASICのように顧客ごとにカスタムICを作るのではなく、一つのSoC(CPU内蔵していてソフトウエアベースでカスタマイズするIC)にソフトウエアをインストールしてカスタマイズする。そのコンピューティング技術をクルマのECUにSoCを中核に構成していくことになる。

ファブレス半導体メーカーのQualcommは、これまでスマートフォンを応用の中核に据えてきたが、これからはコンピューティングそのものに力を入れていき、車載分野もコンピューティングを狙う。Nvidiaも同様に、これまでゲーム機用のGPUが売り上げの中核を占めていたが、最近はAI(機械学習)にも力を入れ、さらにクルマ市場にも積極的に進出してきており、例えばEMS(電子製品製造請負メーカー)のFoxconnにNvidiaの車載向けコンピュータ用SoCであるNvidia Drive Orinを納入、このSoCを搭載したECUをFoxconnが製造する。


Introducing Snapdragon Ride Flex SoC / Qualcomm

図1 QualcommのSnapdragon Ride Flex 出典:Qualcomm


Qualcommは、今回のCESで自動運転やADAS向けのコンピューティングチップである「Snapdragon Ride Platform」(図1)の製品ポートフォリオ(SoC群)を拡張すると発表した(参考資料1)。これまでもQualcommはクルマメーカー(OEM)にチップを納入しており、実績はすでにある。今回発表した製品は、デジタルコックピットとADASを同時にサポートするスケーラブルなSoCファミリの「Snapdragon Ride Flex」である(参考資料2)。コックピットやADAS機能だけではなく、3Dナビゲーションや多数のスクリーン表示、音声入力、パーソナル化設定などの機能もある。ADASでは自動緊急ブレーキやアダプティブクルーズ制御、白線維持機能、運転手モニタリングシステム、自動駐車システム、高速道路での自動運転などの機能もある。「Snapdragon Ride Flex」は、BoschやContinentalなどティア1サプライヤーにサンプル出荷中で2024年初めに量産する予定。このSoCは4nmプロセスで製造される。

ソニー・ホンダの「Snapdragon Digital Chassis」は、「Snapdragon Ride Platform」を含めた車載半導体やソフトウエアも含む広い概念。「Snapdragon Ride Platform」はその中核となる技術。

Nvidiaのアプローチは、AIとメタバースをクルマの世界にも応用するもの。例えば、同社はドイツのクルマメーカーBMWの自動車工場にメタバースによるデジタルツインを導入するため、NvidiaのOmniverse Enterpriseを使う。また、Omniverseはクルマの走行シミュレーションも可能としており、またコネクテッドカーでビルの上の小型基地局とクルマとの接続の様子もメタバースでシミュレーションできる。

Nvidiaは、Mercedes-Benzの自動車工場にもOmniverseを導入したとCESで発表した(参考資料3)。メタバースでデジタルツインを作ることにより、作業効率の改善や生産計画を立てるのに使うとしている。MercedesはすでにSD-Vehicleを作るためのNvidiaのSoC「Orin」を導入しており、今回のOmniverseの導入では、工場のデジタル化を図り、廃棄物の削減や消費エネルギーの低減、品質の継続的な工場を実現させるという狙いがある。

参考資料
1. "Qualcomm Builds Global Momentum in Advanced Driver Assistance and Autonomous Driving Segment with Snapdragon Ride Platform Portfolio". Qualcomm (2023/01/04)
2. "Snapdragon Ride Flex SoC — The central compute solution that’s bringing the software-defined vehicle (SDV) vision to reality", Qualcomm (2023/01/05)
3. "Manufactured in the Metaverse: Mercedes-Benz Assembles Next-Gen Factories With NVIDIA Omniverse", Nvidia (2023/01/03)
4. "Mercedes-Benz Adopts NVIDIA Omniverse for Vehicle Assembly and Production Planning", Nvidia YouTube

(2023/01/10)

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