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米ニューヨーク州に巨大な半導体工場設立が相次ぐ、MicronにIBMも

米国ニューヨーク州に相次いで数兆円規模の投資計画が相次いでいる。Micronは本社のあるアイダホに加え、ニューヨーク州の中央部に新メガファブを設立することを10月4日に発表、6日にはIBMもハドソン川沿いのハドソンバレーに新半導体工場を設立すると発表した。ベトナムにもついにファブレス半導体が生まれ、半導体産業は世界的に広がっている。

Micron Technologyは、次の四半期はさらに厳しい前年同期比45%減の42.5億ドルの売上額を見込んでいるものの、半導体産業の成長は続くとして、ニューヨーク州オノンダガ郡クレイ町に工場を設立、今後20年間以上に渡り1000億ドルを投資すると発表した(参考資料12)。ここはシラキュース市の郊外に近い。2022年9月に本社のあるアイダホ州ボイジー工場へ150億ドルの投資を発表した後、わずか1カ月で更なる追加発表となる。MicronはCHIPS&科学法案からの支援に加え、ニューヨーク州からも55億ドル相当のインセンティブを受ける。この町は水や空気の清浄さに加え、電力確保も可能なうえ、教育レベルも高いことが魅力だとしている。

クレイ町の新工場はメモリを米国内生産する。Micronの高額給料9000名の雇用を含む5万人の雇用が生じるとしている。まずは第一期工事としてこの10年間に200億ドルをメモリのメガファブに投資、60万平方フィートのクリーンルームを4棟設立する。合計で40面のサッカー場に相当するとしている。ニューヨーク州のメガファブは、DRAMを生産し、DRAM比率を10年後には40%に上げていく予定だ。2023年に準備を始め24年に着工する。


図1 IBMのポキプシー工場 量子コンピュータを実装している写真のようだ 出典:IBM

図1 IBMのポキプシー工場 量子コンピュータを実装している写真のようだ 出典:IBM


IBMの発表は、バイデン大統領が間もなく同社のニューヨーク州ポキプシー工場を訪れる予定に先立ち、公表されたもの(参考資料3)。元々ニューヨーク州になじみの深いIBMには、マンハッタンからハドソン川に沿ってヨークタウンハイツにT.J. ワトソン研究所があり、そこから北へかつてのイーストフィッシュキル工場(現在onsemi所有)があり、さらに北のポキプシーに工場がある。さらに北にはアルバニーの研究開発拠点がある。同社はハドソン川に沿う一帯をハドソンバレーと呼んでいる。ここに、半導体、コンピュータ、AI、ハイブリッドクラウド、量子コンピュータなど技術のエコシステムを広げていくとしている。

このポキプシー工場は、CHIPS&科学法案の対象として、コンピュータやAIのプラットフォームとなる次世代の半導体チップの安定供給を確保するサイトとなる。さらに最初の量子コンピュータセンターもここにある。量子コンピュータ開発のハブの役割を持つという。アルバニーで世界初の2nmチップを試作し、ここにNSTC(National Semiconductor Technology Center)の設立をIBMは期待している。

自動車向け半導体需要も成長しそうだ。10月 7日の日本経済新聞は、ベトナムでIT業界最大手のFPT社がファブレス半導体のFPT Semiconductorを設立した、と報じた。「ベトナムで設計、韓国で生産する」と報じており、Samsungがファウンドリとなるようだ。通信や自動車向けなど7分野で2023年までに2500万個を供給する計画だとしている。

米国では小型トラック専用のEV(電気自動車)のスタートアップRivian Automotiveが株式市場に上場したものの、供給できるのか不安視され、株価が落ちてきていたが、10月に入り9月末より1割ほど上げたと7日の日経が報じた。7~9月期の生産台数が7363台と前期よりも7割増えたことが歓迎された。年間2万5000台の計画を達成する見込みという。

国内でもロームが2022年4~9月期の売上額が前年同期比17%増の2595億円となり、連結純利益も同69%増の520億円になったと7日の日経が報じた。自動車向け製品が増え、パワー半導体やLSIが売れたようだ。ロームは今や海外販売比率が約7割と高まり、成長できるようになった。最近では欧州のパワーモジュールメーカーSEMIKRONと提携し、SiCパワー半導体チップを供給できるようになり、中国のSoCメーカーSemiDriveとも提携、PMICやSerDesチップをSemiDrive社のSoCリファレンスボードに採用された。

自動車向けのチップではタイヤの空気圧をモニターし、異常があれば運転手に無線で伝えるTPMSチップはタイヤへの装着が義務化されているが、ブリジストンはさらにRFIDチップもタイヤに装着する。報じた6日の日経によると、TPMSチップではタイヤを個別に識別していなかったため交換時にデータを紐付けするための作業が必要だったとしている。RFIDが装着していれば、タイヤの生産情報やロット番号、減り具合などの使用実績データなどがデータとしてまとまるため、新製品タイヤの開発に活かせる。

参考資料
1. 「メモリ不況期に入った、Micron・Samsungが厳しい見通し示す」、セミコンポータル (2022/10/03)
2. "Micron Announces Historic Investment of up to $100 Billion to Build Megafab in Central New York", Micron (2022/10/04)
3. "IBM and CEO Arvind Krishna Welcome President Biden to Poughkeepsie Site, Company Plans to Invest $20 billion in the Hudson Valley Region Over 10 Years", IBM (2022/10/06)

(2022/10/11)
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