キオクシアの工場拡張はじめ、回復基調が鮮明になってきた半導体産業
キオクシアは、NANDフラッシュの生産を増強するため、四日市工場を拡充すると発表した。Samsungやルネサス、ソニー、東京エレクトロン、アドバンテストなど半導体・製造装置メーカーの決算発表があり、回復基調が鮮明になってきた。将来向けの分野としてローカル5Gの実証実験が相次いで準備されようとしている。
図1 キオクシアの四日市工場 右上の敷地にY7棟を建設する
キオクシアは、四日市工場をさらに拡張し、新たに第7製造棟(Y7棟)を2021年春から建設すると発表した(図1)。同社によると、市場動向を見極めながら最先端フラッシュメモリ製品を生産する最適なスペースを確保するという観点から2期に分けて建設すると述べている。今回は第1期分の建設で、竣工は22年春の予定。Y7棟は、地震の揺れを吸収する免震構造を採用すると共に、最新の省エネ製造設備を導入する計画だとしている。Y7棟の設備投資は1兆円規模になる見通しだと、10月30日の日本経済新聞は伝えている。今回もWestern Digitalとの折半投資になる。
中国華為科技やSMICへのICチップや半導体製造装置の供給が管理・制限される中で、華為は9月15日までの間に大量にICチップの買い付けを行った。その華為特需が終わり、これからの半導体需要が心配されていたが、スマートフォンとクルマの需要が回復しており、スマホのSamsungやソニー、ルネサスなどが回復してきたことが第2四半期(7~10月期)決算から判明した。
Samsungはスマホ事業そのものでトップに返り咲いた。華為がスマホや基地局用の部品を手当たり次第に買い付けていたが、華為に代わりSamsungがスマホと基地局の需要増で史上最高の売上額となる66億9600億ウォン(6兆1600億円)を達成した。半導体はデータセンター向けが伸び悩んだものの、スマホ向けが伸びて半導体部門としての営業利益は前年同期比82%増の5兆5400億ウォンとなった。10月30日の日経によると、華為向けの半導体出荷について米商務省の許可待ちだとしている。
ソニーも第2四半期(2Q)は回復基調に向かっている。ソニーのCMOSイメージセンサを製造・販売しているイメージング&センシング・ソリューション部門の2Qでの売り上げは1年前のほぼ横ばい(1%減)の3071億円となり回復に向かっている。1Qでの売り上げは同11%減の2062億円にとどまっていた。27日の日刊工業新聞によると、ソニーは拡張中の長崎工場でのCMOSイメージセンサの稼働を2021年秋に始める。華為に代わりAppleなどからの受注増が増えるメドが立ったためだとしている。21年4月から、新棟への製造装置の搬入を始める予定だという。
半導体装置メーカー国内トップの東京エレクトロンが発表した2020年7~9月期の連結決算では、売上額が前年同期比21%増の3533億円となった。メモリ向けのエッチング装置やロジックファウンドリ向けの製品が好調だった。
テスターのアドバンテストも第2四半期の売上額は前年同期比8.1%増の774億円となった。営業利益も第1四半期は同11%減の135億円だったが、2Qでは同1.3%減の174億円にとどまり回復基調に入っている。
製造業がコアコンピタンスの日本では、ローカル5Gはデジタルトランスフォーメーションで有力なテクノロジの一つとなる。工場や大規模施設で利用して生産効率を上げるローカル5Gの実証実験を日立製作所も始め、オリックスも参入した。日立の中央研究所内の研究施設「協創の森」に実証実験環境を2ヵ所用意した。日立が商用のローカル5Gの免許を取得し、4Gのネットワークと組み合わせた構成を採用、10月に本格運用を始めた。映像の送信に5G、制御信号などに4Gを使う構成だが、多品種少量生産ラインを再現し映像配信の遅延を50ms以内に抑えることができたとしている。2カ所の実験環境を利用して、別の現場の状況を把握しながら支援するという実験を進めるという。オリックスは、ローカル5Gのシステムを開発し、幅広い顧客に提案する。そのために光ファイバによるEthernetスイッチ機器を製造するアプリシアシステムズ(旧日立電線のネットワーク部門を買収した日立金属)を300億円で買収した。