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経産省、脱炭素を再強化、パワー半導体への投資が活発に

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脱炭素社会への取り組みが日本でも再び強まり始めた。経済産業省はパワー半導体の消費電力を2030年に向け半減する目標を掲げ、東芝は風力発電事業への参入などM&Aにも投資する。パワー半導体に東芝や富士電機が2000億円超投資する。ルネサスはEV向けECU開発で中国に研究所を設立、村田製作所は2050年までに全事業の電力を再生可能エネルギーで賄う。セミコンジャパンが開幕、半導体製造装置の新製品が続出している。

12月21日の日本経済新聞によると、経産省はGaNなどの新材料を使う研究開発に補助金を出すとして、20年度第3次補正予算で創設された脱炭素技術の研究開発を支援する2兆円の基金や税制優遇も使い設備投資を促す。データセンターでの消費電力を現在よりも3割減らす目標も掲げる。このニュースは19日の朝日新聞でも取り上げられ、作成された工程表案は21日の有識者会議での議論を経て、年内にも正式決定されるとしている。

東芝はこれまでリストラを主体に進めてきたが、ここにきて攻めに転じる。5年で1兆円を投資すると17日の日経が報じた。ただし、東芝は1兆円の具体的な投資内容を決定している訳ではありません、というプレスリリースを当日発表している。このような類のプレスリリースは、火のない所に煙は立たぬ、ということわざ通り、事実であることが多い。ただ、公式発表はしていない、ということであろう。

電気自動車(EV)もCO2削減には大きく貢献する。電気自動車を製造するために使う工場エネルギーや充電するための電源ラインにつながる発電所ではCO2を排出するため、EVから出すCO2はゼロではないという議論はあるが、EVによるCO2削減の効果は大きい。15日の日経によると、EV需要を見越して東芝は2023年度までに800億円を投じ、石川県の工場などで生産能力を3割増やす。ウェーハ処理能力を月産15万枚から20万枚に増やす。富士電機も23年度までに国内外で1200億円を投資するという。山梨県のウェーハ処理工場に加え、マレーシアのアセンブリ工場の生産能力の増強も検討するとしている。

すでにパワー半導体トップのInfineonはEV需要を見据えて300mm工場をドイツのドレスデンだけではなく、オーストリアのフィラハにも工場を建設中で21年には稼働させる予定であり、パワー半導体で大きく差を広げる構えだ。EVでは充電するためのオンボードチャージャー回路基板やモータを駆動するためのインバータ回路モジュール、さらに通常300〜350Vまで昇圧するバッテリ電圧から降圧する各種のDC-DCコンバータなどにEVならではのパワー半導体が使われる。もちろんガソリン車にも搭載されているエアコンや窓の開閉、ワイパーなどさまざまな小型モータを動かすためのパワー半導体需要も変わらない。

ルネサスエレクトロニクスは、中国の国有企業、中国第一汽車集団と吉林省長春市に共同研究所を設立した。EVや自動運転などACES(Autonomy, Connectivity, Electricity, Sharing)技術で協業する。ルネサスのマイコンやSoCを用いたECUを開発する。

村田製作所(ムラタ)は2050年までに全事業所の全ての電力を再生可能エネルギーで賄うと、17日の日経が伝えている。事業所での太陽光パネルの設置だけではなく、再生可能エネルギーによる電力を優先購入する。ムラタの2019年度の年間CO2排出量147万トンの内8割の116万トンが電力で、この分を全て再生可能エネルギーに替える。積層セラミックコンデンサの焼結などに電力需要量が多いとしている。

セミコンジャパンが14日に開幕し、完全なオンラインで開催する。このため地方や海外からも参加しやすい。セミナーの多くはリアルタイムでのセミナーに加え、後でもオンデマンドでビデオを見ることができる。ただし、出展企業・団体数は172に留まり前年の1/4に減少した。その中でもやはり東京エレクトロンやSCREEN、アルバック、国際電気、アドバンテストなどは次世代向けの新製品を出品している。

(2020/12/21)

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