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個人消費の停滞で急ブレーキのNvidia、TELは投資を増強、ルネは新技術買収

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Nvidiaに突然のブレーキが掛かった。9月1日に同社が発表した2023年度第2四半期(2022年5〜7月期)決算では、売上額が前年同期比わずか3%増の67億ドル、純利益は51%減の12.9億ドルという結果だった。9月2日の日経はFinancial Timesの記事を載せ、窮地のIntelと題して分析した。一方、東京エレクトロンやルネサス、化学メーカーは投資の手を緩めていない。

Q2 FY2023 Financial Summary / Nvidia

図1 Nvidiaの2022年5〜7月期業績 出典:Nvidia


これまで前年同期比で50%、60%という驚異的な成長を遂げてきたNvidiaに急ブレーキがかかった。これまでけん引してきたゲームパソコン(デスクトップ)向けのGPUボードが売れなくなったのだ。ゲーム部門の売上額は同33%減、前期比では44%減の20.4億ドルにとどまった。消費者需要と流通在庫の調整期に入ったためだと見ている。特に流通パートナーの値下げやハイエンドデスクトップパソコン向け新アーキテクチャのGPU新製品出荷待ちによるとする。

ただし、データセンター向けは前年同期比61%増、前期比でも1%増の38.1億ドルと好調で、Nvidiaのけん引役がゲームからデータセンターに代わった。ハーパースケールと呼ぶ大規模なコンピュータを並べたデータセンターの顧客がほぼ倍増したとしている。特に北米のハイパースケールコンピュータ、クラウドコンピュータの顧客が低迷する中国顧客を打ち消した。成長のアプリケーションは、自然言語処理とリコメンドシステム、自動運転のデータ処理、クラウドグラフィックス。

その他、画像をビジュアルに見せるモバイルやOmniverseなどの応用のプロ向けビジュアル化部門では、元々売上額がまだ小さいが、ゲームと同様マイナスになり、前年同期比4%減、前四半期比20%減の4.96億ドルとなった。自動運転を指向する自動車部門は、前年同期比45%増、前期比59%増の2.2億ドルとなった。AIコックピットや自動運転関係の売上額が大きく伸びた。

次の四半期(8~10月)の見通しは59億ドル±2%としており、前年同期の71億ドルから大きく低下しそうだ。2日の日経によると、米政府から一部GPU製品の中国、ロシア輸出について政府承認を課したという通知があったことを明らかにしたという。GPUはグラフィックスだけではなく、数値演算や行列演算にも向けにも活用されるため、ロケットなどに搭載すると攻撃目標の精度を格段に上げることができる。米政府は軍事用途に使用されたり、転用されたりするリスクに対応するとしている。やはりGPU製品を販売しているAMDにも同様な通知が来たという。この問題は、GPUはたとえゲーム用でも軍事転用できることを示している、

直近の四半期業績が最も悪いのは大手半導体ではIntel。2日のFinancial Timesの記事では、Intelがアリゾナ州に建設中の工場への投資をファンドであるBrookfield社と折半したことに対して、株式の49%をBrookfieldに売却したと表現した。また、チップレットによる新しい半導体システムを採算悪化につながるという見方を示した。

一方で、半導体投資を続けるメーカーも多い。5日の日経は東京エレクトロンの河合利樹社長とのインタビュー記事を載せ、「一服感出る半導体市場」という記事タイトルを採用したものの、河合社長は、0半導体の成長力は依然として極めて強い、と答え、「大きな谷にはならない」、という見通しを示している。同社は6月に今後5年間で合計1兆円を研究開発に投じる中期経営計画を公表しており、過去5年間の1.6倍になる。

またルネサスエレクトロニクスは、31日、4Dイメージングレーダーを手掛けるファブレス半導体メーカーであるインドのSteradian Semiconductorsを2022年末までに買収し、完全子会社化すると発表した。76~81GHzの広帯域レーダーは奥行きも測定、スキャンすることで3次元画像を得ることができ、高価なLiDARを安価な4Dレーダーに替えられる可能性がある。さらにクルマなどの移動体だけではなく、人感センサとしても使え、人数把握や入退室管理の自動化にも使える。ハードとソフトの開発キットも用意してあり、ルネサスは新技術を手に入れたことになる。

住友化学は、半導体製造用の化学品製造工場を米テキサス州に新設すると発表した。2日の日経によると投資額は約300億円で、2024年度の稼働を目指すとしている。昭和電工マテリアルズは、台湾子会社と茨城県勝田市の山崎事業所で約200億円を投じ、CMP(Chemical-Mechanical Polishing)スラリーを増産すると発表した。特にロジックLSIでは、多層配線の製造工程で、ウェーハをいったん平たんにする研磨の工程でCMPスラリーを使う。いわば砥粒である。ファウンドリ工場の多い台湾では需要が高そうだ。

(2022/09/05)

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