セミコンポータル
半導体・FPD・液晶・製造装置・材料・設計のポータルサイト

自動車半導体がEV、コネクテッドカーなどACES技術が大きく進展

|

電気自動車(EV)向け半導体の在庫がコロナ前(2019年)の在庫とほぼ並んだ。さらに次の車載半導体を目指し、コネクテッドカーやEVなどACESの動きが活発になっている。メモリは価格が下がるフェーズに入ったが、韓国大手2社は投資を緩めない。国内トップのファブレス、ソシオネクストの東京証券取引所プライム市場への上場が決まった。

9月6日の日本経済新聞は、車載半導体上位4社である、Infineon TechnologiesとNXP Semiconductors、ルネサスエレクトロニクス、STMicroelectronicsの4社の平均在庫を見積り、2022年4〜6月期の在庫回転月数は平均3.48カ月となり、19年の年間平均(3.51カ月)とほぼ並んだ、と報じた。ただし、自動車を生産するためのサプライチェーンはまだ修復しておらず、生産台数を減らすOEMもいる。半導体を生産するサプライチェーンもまだ回復しておらず、原材料の高騰で調達が困難な状態もある。ただ、半導体の過剰供給にはそろそろ気を引き締めていかなければならない状況にもなりつつあり、かじ取りが問われている。


xEV向けインバータ用 新世代パワー半導体Si IGBTを発売 / ルネサスエレクトロニクス

図1 EVインバータ向けチップセットを販売 出典:ルネサスエレクトロニクス


次のクルマ作り(設計)への準備は怠らない。例えばルネサスは、EV向けのインバータ開発を容易にするソリューション提供に力を入れる。モータを駆動するための3相(120度ごとの回転に対応するため)のスイッチの役割を果たすパワー半導体IGBTの損失を1割削減した新製品を開発したが、IGBT単体ではなくIGBTを駆動するドライバIC、さらにそのICに手順通りの命令を送るためのマイコン、電源回路などをセットにしたソリューションボードとカスタム設定ができるようにするソフトウエアなどと一緒に売り込む。EVドライブ回路の経験の少ない新興企業を対象にし、100kWのインバータでモータを稼働できる設計を顧客に示す。中国やインドの巨大市場に最適。

ルネサスは、さらに安価なレーダーを高価なLiDARの代わりに使えるようにする4Dレーダーのスタートアップ、印Steradian Semiconductorsを買収すると発表した。帯域が4GHzと広い79GHzレーダーを使えば、物体の奥行も測定し物体の距離だけではなく、その形状も把握できる。2016年創業のSteradianは物体の距離と形状も測る4Dレーダーに強い。22年中にレーダーチップのサンプルを出荷し、年末までに買収を完了する予定だという。

EVで大きな市場な見込めるSiCパワー半導体の8インチウェーハを昭和電工が開発、サンプル出荷を開始した。自社製のSiC単結晶にエピタキシャル成長でウェーハを作製したという。同社は21年から8インチ化に着手、22年5月にはNEDOの「次世代グリーンパワー半導体に用いるSiCウェーハ技術開発」の支援を受け、サンプル出荷にこぎ着けた。

次世代クルマにはワイヤレス接続も要求項目の一つ。国内ファブレス半導体のメガチップスがオーストラリアのMorse Micro社に97億円(10万豪ドル)を出資、Wi-Fi HaLow規格のチップを手に入れた。Wi-Fi HaLowは、一般のWi-Fiとは違い、150kbpsと低速だが2km程度飛ばすことのできる技術で、IoTやコネクテッドカーへの応用が期待されている。

9日の日経産業新聞によると、SUBARUは衝突防止技術「アイサイト」のソフトウエアを無線で更新できるOTA(Over the air)を適用しようとしている。アイサイトは2大のカメラから見える立体画像から物体の距離を計算し近づいていると判断するとブレーキがかかるシステム。ソフトウエアのアルゴリズムで計算するため、優れたアルゴリズムが登場したらソフトウエアを自動的に更新し、機能を高めることができる。クルマの位置検出にはGNSS(日本版GPS)やクルマ4隅の24GHzレーダーなども使っている。OTAはTeslaが最初に採用したワイヤレスによるソフトウエア更新技術。

メモリは値下がりが続き、ある意味、メモリサイクルの底に向かってきているが、韓国のSamsungもSK Hynixも投資の手を緩めない。Samsungは、ソウル郊外の平澤事業所で、総面積約300万平方メートルに6棟の巨大な製造棟を建てる計画を持っているが、すでに3カ所目の製造棟が稼働し、4棟目の建設工事も始まったと10日の日経が報じた。SK Hynixも清州工場のM15棟を拡張すると7日の日経が報じた。拡張面積は約6万平方メートルで10月に着手しNANDフラッシュを生産する。2025年をメドに拡張部分で量産する見通し。共に、日本がシリコンサイクルの底で投資しなかった失敗を活かす。

ソシオネクストは、IPOが認められ、10月12日に上場することが決まった。富士通とパナソニックのシステムLSIが合併した同社は、富士通とパナソニック、日本政策投資銀行がそれぞれ持ち株を売り出す。1181万6200株を売りだす株式総数で、このうちの827万1400株を国内市場に、354万4800株を海外市場にそれぞれ売り出す。国内売り出しの株式は、政策銀行が330万8500株、富士通は396万1900株、パナソニックは100万1000株となっている。7日の日経によると、想定価格は1株3480円で、上場時の発行株式で計算した時価総額は1171億円となる。

(2022/09/12)

月別アーカイブ