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東芝が3つの独立会社に分割、23年度中の再上場を狙う

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東芝がグループ全体を3つの独立会社に分割することを11月12日に正式発表した(参考資料1)。電力系のインフラから半導体まで手を広げていた東芝が、インフラ系とデバイス系、キオクシアの3社に分割する。半導体不足は、半導体を使ってシステムを組む企業に多大な影響を与えており、台湾のIT企業19社は10月にはついに1年前より売上額が減少した。

東芝 代表執行役社長CEOの綱川智氏 写真は2017年に筆者撮影

図 東芝 代表執行役社長CEOの綱川智氏 写真は2017年に筆者撮影


東芝3分割に関する情報は11月9日の日本経済新聞に掲載されたが、同日東芝は「複数報道機関より、当社が事業ごとに3社に分割し、それぞれが上場する方針との報道がなされましたが、当社から発表したものではありません」とニュースリリース(参考資料2)を流した。そのわずか3日後の12日には東芝から3社の独立会社とする方針が正式に発表された。このニュースは13日の日経にも正式に掲載された。

それによると、インフラサービス部門は、エネルギーシステムソリューションとインフラシステムソリューション、ビルソリューション、デジタルソリューション、電池事業をまとめ、デバイス部門は現在のデバイス&ストレージ事業にまとめる。そして東芝のブランドは残す可能性があり、キオクシアホールディングスと、POS端末の店舗システムやオフィス機器の東芝テックを東芝とする。

東芝は、株主価値向上を目指し3つの独立会社にするとしている。東芝はこれらの分割について、取締役会傘下の戦略委員会(構成員は独立社外取締役)で検討し、取締役会で承認された。戦略委員会は株主と潜在パートナーと協議したとしている。

東芝は、キオクシアと東芝テックの株式を保有するが、今回のスピンオフ時にはキオクシアの株式については実務上可能な限り現金化し、手取り純額についてはスピンオフの円滑な遂行を妨げない範囲で全額株主還元に充当するという。NANDフラッシュメモリのような大量生産製品を扱うには膨大な投資が必要になるが、そのことについては何も触れていない。株主還元を重視した施策のように映る。

この中で半導体に大きく関係するデバイスCo.(Company)は、デバイスとストレージソリューション事業すなわちHDD事業、半導体製造装置事業(ニューフレアテクノロジー)を統括する。ニューフレアは東芝機械からスピンオフして誕生し、2020年に東芝デバイス&ストレージ社の子会社となった。デバイスCo.は、2021年度には売上額8700億円を見込んでおり、半導体デバイスとしてはパワー半導体、光半導体、アナログICを含む。システムLSIはすでに解体されている。

3社のスピンオフによって、いずれも未公開会社となり上場企業ではなくなる。2023年度下期までにそれぞれが上場を終えることを目標としている。この再上場によって、キャピタルゲインを期待し、資金調達を狙う。分割と再上場はほぼ同時期に行われるようだ。

半導体不足は依然として続いている。ここまで供給不足が足りなくなったのは、明らかに需要が拡大しているからだ。従来の需要の見込に合わせて生産供給している半導体メーカーはどこも稼働率が100%に近い状況が1年近くも続いている。半導体を製造するための装置も半導体メーカーからの要求を満たせていないようだ。

11月9日の日刊工業新聞によると、アドバンテストとSCREEN、ディスコの3社合計の7〜9月期における受注残は、前年同期比2.8倍の5478億円に上る。前期比でも32.3%増だから、ますます不足になっていることを物語っている。アドバンテストの同期の受注額は7月時点での予想よりもほぼ2倍の2038億円と増加している。

半導体の出荷先がシステムメーカーではなくEMS(電子機器の製造請負メーカー)に行くケースが増えている。EMSの多い台湾では半導体不足により製品が作れなくなり、10月における主要19社の売上額は前年同月比0.4%減の1兆3195億台湾元(約5兆4000億円)となったと12日の日経が報じた。特に世界最大手の鴻海精密工業は同10.1%の減収だった。iPhone生産の3割を担うペガトロンも減収だった。半導体メーカーのTSMCだけは同12.8%増だったが、iPhone向けチップの生産数量を満たしていないという。

参考資料
1. 「東芝、株主価値向上を目指し3つの独立会社に戦略的再編へ」、東芝ニュースリリース (2021/11/12)
2. 「一部報道について」、東芝ニュースリリース (2021/11/09)

(2021/11/15)

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