セミコンポータル
半導体・FPD・液晶・製造装置・材料・設計のポータルサイト

半導体投資が活発に、買収や新工場建設に動く

|

未来に向けた仕組み作りに半導体投資が活発になってきた。先週話題になった世界第6位の半導体BroadcomによるVMwareの買収を提案、UMCはシンガポールでの新工場建設用地使用権を取得、SUMCOが合計3500億円を投資、Si結晶インゴット生産工場を日本と台湾に建設する。先端製品ではQualcommが4nmプロセスのSnapdragonを開発した。

Broadcomは610億ドル(7兆円強)で、仮想化技術のVMwareを買収するというニュースが業界を駆け巡った。5月26日に同社が正式発表したが、その2~3日前から噂は出ていた。Broadcomは数年前にQualcomm買収に失敗しCA Technologiesなどのソフトウエア企業を買収してきた。元々AvagoというHewlett-Packard, 計測器と半導体のAglentからスピンオフした光通信技術が得意な企業がBroadcom Corpを買収、社名を知名度の高いBroadcom Inc.に変えた。元々のBroadcomは様々な企業を買収することで成長してきた。そのDNAは、これからのクラウド市場に向け、今回はVMwareを買収する。

VMwareは、その名の通りVirtual Machine(仮想マシン)技術に長けたソフトウエア会社である。クラウド技術のハードウエアはデータセンターそのものだが、データセンターではひたすらコンピュータを大量に並べて巨大化し、それらをソフトウエアで仮想化する。仮想化することで、A社用、B社用のコンピュータという具合に巨大なコンピュータを多数の企業が使えるように割り振っていく。ハイパーバイザと呼ばれるソフトウエアを使って割り振る。VMwareの売りはハイブリッドクラウドやマルチクラウドに対応できるサービスを提供することだ。例えば、会社の重要な情報を、アマゾンのAWSとマイクロソフトAzureの両方で対応できるようにすることでリスクを最小にする。クラウドの最大の目的は、セキュリティがしっかりしていることだ。自社コンピュータだとサイバー攻撃に対応するには十分ではないことが多い。

Broadcomは半導体製品とソフトウエア製品を持つことで、これからの未来にどちらでも対応できるようにしておこうという作戦だ。ソフトウエアでサービスする事業と、ソフトウエアを半導体に焼き込んでハードウエアを売る事業だ。半導体はもはや産業のコメではなく、コンピュータという頭脳を組み込んだチップに変わってしまったことが、半導体とソフトウエアの両輪を持つことの重要性をBroadcomが示したと言えそうだ。


ファブ情報 / UMC

図1 UMCの持つ現在のファウンドリ生産ライン 出典:UMC


ファウンドリ大手の台湾UMCがシンガポールに新工場を建設するため、用地使用権を取得した、と5月25日の日本経済新聞が報じた。広さ11万平方メートルの工場用地をシンガポール政府機関のJTCから30年の使用権を取得した。UMCはこれまで三重県の元富士通の工場とシンガポール工場で40~130nmの300mmラインを持ち(図1)、台湾域内には14~130nmの300mmラインがあるが、14nm製品はまだ生産していない。中国にも22~40nm工場はある。シンガポールでは主力の22~28nmラインを建設する予定。最先端の車載用チップとIoTチップを狙っているようだ。

ウェーハ大手のSUMCOは、佐賀県伊万里市の既存工場の隣接地に新工場を建設する、と27日の日経産業新聞が報じた。ここには2015億円を投じ、国内の子会社にも合計272億円を投じて生産設備を増強する。さらに台湾の化学大手と合弁で新工場を設立する。その投資額は約1200億円(280億台湾元)となる。SUMCOが伊万里市にこだわるのは豊富な水だという。

先端品ではQualcommがTSMCの4nmプロセスノードで新しいアンドロイド向け半導体を開発した、と30日の日経が報じた。これは、5G向けアプリケーションプロセッサであるSnapdragon 8 Gen 1モバイルプラットフォーム(チップセット)のこと。最大10Gbpsという高速のデータレートを提供でき、やはり数GbpsのWi-Fi 6 & 6Eモデムも内蔵している。Snapdragon X65 5Gモデム-RFシステムチップと一緒に使う。ようやく本格的な5G向けモバイルプラットフォームが出始める。

(2022/05/30)

月別アーカイブ