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TSMC絶好調、前年同期比44%増の第1四半期業績

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新型コロナウイルスの蔓延拡大が止まらない中、絶好調のTSMCの業績が注目された。コロナの先を見据えた技術開発も進んでいるが、短期的に見えている市場はやはり5Gである。やはり半導体は今後も続く成長産業である、との再認識も見られている。5G向けの半導体需要に備える材料開発も進んでいる。

TSMCの2020年第1四半期(1〜3月期)の連結売上額は前年同期の42%増になる3105億台湾元(1兆1100億円)と大きく伸び、純利益も同90%増の1169億台湾元、純利益率37.6%という絶好調を示した。例年は、クリスマス需要が高まった前四半期比と比べ、翌年の第1四半期は10%程度落ちるはずなのだが、前四半期と比べても売上額はわずか2.1%減、純利益も0.8%減にとどまった。特に、前四半期比ではスマホと自動車がマイナスだが、データセンターなどのHPC(High Performance Computing)やIoTはプラスで推移している。

今回の好調さは、「Appleが15日に発表した新型の廉価版iPhone SEに使われたアプリケーションプロセッサ(APU)需要などが寄与した」と4月17日の日本経済新聞は報じているが、TSMCのプレスリリース(参考資料1)では、HPC需要が増加し、5G向けのスマートフォン需要が立ち上がったことが大きいと述べられている。

プロセス別では、7nmプロセスが売上額の35%、16nmが同19%を占めており、微細化を進めることで、売上額を増やしているTSMCの戦略がよく見える。TSMCは次の第2四半期についてはほぼフラットな売上額になるだろうと見ており、その理由は、「スマートフォンの需要は弱まるが、その分HPCと5G需要によって相殺されるため」、と述べている。

TSMCは米国での半導体工場の建設も検討しており、米政府の要請に応じる態度を見せている。17日の日経によると、空軍用の半導体チップも台湾で製造し米国へ送っているが、米政府はこれらを米国で製造するように求めている。ただし、製造装置や材料などのサプライチェーンを台湾並みに揃える必要があることを訴求している。

一方、中国市場で苦戦しているQualcommは中国のディスプレイメーカーBOEと提携、Qualcommの超音波指紋センサをBOEの有機ELパネルに組み込む。QualcommのAPUは台湾MediaTekに市場を奪われ、中国内ではそのMediaTekも華為科技の子会社であるHiSiliconにも取られ、Qualcommは中国市場で苦戦している。ディスプレイパネルは半導体と違って機密要素が少ないため、米国政府も容認したものだと見られる。

5G時代を見越して、5G通信に使う材料として、誘電率の低いフッ素樹脂材料の「ポリテトラフルオロエチレン」に銅配線を形成できる技術を芝浦工業大学が開発した、と20日の日経産業新聞が報じた。水をはじく構造の表面に凹凸を設けることで、めっき処理しても同金属がはがれない。実験では100µm幅の銅配線を形成できた。

富士通研究所はカーボンナノチューブ(CNT)で従来のIn(インジウム)の3倍という高い熱伝導率100W/mKのシートを開発した、と20日の日刊工業新聞が報じた。電気自動車や5G基地局のパワー半導体を冷却するのに使える。

5G時代はIoTが本格的に使えるようになるが、ルネサスエレクトロニクスは、IoTデータをクラウドで扱えるようにするため、IoT機器の頭脳となる制御用マイコンをMicrosoftのクラウド向けソフトウエアプラットフォームであるMS Azureにつなげられるような開発キットを提供する。ルネサスのマイコンR65Nでは「R65N Cloud Kit」に年内に対応させる。その前に、6月までにArmのマイコン向けCPUコアを使った開発キット「AE-CLOUD2」でAzureのソフトウエアを使えるようにするとしている。

5G通信ネットワークを提供する通信業者のKDDIは、単なる「ドカン屋」の枠を出て、5Gサービス事業を支援するプログラム「5G for Startups」を立ち上げた。5Gを使った運用サービスを支援する。またIoTの開発拠点である「KDDIデジタルゲート」などのスペースも提供する。参画したいスタートアップを募り、サービス事業に食い込みたい思いが他の通信業者と同様、KDDIにはある。

参考資料
1. TSMC Reports First Quarter (2020/04/16)

(2020/04/20)

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