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TSMC、ドイツにも拠点、onsemiの旧新潟工場はファウンドリとして誕生

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TSMCが欧州版CHIPs法の成立を受けて欧州にもファウンドリ拠点を作ることが可能性として語られてきたが、12月24日の日本経済新聞は工場進出を最終調整する方向に入ったと伝えた。日本でもonsemiの旧新潟工場をファンドが購入したが、12月1日に会社設立が明らかになった。さらに車載半導体への投資が活発になってきたというニュースもある。

TSMC進出が噂されるドレスデンの街

図1 ドイツのドレスデンの街


日経はTSMCの欧州進出について、「年明けに経営幹部が現地入りし、地元政府による支援内容などについて最終協議する。早ければ2024年に工場建設を始める。投資額は数十億ドルに達する見通しだ」と報じている。欧州も米国同様、半導体製造を台湾に頼っていることに対する危機感を持っており、欧州版CHIPs法案では、2030年までに430億ドルを半導体製造工場に投じる計画がある。

ドイツのドレスデン(図1)にはInfineon TechnologiesやGlobalFoundriesなどの拠点があり、製造装置メーカーや製造に必要な水や化学薬品、ガスなどの半導体製造に必要なインフラが整っている。日本の熊本県や宮城県のような半導体インフラを持つ。このため、欧州に進出するならドレスデンだろう、という考えが多い。

ドイツに半導体工場を設立するメリットとしてはやはり車載用半導体における巨大市場がある。Robert BoschやContinentalなどのティア1サプライヤがいる。となると7nmや5nmなどのプロセスノードは必要なく、次世代マイコンのプロセスノードとしての22/28nmが望まれる。日経も22/28nm品になる見通しと述べている。

TSMCの欧州進出に関しては、もっと先と見られていたが、ここにきて検討が進んだ背景には日本のラピダス社の設立がある。ラピダス社の2nmプロセスのファウンドリを目指す目標は、TSMCとまともに競合する。TSMCからすると、日本政府の熱心な誘いを受けて熊本に合弁のファブ(JASM)を作ってやったのに、直接競合する企業(ラピダス)を設立とは何事か、ということになる(実際、怒っていると言われている)。小池社長はTSMCと違い、カスタム狙いなので競合しないと述べているが、そもそもファウンドリで作るロジック製品に汎用なものはほとんどない。Apple、Nvidiaなどそれぞれのプロセッサであり、汎用品ではない。しかもAMDやIntelの製品でさえ、基本はx86アーキテクチャだが、集積する機能はそれぞれバラバラである。

ラピダス社の始動の陰に隠れてほとんど報道されなかったが、onsemiが売却相手を数カ月にわたって探していたところ、日本のファンド連合(日本政策投資銀行や伊藤忠商事が出資するマーキュリアホールディングス、産業創成アドバイザリー、福岡銀行系の福岡キャピタルパートナーズ)が10月末に買うことを決めていた。さらに12月1日に、買収したグループで、パワーやアナログ半導体のファウンドリ「JSファンダリ」を設立した。本社所在地は東京都港区西新橋となっている。

12月1日の日経は「JSファンダリ、半導体生産能力2.5倍 27年度めど」と題した記事を載せ、生産能力を上げると報じていた。この工場は、onsemiが買収する前の三洋電機の新潟工場として運営されていたが、5インチ、6インチの古いラインしかなく、将来性が見込めなかった。onsemiは旧IBMでGlobalFoundriesが持っていた300mmウェーハ対応のニューヨーク州イーストフィッシュキル工場を買収したことで古い新潟工場がいらなくなった。

車載半導体にプロセスノードが90nmや130nm、250nmなどと緩い製品が多いのは、主にアナログ、パワーのような制御用半導体が最初から使われてきたためだ。しかし、最近は、SD-V(Software-Defined Vehicle)といわれるように、コンピュータシステムを使う高集積の半導体が要求されるようになりつつある。このためプロセスノードも14/16nmへと進化してきている。仮想化技術が使われるほどの高集積SoCだとさらに微細なノードになる。熊本のJASMがデンソーも出資したことでより微細なプロセスノードを求められたのは、このためだ。

デンソーがCASE(Connectivity、Autonomy、Sharing、Electricity:米国ではACESと呼ばれることが多い)技術に2022年度から10年間で10兆円を投資すると発表した。ソフトウエアやデータの分野の開発を増やすとしている。だからこそ、半導体にはデータセンター並みの高集積な製品が要求されるようになる。

そのほか、車載半導体への需要はいまだに旺盛で、21日の日経産業新聞には、ロームのSiCパワーデバイスを日立アステモがEV部品に採用すると報じられ、19日の同紙には、東芝の姫路工場が新たな製造棟を作り、後工程の生産能力を2倍以上に増強するという記事も掲載されている。

(2022/12/26)

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