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次のシリコンサイクル狙う半導体投資が活発、ダイキンが自社チップを導入

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短期的に半導体景気はやや下降気味になり始めているが、半導体は中長期的には成長する産業だとの認識が定着し始めている。空調のダイキンが独自半導体チップを採用、SK Hynixが15兆ウォンを投資、韓国内の工場を拡張する。半導体コンテンツが倍増する電気自動車(EV)がトラックにも普及、EVや再生可能エネルギーに成長が見込まれるSiCパワー半導体ファミリーを東芝が増やす。

中国でのロックダウン以降、中国サプライチェーンに変調が起きている。ダイキン工業は、中国リスクを減らすため、2023年度中に有事に中国製部品が無くてもエアコンを生産できるサプライチェーンを構築する、と9月21日の日本経済新聞が報じた。中国の部品調達率を20年の35%から21年には20%まで引き下げたが、上海ロックダウンの影響を受け生産が減少した。平常時は中国製部品を調達しながらも有事には他地域からも調達できる体制が必要と判断した。

加えて、省エネなどエアコンの中核機能にかかわる部品は内製化する。22日の日経はさらに踏み込んで、空調機器に搭載する半導体に、自社で仕様を決めた特注品を導入する、と報じた。空調機器の省エネ性能を高めるため、国内外の半導体設計会社やファウンドリと組み、2025年から一部の製品に特注の半導体を採用する。将来的には空調機全体の半数に特注品を搭載する考えだとしている。

韓国のSK Hynixは、清州市にあるNANDフラッシュの工場を拡張するため今後5年間で15兆ウォン(約1.5兆円)を投資する、と22日の日経産業新聞が報じた。M15と呼ぶ工場棟を拡張し、10月に着工する。拡張面積は約6万平方メートル、2025年をめどに拡張部分でNANDフラッシュを量産するという。足元のメモリー市況は悪化しているものの、SKは次の需要回復期を見据えて投資を決めた。

短期的な市況の悪化によって、米クラウドサービス企業大手4社(Microsoft、AWS、Google、Meta)の投資が2022年の4〜6月期に前年同期比で20%増にとどまった、と21日に日経が報じた。4社の投資額は21年を通じてずっと3〜4割増で推移していた。また4社の売上額は前期比でもMicrosoftが6%ポイント減の20%成長、Alphabet(Googleの持ち株会社)は8%ポイント減の35%、Amazonは3%ポイント減の33%になったとしている。Metaは前年同期比で1%の減収だった。ただし、長期的には成長産業であるから、投資を先延ばしにしたともいえる。


eActros

図1 Daimler Truckの新型EV 出典:Daimler Truck


今後のエレクトロニクス・半導体での成長分野の一つEV関係では、20日から始まったIAA Transportationに先駆けて開かれたプレス向けの発表会で、Daimler Truck社が1回の充電で走る航続距離を最大500kmと伸ばしたEVのトラック「eActros LongHaul」(図1)を2024年から量産開始すると発表した。Daimlerが発表したのはこれだけではない。ヘビーデューティのトラクター「Mercedes-Benz eActros 300」、さらにミディアムデューティのトラック「Mercedes Benz eAtego」、ライトデューティの「FOSO Next Generation eCanter」も発表した。

またEVだけではなく、燃料電池(FCV)のトラック「Mercedes-Benz GenH2 Truck」の試作車も発表した。実質的に40トントラックであり、水素タンク満タンで最大1000kmまで走る。ヘビーデューティの長距離輸送に向く。欧州では、長距離向けのトラックにはFCV、短距離用途の乗用車ではEVが有利という認識がある。トラックのような業務用では、車両基地に水素ステーションを設置するだけでとりあえずは済むが、乗用車だと全国に設置しなければならないため、上記のような認識が欧州にはある。

ただ、FCVでは、回生ブレーキ用のオンボードチャージャー回路や、加速時に必要なEV機能を加える小型インバータ回路も備えており、EVにせよFCVにせよ、パワー半導体・ドライバIC、マイコンのチップセットが必要なため、これからの半導体の成長分野として自動車は期待できる。加えて、自動運転用の判断回路やコネクテッドカーの5Gワイヤレス通信回路なども加わるため自動車向けの半導体への期待は大きい。

自動車向けや再生可能エネルギー向けにSiCへの需要もこれから高まる。東芝デバイス&ストレージ社は、SiCパワー半導体を2024年度以降に向けて約80種類、と現状の約3倍に増やす目標を掲げたと21日の日経産業が伝えた。SiC半導体は価格がSi IGBTの10倍もするため、コストダウンをいかに進めるかがカギとなる。耐圧600V程度だとIGBTとの競合は激しいが、1200VだとSiCに軍配が上がる。高耐圧が要求される再生可能エネルギーやEVの急速充電機器ではSiCが望まれている。東芝はパワー半導体で世界6位だが、パワーMOSFETでトップ3位を目指している。

(2022/09/26)

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