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TSMCがアリゾナに第2工場建設開始、第1工場には製造装置が搬入

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TSMCが今年の設備投資を当初より2割絞ると発表しながらも、アリゾナに第2工場を建設し始めたというニュースが流れた。すでに建設中のN4プロセスの工場に加えN3プロセスで半導体を生産する。対中輸出規制に関して米国共和党議員からさらに厳しい運用を求める声が上がった。国内でも脱中国の動きが出てきた。インドのタタ・グループが半導体生産を発表した。

図1 TSMCの式典に出席したArmの幹部たち 出典:ArmのLinked-Inページ

図1 TSMCの式典に出席したArmの幹部たち 出典:ArmのLinked-Inページ


12月6日にTSMCが発表したアリゾナ工場の第2工場への投資ニュースは、第1工場の建屋が完成し、製造装置のいくつかが導入され始めたことを祝うセレモニーで明らかになった。このセレモニーには、バイデン大統領をはじめ、レモンド商務省長官、デューシーアリゾナ州知事などをはじめ、顧客やパートナーも出席した。Apple社のティム・クックCEO、AMDのLisa Su 会長兼CEO、NvidiaのJensen Huang CEO、さらにArmのRene Haas CEO(図1の右)などが出席した。このセレモニーにおいて、TSMCは6台の半導体製造装置を導入したことを明らかにした。これらにはApplied Materialsや、ASM、ASML、Lam Research、KLA、Tokyo Electronの装置が含まれている。

最初の工場への装置の搬入をこれから本格的に進め、当初のN5プロセスから一歩進めN4プロセスによるウェーハ処理を2024年から稼働させる。加えて、建設を始めた第2工場は2026年にN3プロセスの生産を開始する予定である。第1と第2工場を合わせた総投資額は400億ドル(約5.7兆円)に達する。アリゾナ州に投資する外国企業としては最大になり、米国全体でも最大投資の一つになるという。

工場の建設に投入される人員は1万人に達し、工場が出来てからの半導体製造関連の雇用は1万人になると見込んでいる。そのうちTSMCの社員は4500名になる。両工場の生産能力は60万枚/年になり、その最終半導体製品の価値は年間400億ドルに達すると見積もっている。この工場では水の再利用を徹底させ、稼働後には工場外部への排水をゼロにする計画だ。

Amazon Web Services(AWS)やAMD、Apple、Broadcom、Qualcomm、Nvidiaなど多くの顧客がTSMCによるメイドインアメリカ製品を喜び、アリゾナ工場Fab21での生産を祝う声を寄せている。

バイデン政権は10月に中国への半導体製品や製造装置、ソフトウエアなどの製品の他、関連人材までも中国企業との取引を許可制にしたが、日本経済新聞は共和党のマイケル・マコール下院議員に書簡取材を通し、最も厳しい運用を求め例外を認めるべきではないと主張したと12月10日の紙面で報じた。マコール氏は、「(商務省の)産業安全保障局が最も厳しい基準に沿ってルールを適用・運用すれば、それは中国共産党の戦略的目標の核心を打ち砕く。商務省が完全な透明性を示すと期待している」と語り、規制の適応除外をする場合に厳しく精査する方針を示した。

10日の日経は、中国への進出した日本企業は2022年6月時点で1万2,706社と12年の1万4394社から1600社以上減った、と報じた。米国が少数民族のウイグル族を強制労働させている疑いがあるとして中国産の綿製品の輸入を禁じたため、中国の縫製工場から撤退したアパレル企業をはじめとして、中国の賃金水準や円安進行でコスト面では日本とさほど変わらないとみる企業が増えた。中国のゼロコロナ政策が中国ビジネスのリスクを顕在化させたとしている。

インドでもようやく民間企業が半導体産業への進出を明らかにした。インド大手の財閥タタ・グループの統括会社であるタタ・サンズのNatarajan Chandrasekaran会長とのインタビューを通して、明らかになった。これまで、インド政府が半導体製造事業への参入を何度も呼び掛けてきたが、今回は民間企業から参入を表明した。タタ・グループは今年の6月にルネサスエレクトロニクスとパートナーシップを結び、得意なシステム設計や半導体設計を生かし、製造分野も強化する。まずは後工程のパッケージングとテストを受け持つOSAT事業から進出する。いずれ前工程に進出する場合でも28nmや65nmのビジネスができるクルマや産業用分野を狙うとしている。

(2022/12/12)

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