緊急事態宣言発令後のコロナ感染を防ぐハイテクニュース相次ぐ
4月7日の新型コロナウイルスに対する緊急事態宣言発令後、外出自粛が進み、政界・産業界では経済のシュリンクを心配する声が強い。しかし、それを乗り越えるためのビジネスが続出している。テレワークにより成長が見込める産業や、感染を食い止めるためのテクノロジーなどのニュースも出ている。
米Johns Hopkins大学が常時更新している世界の新型コロナウイルス感染者数、死者数、回復者数は4月13日11時現在、それぞれ184万6000人、11万4000人、280万5000人となっている(参考資料1)。今日の特徴は、日本の感染者数の世界順位がどんどん上がっていることだ。4月1日は世界で34位、4月7日は30位、そして13日は26位の6748名となっている。感染者数は日本で発表される数字よりもやや少ないものの、世界の国々と比べると相対的に増えていることを示している。つまり増加のスピードが他国よりも進んでいるのだ。
テレワークは企業や団体で進んでおり、筆者の周りの半導体企業の多くでは自宅から広報資料を送っていただきウェブ会議を開催していただいている。かつてない規模のテレワークが日本でやっと始まったといえそうだ。テレワークのためにパソコンの需要が高まっている一方、プリント回路基板やアルミ電解コンデンサなどの受動部品などは中国で生産しているものが多いため、サプライチェーンが滞っていることを4月11日の日本経済新聞が報じた。関西の大手企業は2月にノートPCをメーカーに1000台発注しても納期が5月で、台数も200〜300台が精いっぱいと言われたという。新型コロナが来る前の2019年には国内のパソコン出荷台数は前年比41%増の1570万台と久々に大きく増えたとMM総研が述べている。Windows7のサポート終了と買い替え需要とみているが、メモリ価格の低下の影響も大きいだろう。
パソコン需要が増えれば当然メモリ需要も増えるため、DRAMやNANDフラッシュの需要が見込める。8日には中国武漢市の封鎖措置が2か月半ぶりに解除されたため、パソコン用部品の品薄は解除される方向ではある。しかしサプライチェーンは政治的に利用される可能性が残っており、パソコン需要が100%満たされるわけではなさそうだ。武漢市にある中国のNANDフラッシュメーカーYMTCは、封鎖中も例外的にNANDフラッシュを限定ながら生産を続けていた。今回の封鎖解除で限定生産からフル生産に入った。モータやインバータ、ロボットなどを生産する安川電機の中国工場も3月後半からフル生産に入った、と13日の日経地方版は伝えている。
新型コロナウイルスの診断にはウイルス数を数える必要がある。オリンパスは細胞観察用の顕微鏡にAIを搭載、細胞核やたんぱく質の数を自動的に数えられるようにした。9日の日経産業新聞が報じた。画像解析ソフトウエアに搭載されたAIは、ユーザーが作成した教師データと観測画像を比較し、たんぱく質や細胞核を認識する。
かねてから鴻海精密は米国に製造拠点を作るという構想を持っており、ウィスコンシン州に液晶工場を建設しているが、この工場で人工呼吸器を生産すると発表した。大手のアイルランドMedtronics社と協力し、人工呼吸器を5月に量産し始め、6月までに1週間で1000台以上生産できるようにする。
AppleとGoogleが協力して、新型コロナの濃厚接触の可能性を、スマートフォンを使って検出・通知するサービスを始めると発表した。AppleとGoogleは実は犬猿の仲ではなく、いつか一緒に何かやりたいと思っていた相思相愛の仲であるため、今回のような協力は互いに望むところだった。Appleはアンドロイドフォンメーカーを訴追したことはあってもGoogleとは決して「けんか」してこなかった。今回、スマホに搭載されているBluetooth機能を使い、近くにいる人のスマホを検出し、その識別情報を保存する。新型コロナの感染が見つかった場合、本人の同意を得て、過去2週間の接触情報をクラウドに上げ、接触者に情報が届くという仕組みだ。
北韓道大学発のスタートアップ3社(アウル、調和技研、TIL)が新型コロナ感染防止のため、AIシステムを使って接触の回数を自動的に数える仕組みを開発する、と8日の日経地方版が伝えた。小売店にカメラを設置、来客者と店員の数と密度を数え、一定数を超えたら警告するという。生活に不可欠な小売店での感染リスクを減らすため、3密(密集・密接・密閉)を避けるシステムとなる。3社はそれぞれ画像認識、機械学習、音声認識が得意で、顧客が大声でハラスメントを行う場合は音声認識でトラブルを検出する。
テレワークやオンライン学習を支援するため、KDDIは2019年に地方創成ファンドを設立したが、5Gと併せて、地方での起業を支援する。岩手県立大学や長野県立大学、福井高等専門学校などと提携、企業支援のエコシステムを構築していくという。
またセイコーエプソンは、ベンチャーキャピタル「エプソンクロスインベストメント」を設立した。資本金は1億円。これまでエプソンは、M&Aやスタートアップへの提携を通じて10年間で100億円を投資してきたと9日の日刊工業新聞は報じている。