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大陽日酸が希ガス、UBEは硝酸を増産、サプライチェーン復旧目指す

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先端半導体を使うスマートフォンやコンピュータ分野では、需要にややブレーキがかかってきたが、それ以外では依然として半導体不足が続いている。供給不足では、サプライチェーンにあるボトルネックを解消する動きが見られた。大陽日酸は希ガスを倍増、UBEは硝酸を増産する。半導体は、一時的に落ち込むとしても3年〜5年後の中長期的には成長続く。

図1 大陽日酸は半導体用の特殊ガスやMOCVD装置などで定評がある 出典:大陽日酸

図1 大陽日酸は半導体用の特殊ガスやMOCVD装置などで定評がある 出典:大陽日酸


化合物半導体や材料、製造装置を手掛けている大陽日酸がKr(クリプトン)やXe(キセノン)などの希ガスの生産量を倍増させると発表した。KrはKrFリソグラフィに使われ、Xeは照明ランプにでも使われているが、共に安定した不活性ガスであり、短波長レーザーの材料にもなる。Neも同じ希ガスだが、希ガスは製鉄の生産工程の中で生まれる副産物。製鉄のJFEスチールと大陽日酸の合弁会社に新型の空気分離装置を2023年末に設置する。その設備の生産能力はKrが年産260万リットル、Xeは同21万リットルで、24年4月に稼働する予定。投資額は未公表だが、経産省の補助金を活用する。希ガスは半導体生産サプライチェーンの工程に一つにあり、半導体供給不足の解消にも役立つ。

UBE(旧宇部興産)は、半導体洗浄に使う高純度硝酸の工場を増設すると発表した。生産能力を現状より5割増やし、2024年はじめの試運転を目指す。高純度硝酸は半導体の洗浄工程で使用し、同社の国内シェアは約5割という。TSMCの熊本工場新設をはじめ、日本での生産能力が増えるという需要を見込んでいる。27年度までに生産能力を21年度の2倍に増やす目標を掲げ、20年度にも生産能力を増強している、と日経は報じている。

24年ごろには建設中の多数の半導体工場が稼働し始めるため、短期的には供給過剰にはなるが、半導体産業はこれまでもシリコンサイクルを繰り返しながら成長してきた。シリコンサイクルでは、底に来ても前回のピーク金額よりは高いという特長を持ちながら上向きに成長する曲線である。これまで通り、半導体産業では成長が止まるという兆候は全く見られないため、長期的に成長していくことには変わりはない。

ただ、短期的には中国のロックダウンやロシア・ウクライナ戦争の影響によるマクロ経済のゆっくりとした停滞はある。こんな時は次のピークに向けて投資するのがこれまでの勝ちパターンである。このパターンでの変化は当分なさそうだ。

中長期的な需要を見込み、ミネベアミツミがIGBTの生産能力を従来比で約3倍(6インチウェーハ換算)に引き上げる、と8日の日刊工業新聞が報じた。モーターの回転速度を自由自在に変えられるPWM(パルス幅変調)制御方式のインバータのスイッチングにIGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)を使う。投資額は数億円で、北海道の千歳事業所に製造設備を増設し、2022年後半の稼働を目指す。グループのMMIセミコンダクターが生産するIGBTの裏面加工(薄く研磨)を月間8000枚処理できる体制を築くとしている。千歳事業所では主に、スマートフォン向けのリチウムイオン電池の保護ICを生産しており、生産能力は6インチウェーハ換算で月産4万枚。

また、GlobalFoundriesは、2022年内に追加の増産投資を始める、と5日の日経が報じた。現在、シンガポールに新工場を建設しているが、この工場敷地内が候補になるという。GFはドイツのドレスデンと、米ニューヨーク州、シンガポールの3カ所に拠点を設けているが、22年末までに生産増強の工場を決めるとしている。

電子部品の製造開発を手掛ける韓国のLG Innotekは、1兆4000億ウォン(1450億円)を投資、LG電子の亀尾工場を取得して半導体基板などを生産する、と7日の日経が報じた。亀尾工場はスマートフォンを生産していたが、LGがスマホから撤退したため、工場の活用法を検討していた。23年中に半導体パッケージ基板とスマホ用カメラモジュールの量産を始めるという。LG Innotekは日本の半導体商社のイノテック(Innotech)とは関係がないようだ。

(2022/07/11)

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