セミコンポータル
半導体・FPD・液晶・製造装置・材料・設計のポータルサイト

メモリはダウン、ファウンドリはアップの半導体産業、AppleはRISC-V採用?

|

半導体産業は短期的にはスローダウンの傾向が見え始め、スマートフォンやパソコンなどのメモリの値下がりが続いている。しかしメモリ以外はそれほど悪くない。台湾のファウンドリ2社の8月は共に前年比30%以上の高成長を示した。長期的には半導体は成長産業であるから、投資が相次いでいる。半導体を大量に使うEVが米国の自動車ショーで鮮明になった。AppleがRISC-Vを導入するという噂も上がった。

iPhone 14 Proに搭載されたA16 SoCチップ概要 出典:Apple

図1 iPhone 14 Proに搭載されたA16 SoCチップ概要 出典:Apple


市場調査会社のIDCは、2022年における従来型のパソコンの出荷台数を前年比12.8%減の3億530万台と予想しており、タブレットの出荷台数も6.8%減の1億5680万台になると見ている(参考資料1)。2023年以降もそれほどの成長は期待されておらず、ほぼ横ばいで推移する。

パソコンの出荷台数の減少は、メモリの在庫調整によって価格が下がることを裏付けている。実際メモリの価格は下がり始め、9月13日の日本経済新聞によれば、4GビットのDDR4のDRAMは昨年の中ごろからずっと下落が続いてきており、単価3.3ドルをピークに8月には2.0ドル前後まで下落した。7〜9月期におけるNANDフラッシュは、TLCの256Gビット品の単価が4〜6月期から1割ほど下がった。

それを受けて日経は、製造装置も来年は減益になりそうとの予測を発表している。東京エレクトロン、SCREENホールディングス、アドバンテスト、ディスコの市場予想を集計したところ、24年3月期の純利益合計は9月15日時点で今期予想比7%減の7154億円となる見込みだった。6月末時点(4%増の8093億円)から12%減ったという。ただ、純利益だけで評価すると、投資したり企業を買収したりすると純利益は減るため、製造装置産業が成長しているかどうかを判断できない。

SUMCOは2026年までのメモリ向けのシリコンウェーハの需要予測を3月時点から約3%下方修正した、と14日の日刊工業が報じている。メモリ向けの300mmウェーハ需要が月産10〜15万枚減少するとしているが、生産計画は見直さない方針だという。現在はメモリの調整時期にすぎないためだ。

ただ、半導体の製品価格の下落傾向はメモリに顕著だが、ロジックやアナログなどのICを生産している台湾のファウンドリは好調を維持している。例えば、ファウンドリトップのTSMCは、前年同月比で6月こそ18.5%成長とやや鈍化傾向を見せたものの、7月は49.9%増、8月は58.7%増の2181億台湾ドル(1台湾ドル=4.57円で計算すると約1兆円)という絶好調の数字を示した。先端プロセスを使わずにアナログやMEMSなどのICを手掛けているUMCは、6月同43.2%増、7月35.2%増、8月34.9%増の253億台湾ドルと好調だ。

長期的には半導体への投資は続いており、昭和電工マテリアルズは先日のCMPスラリーの増産に続き、半導体パッケージ基板の一つである銅針積層板の生産能力を倍増すると発表した。投資額は約100億円。下館事業所(茨城県筑西市)と台湾のグループ会社で製造設備を増強する。日本火薬も厚狭工場(山口県山陽小野田市)を増強、約65億円を投資して敷地内に半導体封止材やプリント基板などに使用するエポキシ樹脂の工場建屋を新たに建設する。2025年3月ごろの稼働を見込む。

米国の自動車産業の街、デトロイトで先週開閉幕した北米国際自動車ショーにおいて、GM、Ford、Stellantis(FiatやChrysler, Peugeotなど8メーカーが合併した企業)などがEVの新車発表を始めEVに力を入れていることを16日の日経が報じている。米国は、Tesla以外の古くからの自動車企業もEVやPHEVへの転換を加速している。カリフォルニア州では環境当局が35年にガソリン車を全廃する規制案を決めたという。また米国製のEV新車購入には最大7500ドルの税額控除を実施するとしている。

まだ、うわさ話にすぎないが、AppleがいよいよArmコアからRISC-Vコアへ移行するという話(参考資料2)が出てきた。AppleはArmコアの回路の細部に至るまで手を加えられるという高価なライセンス契約をしているようだ。このためRISC-VのフリーCPUコアを自社向きに命令を追加したり、マルチコアやパイプラインの段数を設定したりするなど自由にCPUコアを設計する力を持っているため、更なる性能向上と低消費電力の独自SoCプロセッサをRISC-Vで目指すことが可能だ。この話が本当なら、Arm離れは加速するのではないだろうか。


参考資料
1. "Worldwide Shipments of PCs and Tablets Forecast to Decline in 2022 and 2023 Under Challenging Market Conditions, According to IDC”, IDC Press releases (2022/09/01)
2. "Report: Apple to Move a Part of its Embedded Cores to RISC-V, Stepping Away from Arm ISA", TechPowerUp (2022/09/16)


(2022/09/20)

月別アーカイブ