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デンソーのJASMへの出資や信越化学・ADEKAの投資など、活発化する半導体

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TSMCが熊本県に建設する半導体工場の日本法人JASMにデンソーも3.5億ドルを出資することが決まった。このニュースは、すでに出資を表明しているソニーと3社が発表した。信越化学やADEKAなどの化学メーカーの半導体投資も活発で、ICパッケージ基板の味の素の事例紹介や、ムラタによるバルク弾性波フィルタの米Resonant社買収など、半導体に前向きの動きが相次いでいる。

TSMCが主要出資者となるJASM(Japan Advanced Semiconductor Manufacturing)は、2021年11月にソニーの出資を発表したのに加え、今回デンソーも10%強の出資を決めた(参考資料12)。これまでは22nmと28nmのプロセスで半導体を製造するとしてきたが、今回12/16nmのプロセスも追加する。合計の月産能力は5万5000枚となる。総投資額は86億ドルとなり、18億ドルほど追加となる。

ソニーのCMOSイメージセンサだと40nm程度で生産できるがその先として28nmの生産を見据えている。デンソーは最近自動運転やADAS(先進ドライバー支援システム)向けのAIチップなどの開発に力を入れており、さらに微細な12/16nmを望んでいる。TSMCにとっても日本のソニーとデンソーという2社の顧客がいることは心強い。JASMは1700名の雇用を計画しており、現在LinkedInで大々的に社員を募集している。経験者だけではなく新卒にも、他の電機メーカーよりも高い給料を示している。

半導体産業は活発に動いており、信越化学工業はパワー半導体のアセンブリや実装に必要なシリコーン樹脂を2025年までに800億円を投じ、生産塗力を最大2倍にすると発表した。シリコーン樹脂は、ゴムのように柔らかいためパワー半導体やLED照明ランプのアセンブリなどに使われてきた。今後EV化が進むため、熱膨張係数の違いを吸収できるシリコーン樹脂は絶縁性でありながら柔らかい材料としても有望と見る。一種のコンパウンド樹脂でもあり、熱伝導性の良い材料も添加して放熱対策としても使われている。


図1 台湾の連結子会社の台湾艾迪科精密化学股份有限公司 出典:ADEKA

図1 台湾の連結子会社の台湾艾迪科精密化学股份有限公司 出典:ADEKA


ADEKAは、台湾の台南市に先端ロジック半導体向け材料の新プラントの建設を決めた、と2月17日に発表(参考資料3)、日経も18日に報道した。台南にはTSMC の工場があり、その近くに工場を建設することには意味がある。日本のJASMは12nmまでのプロセスノードしか対応しないが、台湾では5nmや7nm以降でも対応できるからだ。投資額は25億円、延床面積は3,068平方メートル。今年8月に着工し営業運転開始は24年4月の予定。同社はこれまで韓国にも工場を持ち、DRAMキャパシタ向けの高誘電材料「アデカルセラ」シリーズを生産しているが、今回台湾に新工場を設立したのは、TSMCが得意とする5nm/7nmなど先端ロジック製造で欠かせない多層配線工程に向けるためだ。ALD(Atomic Layer Deposition)を使う配線工程用の材料だとしている。おそらくシードメタルのデポジションに使うプリカーサーであろうと想像できる。

味の素は高密度実装に使うビルドアップ基板の最大手となるメーカーであることは実装業界では有名な話だが、2月18日の日経でも報じられた。高密度ビルドアップ基板は、半導体チップをサブストレート基板に実装する場合、多層配線を形成する基板技術である。汎用のプリント配線基板はほとんど中国に移転されたが、多層配線や2.5D/3D-ICなど高度なパッケージは日本に残されてきた。特にIntelやAMDなど集積度の高いCPUやアプリケーションプロセッサでは、もはやリードフレームでは多ピン化に対応できないため、ピンピッチが十数µmという高精細なプリント基板にチップを実装している。このプリント基板が多層配線であり、ここに味の素のビルドアップ基板フィルム「ABF(味の素ビルドアップフィルム)」が使われている。ABFの出荷数量は20〜24年の年平均(CAGR)15%で成長すると見ている。

表面弾性波フィルタやコンデンサなどの電子部品最大手の村田製作所は、バルク弾性波フィルタ(BAW)を手掛けている米Resonant社を3億ドルで買収すると発表した。Resonantは、周波数のより高い5G通信向けのBAWを開発してきている。ムラタはこれまでも4%を出資しており、共同でその製品を評価してきた。XBARと呼ばれるBAWだけではなく、その特性を評価するためのシミュレーションツールWaveXも開発している。XBARは、3GHz〜6GHzの5G NR(New Radio)仕様だけではなく、28GHzと39GHzのミリ波帯でも優れたフィルタ特性を示した。その結果、5GとWi-Fiとのフィルタ性能は十分でムラタはその性能を評価したようだ。ムラタはNASDAQ市場でTOBにより株式を追加取得する。

参考資料
1. 「デンソーによる、 JASMへの少数持分出資について」、デンソー (2022/02/15)
2. "DENSO to Take Minority Stake in JASM", TSMC (2022/02/15)
3. 「台湾に先端ロジック半導体向け材料の新プラントを建設」、ADEKA (2022/02/17)

(2022/02/21)

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