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NTTをはじめとする通信業者が実証実験を繰り広げる新サービス展開

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NTT東日本をはじめとする通信業者が次のサービスを模索している。5Gの次の6Gはどんなサービスになるのか、「土管屋」からの脱皮を図るNTTと、5G先進国の韓国通信業者の試みを紹介する。また、電気自動車では、バッテリセルの容量を大幅にアップする新型セル「4680」に向けTeslaとパナソニックが動き出した。

通信産業では、トップに来るのがOEMに相当するNTTドコモやKDDI、ソフトバンクなどの通信業者であり、彼らに通信機器を納めるティア1の通信機器メーカーがEricssonやNokia、華為、Samsung、NEC、富士通などの通信機器メーカーであり、半導体企業はティア2に相当する。半導体チップを通信機器メーカーや携帯電話機メーカーに納めている。ところが、トップに君臨する通信業者は「いつまでも土管屋ではない」という負い目の意識を長い間持っていた。セルラーネットワークを構築し、みんなの携帯電話をつなげられるようにしてきたことが土管を敷くだけ、と自分たちを卑下してきたことには訳がある。通信業者が構築した通信ネットワークを利用して、ITサービスだけを展開するGoogleやApple、Facebook、Amazonらが大きな利益を得ていることに我慢できないのだ。

これらGAFAのことをOTT(Over the Top)と呼んでいた。トップの通信業者よりも上に位置しているからだ。少なくとも数年前まで、OTTに負けないようなサービスとして何を提供すればいいのだろうか、と長年、研究してきた。

4月4日の日経産業新聞で、「NTT東日本が通信インフラ頼み経営からの脱却を進めている」という書き出しから始まる記事では、同社がこの3年間で、ドローンの利用や園芸の実証実験を行うなどの新サービスの子会社を7社も立ち上げたことを報じた。NTTが「脱土管屋」を目指す新しい動きである。この中の一例として、NTT東日本は子会社NTTアグリテクノロジーを2019年に設立、21年度にNTT東日本が建設した農業施設「ベジアイシティ山梨中央」では、複数のセンサを数種類張り巡らせ、温度・湿度や二酸化炭素の濃度、光の具合などのデータを収集、AIでデータを分析し、レタスの育成に最適な環境を自動で制御している。施設で検証した効率的な栽培手法を、自治体や農家向けに提供する予定だという。

山梨市では、IoTセンサを使い、IoT専用の通信ネットワークであるLPWA(Low Power Wide Area)を17年に整備しており、当初はシャインマスカットのスマート農業を進め、18年には河川の水位を検出して市のウェブサイトで告知する、20年には高齢者の靴にセンサを仕掛ける福祉サービスを始めた。共通するのはリモート監視や管理でスマート化を図ろうとするものだ。

韓国の通信業者は世界に先駆けて5Gサービスを始め、契約数の約3割が契約しているものの、その高速通信を活かしたサービスを提供しきれていないという悩みがあると、4月5日の日経が報じた。消費者は5Gの魅力をさほど感じていないらしく、4Gとそれほど変わらない、という不満を漏らしているという。今のところ5Gらしいサービスはローカル5Gだという。しかし、日経の記事ではローカル5Gのインパクトに関しては深い分析を行っていない。そこで、これからの期待として、メタバースを取り上げ、「SKテレコムとKT、LGユープラスの通信大手3社はメタバース(仮想空間)や企業向けサービスに活路を見いだす」とした。ただし、メタバースの応用をK-Popのコンサートやスポーツなどを想定いるだけにとどまっている。


図1 Teslaが米国テキサス州に建設を終えた巨大なEV生産工場 出典:Tesla Motors

図1 Teslaが米国テキサス州に建設を終えた巨大なEV生産工場 出典:Tesla Motors


Teslaがこれまでの2倍の直径を持つリチウムイオン電池セルを詰め込んだバッテリパックを使う電気自動車をテキサスの新工場(図1)で生産すると4月9日の日経が伝えた。これまでは単三乾電池の大きさに近いセルを使ってバッテリパックを構築していたが、1台当たり数千本のセルを使っていた。新しいセルでは1000本前後で済むという。バッテリパックは10個程度のバッテリモジュールを接続して使っているが、1個のバッテリモジュールには数百本のセルを接続している。新しい太いセルだと、バッテリモジュールの数や冷却用の配管が減り、EVの生産コストが下がるとパナソニックは語っている。ただ、セルのバラツキや、その歩留まりなど、セルの生産性の問題はこれから解決していくことになる。

(2022/04/11)

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