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中国、フランス、AIチップ/AI技術のスタートアップに力点

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中国におけるAIチップのスタートアップが続出、フランスもAIチップを加速する。昨今の半導体不足はDRAMにも及ぶ。DRAMは今後、CPUやAIチップともセットで使われる。Samsungの簡単な売り上げと営業利益だけが発表され、6月30日のMicronの発表と併せ、再びDRAMはカルテル的な様相を見せ始めた。

人間の頭脳をモデルにしてIntelは1971年マイクロプロセッサとメモリを発明した。マイクロプロセッサが論理や分析を担う「左脳」だとすると、パターン認識や感情的な動作を担う「右脳」に相当するのがAIである。両方なしではマシンは人間の頭脳には追い付けない。マイクロプロセッサはコンピュータ用からそれをさまざまな電子機器まで展開する組み込みプロセッサへと進化が続いている。AIチップは今のところカスタム的な製品しかないが、汎用マイクロプロセッサのような汎用AIチップは今後出てくる可能性は高い。AIではすでに汎用AI(AGI:Artificial General Intelligence)と呼ばれる分野の開発が進んでいるからだ。

7月9日の日本経済新聞は、上海で世界AI大会が開催され、中国の半導体企業はAIを支える半導体の開発を加速する姿勢を示した、と報じた。中国はAIや量子コンピュータ関係での特許が多いものの、半導体は中国の弱点であることを理解しているため、半導体チップの発展を急いでいる。中でもAIチップの開発は急で、日経は「AIチップを手掛けるCambriconの陳天石・最高経営責任者(CEO)は8日、回路線幅が7nmの先端技術を採用した『自動運転技術向けの半導体の開発を始めた』と明らかにした」と報じた。Cambriconは中国科学院傘下のスタートアップで2020年に設立したばかり。自動車分野に本格進出することで商機を拡大すると報じられている。加えて、Horizon Robotics社が自動運転や運転手の監視などに使う車載向けAIチップを公開したと日経は報じた。車載向け半導体の自給率はわずか5%未満だとしている。

フランスもAIをはじめとするテクノロジースタートアップを後押しし始めている。6月中旬パリで開かれたスタートアップのイベント「VIVAテクノロジー」でマクロン大統領が会場を訪れ「2030年までに、欧州で企業価値1000億ユーロ(約13兆円)以上の企業を10社作る」と宣言した、と9日の日経は伝えた。国外からの投資を呼び込む狙いがあるという。フランスでは、ユニコーン(企業価値10億ドル以上の未上場企業)が15社しかいないとして、ドイツの17社、英国の29社よりも大きく遅れており、マクロン大統領就任以来スタートアップの育成に力を入れている。米国(370社)、中国(150社)に比べて特に大きく遅れていることに危機感を募らせている。

長期的にはAIチップはDRAM市場を活性化し、DRAMも大きく成長を遂げるが、短期的には半導体チップの供給不足の問題から、DRAMが大きく値上がり始めDRAMメーカーは2017年〜18年のメモリバブルの様相が出始めている。Micronが6月30日に2021年3〜5月期の決算発表によると、会社全体の売上額は前年同期比(Y/Y)36%増、前四半期比(Q/Q)19%増の74億ドルに達した。DRAMが売上額全体の73%を占め、DRAM売上額はY/Yで52%増、Q/Qでも23%増と驚異的な増え方だ。しかもビット出荷成長率はQ/Qで1桁%の低い方(1〜4%)にもかかわらず、平均単価がQ/Qで20%増えた。つまり、生産を増やさずに単価の値上がりを待って「濡れ手に粟」状態になりつつある。DRAMはSamsung、SK Hynixと共にわずか3社で95%のシェアを占める寡占ビジネスで、カルテル的なリスクが出ている。

ただし、NANDフラッシュは全体売上額の24%に当たる18億ドルにとどまり、Q/Qで10%増だが、Y/Yで9%しか伸びない。ビット出荷成長率は1桁%の低い方だとしているが、平均単価は一桁%の高い方(6〜9%)だという。つまりNANDフラッシュの成長はそれほど多く期待できない。

Samsungの2020年4〜6月期の決算発表は7月29日だが、その見通し(ガイダンス)に関して、7月7日に発表している。連結売上額は約63兆ウォン(約6.1兆円)、連結営業利益は約12.5兆ウォン(約1.2兆円)になりそうだとしている。営業利益にはディスプレイ事業での一時的な利益も含んでいるという。この時点ではメモリや半導体、スマートフォンなどの事業別数字は発表していない。

(2021/07/12)

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