セミコンポータル
半導体・FPD・液晶・製造装置・材料・設計のポータルサイト

車載半導体が不足している背景は何か

|

車載向け半導体の品不足が伝えられている。ホンダ、日産、トヨタ自動車だけではない。米国や欧州でも車載向け半導体が不足しているようだ。日本経済新聞はこのところ、車載半導体の供給不足を連日報道している。一方で、Appleが自動車産業に参入しそうだという記事もあり、車載半導体が注目されている。

1月8日の日経は、ホンダが半導体の供給不足を受けて自動車の生産調整に踏み切る、と報じた。小型車「フィット」を中心に1月に4000台程度に減産するという。ただし、1 月の生産調整については工場の稼働を止めず、1日あたりの生産台数を絞って対応する見通しのようだ。

翌9日には、「日産自動車が半導体の不足を受け、車の減産に乗り出すことが8日、分かった。1月からまず主力小型車「ノート」の生産を5000台規模で減らすもよう」と伝えた。トヨタ自動車も「半導体の調達不足に伴い、米国で生産するピックアップトラック1車種の生産を減らす方針を明らかにした」と日経が報じた。

10日の日経は、ホンダがさらに「1月に中国だけで3万台以上の減産に入る方針を一部の取引先に伝えた」と報じている。加えて、米国のFord MotorsやFiat Chrysler Automobiles、ドイツのVolkswagenも生産調整していると伝えられている。世界的に自動車向け半導体が不足しているということだ。

自動車産業は、昨年春に新型コロナウィルスの影響を受け、工場停止や休業を余儀なくされ、自動車の売り上げは大きく落ち込んでいた。しかし夏以降の回復により、自動車産業は急速に回復に向かってきた。8日の日経が報じたように、「20年11月の世界生産は前年同月比11.4%増の45万7671台、国内生産は22.5%増の6万4843台と余剰生産能力を減らし新型コロナからの市況回復の恩恵を受けつつあった」。ところが、12月に入り、車載半導体不足が伝えられ始めた。

半導体メーカー側は、20年春に自動車生産停滞の動きから車載向け半導体を減産せざるを得ず、車載市場は大きく落ち込んだ。しかし、夏以降は回復基調にあり、販売は上向いていた。それでも供給が不足しているということは、どういうことだろうか。

実際、2020年全体の車載ICの販売は前年比6.4%減だったが、第2四半期(4~6月)は同26%減と大きく落ちていた。この分を持ち上げて6.4%減にとどめるためには、それ以降のIC販売額を前年並みに増やさなければつじつまが合わない。12月のIC販売額の報告はまだ出ていないが、クルマの販売台数は上がっており、General Motorsは前年比4.8%増、米国のトヨタやFCAも前年よりも増えているとしている(参考資料1)。

そもそも、車載向け半導体はASIL(自動車安全水準)で規定されているように、使用温度範囲が広く、低温から高温まで使えるようになっている。スマートフォンやパソコン向け半導体とは全く違う。このため、信頼性試験なども異なっているため、スマホ用半導体を車載向けにそう簡単に向けることはできない。しかも、半導体は通常、ウェーハを投入してから製品ができあがるまでに3カ月以上かかる。このため不足が叫ばれても解消するまでにその程度の時間はかかる。

米国メディアのFierce Electronicsよると、半導体でもディスプレイとトランスミッション系の半導体が供給不足だという。ディスプレイを動かすためには単なるドライバだけではない。高速シリアルインターフェイスに準じた画像送信用のICや、ディスプレイ上で画像を加工するためのグラフィックスチップ、それらに向けたパワーマネジメントICなども欠かせない。また機械のトランスミッションでは回転運動をサポートするためのマイコンやパワー半導体、そのためのドライバICなどのアナログICも必要だ。全てASIL規格を満たさなければならない。

また同メディアはVLSI Research社代表のDan Hutcheson氏のコメントを引用し、新型コロナで郊外に家を買った人たちが増えており、郊外ではクルマは必需品となるため、クルマの需要が増えているとする。しかも彼らは新車を買えるほどの富裕層だと見ている。加えて、電気自動車やADAS(先進ドライバ支援システム)への急速な加速も車載半導体の需要増加の要因だと見ている。例えば、Tesla Motorsは2020年の新車販売台数は前年比36%増の49万9000台と見積もっており、第2四半期は8万2000台まで落ちたものの、第4四半期には14万5000台まで回復したとしている。電動化は基本的に半導体の搭載数がガソリン車の2倍になると言われている。

さらに今後はAppleや百度などインターネット企業までも参入するとなると、車載向け半導体の市場はますます増えることになる。こういった見方が正しければ、2月だけではなく長期的に供給不足になる可能性が高い。

参考資料
1. Chip shortages hit even as auto chip sales climb (2021/01/10)

(2021/01/12)

月別アーカイブ

セミコンポータルはこんなサービスを提供します