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中国リスクの懸念が現実に、米政府が中国半導体工場への投資規制を強化

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11月27日、中国における習近平体制を批判するデモが上海で起きた。習近平は台湾統一を実現することを第20回共産党大会で改めて強調した。これに対して米国は中国に対する半導体規制を強めている。Intelの大連工場を買ったSK HynixはNANDフラッシュの増産に米政府の許可制が必要になった。SMICは投資を増強、TSMCもアリゾナ工場を強化する。

図1 HPE(Hewlett-Packard Enterprise) Discover 2022でのSK Hynixのブース 出典:SK Hynix Newsroom

図1 HPE(Hewlett-Packard Enterprise) Discover 2022でのSK Hynixのブース 出典:SK Hynix Newsroom


米国政府は中国半導体に対して規制を強めている。11月25日の日本経済新聞は、SK HynixがIntelから大連にあったNANDフラッシュの工場を手に入れてからわずか1年足らずで、米国政府の規制により中国の半導体工場への投資が許可制となった、と報じた。この結果、SKによるNANDフラッシュの増産投資に黄信号がともる、と表現している。

SKがIntelから大連工場を買収する契約を結んだのは2020年10月。この時点でも米中対立が先鋭化していた。その少し前の2020年5月には、米ファウンドリのGlobalFoundriesが中国工場を完成させながら、生産をやめるという発表があった。実際に生産する前に中国から引き揚げたのである。この工場は、100億ドルをかけて中国政府の歓迎もあり、2018年中ごろに完成したが、それ以降、大量生産には踏み出していなかった。

IntelがSK Hynixに大連工場売却を持ち掛けたのは、米政府の規制が強まったこのころであった。日経は「Intelは中国の半導体工場を持て余していた可能性がある」と表現したが、GFの中国工場撤退と合わせるとそのように見ることができるだろう。韓国は中国市場に力を入れてきた。Samsungは西安に半導体工場を持ち、SK Hynixは大連の他に江蘇省無錫市にDRAM工場を持っている。

SKは2021年に江蘇省のDRAM工場へEUVを導入しようとして米国政府の先端技術の流出防止規制によって断念した。さらに、2022年10月8日のロイターは「商務省はKLAとLam Research、Applied Materialsには文書で輸出制限を通知している。特に14nm未満のプロセスを用いる先端半導体を製造する中国の工場に半導体製造装置を輸出することが原則禁じられた」と報じている。一方で、「Samsung、SK Hynixの中国工場とも、米国製の半導体製造装置の中国への輸出規制を1年猶予すると米国商務省が発表した」という報道もあるが、これはどうやら先端ではない製造装置のようだ。

そのような中、半導体製造装置の中国輸出に関しては、10月11日のロイターは「米半導体検査装置メーカーのKLAは、IntelやSK Hynixなど在中国の顧客に対する一部製品・サービスの供給を停止した」と報じている。また、オランダのASMLは米国籍・永住権保有者や在米の従業員に対し、在中国の施設への新規則の対象となる半導体に関するサービスを停止するよう命じた、という報道もある。

ただ、これまではApplied MaterialsやLam Research、東京エレクトロンなどは中国の半導体へ装置を大量に輸出しており、売り上げの20%程度を占めるようになっている。

中国の半導体ファウンドリである「SMICは、2022年12月期の投資額を従来に比べ約3割増の66億ドル(約9200億円)に引き上げる」と25日の日経産業新聞が報じた。当初の投資額は50億ドルであったため、投資を加速しているといえそうだ。増額の理由を、同社は「リードタイムが長い製造設備の前払い金を支払うため」と説明しているという。

TSMCは現在建設中の5nmプロセスノードのアリゾナ工場に加え、新たに3nmプロセスノードの工場の建設をアリゾナ州で検討している、とTSMCの創業者であるMorris Chang氏が台北の記者会見で述べたと22日の日経が報じた。米国工場をさらに強化するということは、中国の台湾侵略を警戒したことによるものだろう。

(2022/11/28)

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