自動運転、EVなど車載市場向け半導体が活発に
自動運転、電気自動車(EV)などACES(CASE)の実現や普及に向けたニュースが多い。国内でもスタートアップ2社が自動運転の実証実験を開始した。そのための目となるイメージセンサでソニーの意気込みが強まり、ルネサスは自動車向けで売上・利益とも大きく伸ばした。海外勢のTIも日本市場に目を向ける。EV向けにSiC半導体をトヨタとホンダが採用する。
図1 米スタートアップProterra社のEVバス 出典:Proterra
10月28日の日本経済新聞によると、レベル4の自動運転の実証実験は、中国や米国などのスタートアップが先行しているが、日本でもスタートアップが始めている。ソフトバンクの子会社ボードリーは自動運転の進行管理システムを開発しており、自動運転車を開発するエストニア企業と協業し、23年度中の公道走行の実現を目指している。同社は2020年から茨城県境町で3台の自動運転バスを5年間、毎日運航するプロジェクトを実施している。
自動運転ソフトウエアを開発してきた名古屋大学発のスタートアップ、ティアフォーは、2022年2月にNTT東日本やKDDIなどと成田空港内で自動運転バスの実証実験を行っている。ターミナル間を結ぶもので、車載カメラから高速通信規格「5G」によりほぼリアルタイムで送られる高精細な画像などを空港内で遠隔監視し、伝送技術や安全性などを検証する。
中国では百度やBYDが自動運転の実証実験を進めていたが、8月に百度は中国当局から完全無人の自動運転タクシーの営業を始めた。ただし、世界中の大手自動車メーカーは、自動運転に対しても従来と同様、「運転手がどのような場合でも安全を確保する」ことを条件としているため、なかなかレベル4を提供すると言わないが、スタートアップの助けを借りてさまざまな実証実験を進めることは自動運転を進展させる助けになる。
自動運転にはカメラは欠かせない。もちろんレーダーやLiDARの必要だが、カメラはコストが安いため、これまでも今後も使われる。10月28日の日経産業新聞によると、ソニーセミコンダクタソリューションズの清水照士社長は、これまでのスマートフォン市場から自動車やFA、監視カメラ市場などへと用途を拡大していく。モバイル+αだと述べる。ただ、ソニーはスマホ向けでは圧倒的に強いが、車載用ではそれほど強くない。しかし、車載用には欠かせないHDR(高ダイナミックレンジ)機能や、LEDフリッカー対策などにも力を入れている。自動車メーカーは安全性を最優先するため、量産車への採用には時間がかかる。それでも清水社長は「今ではソニーのセンサーの強みを直接評価してくれるようになってきた。参入当初とは全然違う」と述べており、採用発表は今後、期待できそうだ。
ルネサスエレクトロニクスが決算を発表したが、2022年1~9月期の連結決算では売上額が前年同期比63%増の1兆1100億円、純利益が同2.5倍の1851億円だった。自動車用途では、機械部品からシリコンへという大きな流れに乗って22年1~9月期累計の売上額は前年同期比43.8%増の4755億円となった。この数字はDialog買収によるものではなく、むしろ産業・インフラ・IoT向け市場でその買収効果は大きい。産業用は同85.4%増の6270億円となった。
アナログ半導体トップのTexas Instruments社は車載用に力を入れてきたものの日本市場では、さほど強くなさそうだ。27日の日経は、「日本の供給網はさらに強化する。自動車メーカーと強い関係を構築する」と述べたと報じている。
26日の日経産業新聞によると、トヨタは2022年発売予定の「レクサス」ブランドの新型EV「RZ」に、ホンダは26年以降の発売を計画する中・大型EVにSiCパワー半導体素子を採用するという。EVのインバータにSiCパワートランジスタを採用したのはTeslaのModel 3が最初だったが、スタートアップのLucid Motorsも採用している。Model 3にはSTMicroelectronicsのSiCトランジスタが使われ、SiC市場ではSTMがトップをいく。しかし、2位のInfineon Technologiesも追いかけており、「毎年倍々ゲームで伸びていくような勢いだ」と筆者に語っている。SiCはこれまでのシリコンのIGBTよりも10倍も高かったために採用に二の足を含メーカーが多かったものの、インバータの小型化や熱設計の楽さからSiCは伸び始めている。