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ニューノーマルへの対応の早い台湾は20年プラス成長を予想

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新型コロナウイルスという敵に注意を払いながら経済を回していく「新常態(ニューノーマル)」への対応が現れてきた。コロナの中で半導体産業は比較的恵まれている。感染抑制技術や在宅特需があるからだ。ITと半導体が強い台湾の2020年の実質経済成長率は1.6%のプラス成長になりそうだ、と台湾行政院が発表した。米中貿易戦争の標的とされる華為の動きも活発だ。

5月29日の日本経済新聞によると、台湾は今年2月の時点での成長率より0.7ポイント下方修正した。2%を下回る台湾の成長率は5年ぶりだというが、他の地域や国はマイナス成長を見込んでいるため、決して悪くない。特に半導体は好調で、テレワークなどで世界的に通信量が増大しており、基地局やサーバー向け半導体の特需が発生しているという。企業の民間投資も2.31%増とプラス成長を維持しているが、これは米中貿易戦争によって中国から台湾へシフトしたことによる。

26日の日経は、台湾内での投資申請が2019年1月からの累計でハイテクを中心に7600億台湾元(約2兆7000億円)に達した、と伝えた。EMS(電子機器の製造請負サービス)業界世界3位の広達電脳は、台湾北部の桃園市に150億台湾元を投じて新工場を建設中。鴻海精密工業傘下の液晶パネル大手、群創光電は計701億台湾元を投資、台南の新工場を完全無人化する。プリント基板大手の欣興電子は265億台湾元を投じて工場を増設する。こういった台湾回帰を促進するため、当局は、工場用地の紹介や外国人労働者の雇用規制の緩和、民間融資の金利一部肩代わりなど新たな優遇策を講じている。トランプ政権が中国製サーバーや通信機器製品の関税を25%引き上げたことも大きい。台湾製なら関税はゼロだからだ。

日本国内では、経済活動再開を機に日本株が上昇している、と27日の日経が報じた。26日の日経平均株価は前日比529円(2.6%)高の2万1271円17銭で引けたという。特に、デジタル化や5G、医療・健康、巣ごもり消費に関連する企業の株価が上昇した。レーザー顕微鏡や半導体ウェーハの外観検査装置などのレーザーテックの株価が、コロナショックによる株安の3月19日と比べ2倍以上になったという。また、イメージング技術や工場向けの各種センサが得意なキーエンスは、26日にこれまでの最高値を付け、時価総額が10兆円を超えたとしている。

新型コロナによって働き方の価値観が変わり、デジタル化が加速するという見方が広がっている。巣ごもり消費関連では宅配のヤマトホールディングスや、オンライン決済のGMOペイメントゲートウェイなどが3月19日に比べて5〜7割株価が上昇した。医療機関向け情報提供サービスのエムスリーも5割近く上昇したとしている。

27日の日刊工業新聞は、キオクシアが四日市工場の新棟建設を始めると報じた。この「第7製造棟」は、2022年夏の完成を目指し、総投資額は最大3000億円規模を見込むという。

米中問題の標的とされた華為科技は米国製半導体製品の先端品の確保を急いでいる、と29日の日経が報じた。XilinxのFPGAやIntelのCPU製品などを2年分確保したという。XilinxのFPGAを中国が作るのは、そう簡単ではない。プログラムするためのツールもチップとセットで用意しなければならず、その使い勝手がFPGA半導体製品を左右するからだ。ただ、FPGAがあれば、自分の好きなハードウエア回路を自由に設計できるため、ユーザーは早めに手当てしておきたい。しかも、ソフトウエアベースのCPUよりも高速のシステムができるというメリットもある。

さらに華為は、子会社のHiSiliconが7nmチップを設計しても製造してくれる工場がTSMCしかいないため、代替品を探している。台湾のMediaTekのアプリケーションプロセッサやモデムチップを検討している、と28日の日経が報じた。華為は中国の紫光集団系の紫光展鋭にも半導体チップの協業を進めていると、日経は報じたが、この会社もファブレス半導体であり、HiSIliconと同様、TSMCなしでは製造できない。TSMC以外だとSamsungという手もありうるが、ここに対しても米国政府が乗り出してくることは間違いない。華為は徐々に追い込まれている。

(2020/06/01)

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