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半導体不況の次の成長を狙った動きが活発に、ソシオネクスト株価続伸

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すでにメモリ不況に突入している中、次の成長に向けた動きが活発になっている。これまでなら、この不況はいつ解消するのかという怯えにも似た意識が強かった。しかし、今回は半導体が成長産業であることを再認識されるようになったため、投資はさほど緩まず次の成長を狙う考えに変わった。台湾は9月も21%成長で好調なのに加え、ソシオネクストの株価好調、SK Siltronの投資に加えベトナムやインドまでが半導体に力を入れ始めた。

60GHzの広帯域ToFセンサ  SC1240AR3 / ソシオネクスト

図1 ソシオネクストの開発した60GHzの広帯域ToFセンサ 出典:ソシオネクスト


10月12日にソシオネクストが東京証券取引所のプライム市場に上場したが、先週(10月21日)の終値は4965円となり、公開時よりも1000円以上高くなった。公開株価は、3650円だったが、上場直後に3835円と5%上回った実績があった。最近はさらに株価を伸ばし続けている。21日の日経産業新聞によると、EV(電気自動車)や自動運転車向けのチップには5nmプロセスノードの製品を考えており2024〜25年に量産が始まると報じた。車載向け半導体市場は成長産業であり、マクロ経済の影響(メモリは受けている)は受けていないという。

ソシオネクストは、富士通とパナソニックのシステムLSI事業を統合したファブレス半導体だが、上場に伴いパナソニックは主要株主ではなくなり、日本政策投資銀行と富士通がそれぞれ約15%を持つ主要株主となった。筆者があるエンジニアにインタビューした時、「ファブレスになってから工場からの月産規模が少ないと製品化できなかった過去とは違い、月産規模を気にせずのびのび設計できる点がファブレスの良さ」と語っている。

台湾のIT19社の業績がまとまり、9月における合計売上額は前年同月比21.3%増の1兆7060億台湾元(約7兆9000億円)となった。これは21日の日経産業が報じたものだが、ファウンドリのTSMCが同36.4%増と相変わらず好調だ。それでも2022年の設備投資額を1割減の360億ドルに減額すると10月中旬発表していたが、これは減額というより投資を来年に先延ばししただけとTSMCは述べている。メモリメーカーのビジネスは深刻で台湾の、南亜科技は、2022年における従来の予想設備投資を4割減額すると中旬に発表したが、さらに2割減らすと日経産業は報じた。

韓国のウェーハメーカー、SK Siltronは韓国の亀尾工場を増強すると発表したが、21日の日経産業は、今後5年間で総額2兆3000億ウォン(約2300億円)を投じ、11月から新製造棟の建設を始めて2024年上半期の量産を目指すと報じた。この新棟建設に8550億ウォン(約855億円)の投資を取締役会で決定した。直径300mmのシリコンインゴットの生産設備を増強していく。

住友電気工業は、10GHzでの利得が13dB程度持つGaN-HEMT(高電子移動度トランジスタ)を開発したと発表した(参考資料1)。利得は40GHzでも7~8dB程度あり28GHzの準ミリ波から39GHzのミリ波に使える可能性がある。GaN-HEMTは送信機のパワートランジスタとして使う。従来のショットキーバリアFETではなく、絶縁ゲート型のMISFET構造に改善している。

これまで半導体チップビジネスには縁のなかったベトナムがファブレス半導体に参入した。ベトナムのIT大手FPT社が子会社FPT Semiconductorを設立した。ベトナム国内で通信や自動車向けなど7分野向けに半導体を設計、韓国で製造する。2023年までに2500万個供給する計画だと19日の日経産業が伝えた。国内の通信業者を始め、日本、韓国、台湾の企業に期待している。

またインドでは10年以上前から半導体製造産業を作ろうと政府が呼びかけてきたが、呼応する企業がなく、いまだに生産メーカーは出ていない。最近も政府が2021年12月に半導体と液晶の生産に7600億ルピーの支援策を打ち出した。今年の9月には台湾の鴻海精密工業傘下のFoxconnはインドのコングロマリットのVedantaと提携、半導体を生産する覚書を交わした、と18日の日経が報じた。Foxconnは1億1870万ドルを投資、40%の株式を持つ見込だ。インドはこれまで半導体設計には極めて強く、デザインハウスが多かった。Texas InstrumentsやSTMicroelectronics、最近ではSamsungも半導体設計事業を請け負うデザインハウスを持ったり現地のデザインハウスと提携したりしている。しかし、製造は弱かった。

参考資料
1. 「“ポスト5G”を担う世界初のGaN-HEMTを開発 〜高出力・高周波ニーズに対応する次世代情報通信システムの実現に前進〜」、住友電気工業 (2022/10/18)

(2022/10/24)

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