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メモリ不況確定だが、次の半導体好況期に向けた投資、減税、誘致など活発

11月15日、2022年第3四半期(3Q)におけるSamsungの決算が発表され、メモリ部門の売上額は全四半期比28%減、前年同期比27%減となり、メモリ不況に突入することが確定した。Micronはキオクシアの30%減産に続き、20%の減産を発表した。半導体は不況期に入ったとは言え、短期間に回復に向かうという予想が強い。このため未来に向けた積極的な投資も進んでいる。

図1 Micronの東広島工場 出典:セミコンポータル撮影

図1 Micronの東広島工場 出典:セミコンポータル撮影


Samsung半導体部門の22年3Qの売上額は23.02兆ウォン(約170億ドル)となった。全四半期比19%減、前年同期比14%減であるから、メモリだけの売上額のよりも落ち込みは小さい。それでも半導体部門の営業利益は5.12兆ウォン(約37.9億ドル)であり、営業利益率は22.2%を確保している。すでに発表されている。SK Hynixの売上額は10.98兆ウォン(約81億ドル)となっている。

Micron Technologyは、DRAMとNANDフラッシュのウェーハ投入量を2022年度第4四半期(2022年9月1日期)のそれに対して20%減産すると発表した。在庫を大幅に調整するため、2023年の年間のビット需要はDRAMではマイナス、NANDフラッシュでは1桁パーセントの供給量増加にとどまる、とMicronは見ている。

ただ、今回の半導体不況はさほど悲壮感がないことが例年にない特徴となっている。次の好況期に向けた活動が活発になっているからだ。半導体産業は成長産業であるという認識が世界だけではなく日本でもなされるようになってきた。例えば、Micronは世界初の1β nmプロセスの64GビットDRAM技術を発表し(参考資料1)、日本の広島工場でそれを開発したことを明らかにした。国内では、先週報じた日本初の先端ファウンドリサービス会社ラピダスが立ち上がった。

SCREENセミコンダクターソリューションズは、次世代半導体デバイスの洗浄プロセスの開発を目的に米IBMと共同開発契約を締結した、と15日発表した。16日に報じた日刊工業新聞によると、SCREENがIBMの研究拠点の一つである米ニューヨーク州アルバニーにスタッフを派遣する。

半導体設計・製造部門を持つ自動車産業のティア1サプライヤーであるデンソーは、2500憶円をソフトウエア開発に振り向ける、と11月16日の日本経済新聞が報じた。GAFAが自動車のインフォテインメント系でApple CarPlayやAndroid AutoなどのOSを進化させており、これらに対抗すると日経は伝えているが、それだけではない。クルマをソフトウエアの更新で進化させるSD-V(ソフトウエア定義のクルマ)の動きが世界的にあるからだ。クルマはもはやハードウエアをプラットフォームにして、ソフトウエアを変えるだけで様々な機能を実現する方向に向かっている。すなわちコンピュータ化である。

半導体やフラットパネルディスプレイなどのフォトのマスクの製造装置や検査装置を手掛けるブイ・テクノロジーは、ファブレス経営だけではなく国内にも自前の生産拠点を初めて設ける、と15日の日経が伝えた。また、ウェーハ成膜装置のKOKUSAI ELECTRICは、240億円を投資して富山県砺波市に新工場を建設する。現在主力の富山工場と同面積の4万平方メートルの用地を新工場用に確保した。キヤノンも25年春の稼働を目指して栃木県宇都宮市に露光装置の新工場を建設し、生産能力を倍増させる。

台湾の行政院は、半導体などの先端技術の研究開発や投資を促すため、関連企業への減税措置を拡大することを決めた、と18日の日経が報じた。法人税額から、研究開発費の25%(従来は15%)、設備投資の5%(同0%)をそれぞれ乗じた額を控除できるようにする。2023年1月1日から施行予定。

米国のオハイオ州は日本の半導体企業の誘致にも乗り出す考えも示した、と17日の日経が伝えた。すでにIntelは同州に200億ドルを投じる新工場を建設する計画を発表しており、オハイオ州は積極的な誘致に乗り出している。また、オハイオ州は古い産業の脱却から半導体産業の強化へと進めており、同州とミシガン州、イリノイ州、インディアナ州と大学同士の連携を深め、半導体・マイクロエレクトロニクス産業のニーズを引き出せる「中西部半導体ネットワーク」を最近、形成している。

半導体が重要な成長産業であることは世界中が認識していることだが、21日の日経は「世界秩序、鉄からシリコンへ」と題した解説記事で半導体は防衛産業にも重要であることを述べている。「例えばミサイルの精密誘導に必要な半導体は、パワー半導体とは桁違いの高次元の技術を要する」、としてマイクロプロセッサやパワー半導体が探知システムなどにも使われていることを解説している。かつて米国の国防総省は超高速集積回路の研究開発に多大な資金を投入してきたが、冷戦時代が終わり半導体は軍主導の技術ではなくなった。それでも地政学的なリスクに対応するために半導体は防衛という意味で重要な産業でもある。

参考資料
1. 「Micron、1β nmノードの64GビットのDDR5x-DRAMをサンプル出荷」、セミコンポータル (2022/11/08)

(2022/11/21)
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