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2.5D/3D-ICや後工程での材料メーカーが相次いで生産増強

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このところ半導体後工程が脚光を浴びている。3次元化によるさらなる高集積技術の切り札となりうるからだ。昭和電工や日産化学などが銅張り積層板や仮止め接着剤などを生産する。キヤノンもステッパに再び力を入れ始めた。ASMLは韓国にも技術拠点を設ける。半導体製造の知識を大学でも取り入れるようになった。

12月3日の日本経済新聞は、「半導体『3次元実装』に商機」と題して、後工程向けの材料開発企業の動きを報じた。ICチップを重ねてTSV(Through Silicon Via)などで接続するような 3D-ICは、HBM(High Bandwidth Memory)のようなDRAMを重ねる技術で実用化になっているが、これをロジックとメモリを重ねるようなコンピュータ技術全体では、3D化よりは2.5D化の方がフレキシビリティやコストなどの面でメリットは大きい。このため、3D-ICのコンピュータシステムへの応用はこれからになりそうだが、2.5D-ICではAMDが実用化を推進している。

材料メーカーとして日産化学は、3次元実装に使う接着剤の一種「仮貼り材料」の量産を始める。同材料はシリコンウェーハを極めて薄く加工した後、ハンドリングが難しくなるため、ガラス基板に一時的に接着する。ウェーハの研磨や積層に耐えられる接着力がある一方で、ウェーハを傷つけずにはがせるという性能を併せ持つ。現状はサンプル出荷にとどまるが、富山工場(富山市)に量産設備を立ち上げる方針だ。同社が後工程向け事業に乗り出すのは初めて。

日立化成を買収した昭和電工は、前工程の高純度ガスに強いが、後工程でも約100億円を投じ、プリント配線基板材料である「銅張積層板」を増産する、と3日の日経が報じた。下館事業所(茨城県筑西市)や台湾の拠点で生産設備を新たに設け能力を25年までに現状の2倍に増やす。


図1 TSMCジャパン3DIC研究開発センター 出典:TSMCジャパン

図1 TSMCジャパン3DIC研究開発センター 出典:TSMCジャパン


TSMCは22年6月、茨城県つくば市の産業技術総合研究所内にTSMCジャパン3DIC研究開発センター(図1)を開いたが、その狙いは日本の材料メーカーとの共同研究にある。3次元実装に必要な材料や装置の開発を電子部品メーカーのイビデンや半導体材料のJSR、東京応化工業などの日本メーカーと共同で進める。

また、IntelをはじめとするCPUのパッケージングは、小型のプリント基板上にチップを実装する。イビデンや新光電気工業などが強いが、最近のAppleのパソコン向けCPUやNvidiaのGPU設計ではHBMやDDR5メモリをプロセッサの周囲に配置するレイアウトを使うようになっており、2.5D/3Dパッケージングコンソーシアムでも標準化プロセスが急がれる。

昭和電工は2023年1月から社名を「レゾナック・ホールディングス」に変更し、これまでの前工程に加え、日立化成買収により後工程でも存在感を示すことになる。昭和電工は原材料を作る化学に強く、旧日立化成は混ぜる化学に強い。その融合により半導体分野でより強い材料メーカーになるという狙いがある。CMPスラリーやプリント回路基板の電極以外のパターンなどを保護するソルダーレジストなども手掛けている。12月1日の日経産業新聞が昭和電工の狙いを伝えている。

昭和電工は半導体実装材料や基盤、装置などの開発にかかわる企業12社が連合するコンソーシアム「Joint 2(Jisso Open Innovation Network of Tops 2)」を昨年10月に設立したが、もはや材料企業が単独で開発することは無理な状況になってきたことからの設立だ。このJoint 2では、2.5D実装の実用化を目指すとしている。

1日の日経産業はキヤノン専務執行役の武石洋明氏のインタビュー記事を掲載、2025年に生産能力を倍増させようと500億円を投じて宇都宮市内に工場を新設するという。この2〜3年の需要の高まりや、総論として半導体市場はまだまだ引き続き十分伸びるとの見通しで新設を決めたとしている。キヤノンもようやく再起動というところだ。

ASMLは台湾に続き、韓国にも技術拠点を設けると11月29日の日経産業が報じた。約250億円を投じてソウル郊外の漢城に技術拠点を設ける。EUVはそう簡単には使いこなせない。台湾には数千人規模の拠点があり、TSMCと共同で運用するための体制を構築している。EUV技術ではTSMCが圧倒的に進んでいるといわれており、装置を買って来ればよいというものではないらしい。韓国にはSamsungやSK Hynixなど、これからEUVを使うユーザーがいるため、それらを後押しする。今後10年間で1400名を雇用するという。

(2022/12/05)

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