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テレワーク需要の決算結果が顕著に、激しく変わる半導体市場

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テレワーク需要や、スーパーコンピュータのダウンサイジング化をはじめとする新しい半導体需要、米中貿易戦争を巡る新しいビジネス展開など半導体市場は目まぐるしく変わっている。そのような中、東芝が子会社ジャパンセミコンダクターの売却のニュースも流れた。

米ファブレス半導体のNvidia社の第3四半期(8〜10月期)の決算が報告され、売上額が前年同期比57%増の47.3億ドル、営業利益が同51%増の14億ドルと、営業利益率は30%になった。売り上げをけん引したのはゲーム部門で同37%増の22.7億ドル、AI関係のデータセンター部門は同162%増の19億ドルとなった。これまで、圧倒的にゲーム会社という様相だったがAI会社に代わりつつある。共にテレワークなどの在宅需要によるもの。ゲームは、光のあらゆる場所での反射を計算するRay Tracing技術を取り入れたゲーム用GPUカードGeForce RTXシリーズの売れ行きがすさまじい。Ray Tracing技術は写真かグラフィックスが区別がつかないほどリアルな絵を描く技術で、計算量が大きすぎてこれまではリアルタイムでの描画ができなかった。このため映画や特殊撮影の場面でのみ、長い時間をかけて計算し描画していた。今回のRTXシリーズはリアルタイムで描画できるようになり、動画が可能になった。Nvidiaの決算をレポートした11月20日の日本経済新聞によると、現在品薄状態が続いており、米国のゲームファンは順番待ちしているという。

テレワークや巣ごもりで、国内の家電も活況を呈している。24日の日経産業新聞は、空気清浄機や冷蔵庫、ルームエアコン需要などが大幅に増えていることを伝えている。日本電機工業会(JEMA)が発表した10月の白物家電の国内出荷額は前年同月比22.7%増の1797億円だった。また、電子情報技術産業協会(JEITA)によれば10月のテレビの国内出荷台数は前年同月比28.1%増の42万5000台だった。

ルネサスエレクトロニクスは、省電力通信用半導体を腕時計に搭載、腕時計同士が近づくと振動しLEDが点灯するという半導体製品を開発する。10cm以下の精度で位置を測定できるとしている。ルネサスは米Altranと協業し、腕時計を試作、21年後半に距離測定用の半導体製品をサンプル出荷する計画だ。

スーパーコンピュータの技術を活用し市場を広げていく試みが相次いでいる。富岳向けのSoCを開発した富士通は、米Sandia国立研究所やドイツのRegensburg大学にSoCを出荷すると共に、廉価版のミニスーパーコンピュータにも力を入れる、と18日の日経が報じた。Hewlett-Packard Enterpriseとも協業し、富岳のSoCを搭載するミニスパコンを販売する。富岳のような巨大なスパコンは1000億円を超す価格であるが、利用者は申請してもすぐに使えるわけではなく、数日待たされる。このため性能を少し落としても安価ですぐに使えるミニスパコン市場は大きい。NECは汎用品を集めて、100万円程度の低価格スパコン事業に乗り出す、と19日の日経が報じた。

米中貿易問題では、TSMCが進出するアリゾナ州フェニックスの市議会で同社の進出計画を全会一致で承認したと20日の日経が伝えた。10日にTSMCが米国新会社の資本金を35億ドルにすることを決め、同市議会は周辺道路整備などに2億ドルを支出する案も可決した。ただし、税制優遇などのインセンティブを米国政府はまだ決定していないという。

一方、窮地に立たされた中国の華為科技は、低価格スマートフォンの事業を手放すため、深セン市政府傘下の投資会社を中心に販売会社など30社からなる新会社を設立した。資本金1億元の内の98.6%を投資会社が持つ。華為の低価格スマホは同社の3割程度に当たる7000万台で、「オナー」というブランドでスマホを出荷する。当分投資会社が維持し続け、米国政府が低価格品向けの半導体製品を解禁する日を待つ構えだろう。部品調達や製品販売の事業を維持する狙いがありそうだと日経は分析する。

米国Qualcommは華為に対して4G向けのチップなら供給してもよいという許可を取得した、と18日の日経が伝えた。日経によるとソニーもイメージセンサで承認を得た模様だと報じた。イメージセンサは高度化が進んでいるものの、4Gや5Gとは直接関係がないためだが、メモリだと単純に容量を増やせば高度化に対応できるため、許可に時間がかかっている。

19日の日刊工業新聞は、東芝の連結子会社であるジャパンセミコンダクターを台湾のUMCに売却する方向で交渉していることがわかった、と報じた。東芝D&S社の子会社としてジャパンセミコンは6インチの大分工場と8インチの岩手工場を持っており、ファウンドリと位置付けている。しかし実態は、東芝の製品を流しているだけであり、唯一、ある他社の製品を生産しているが、ラインが余っているからであり、ファウンドリのビジネスを積極的に行っている訳ではない。このニュースに関して東芝は、「11月19日付の日刊工業新聞にて、当社が株式会社ジャパンセミコンダクターの岩手事業所と大分事業所を聯華電子に売却する旨の報道がなされましたが、売却を決定した事実はありません」と同日のプレスリリースで述べている。

(2020/11/24)

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