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学校休校で判明した教育現場でのITデバイス導入の遅れ

新型コロナウィルスの影響で多くの企業がテレワークを認めるようになり、離れていても仕事ができる環境が増えつつある。もちろん実験設備や現場の設備を使わなければ仕事ができない職場もある。とはいえ、休校になった学校で、タブレットやパソコンなどITデバイスを使った教育が驚くほど遅れていることが3月14日の日本経済新聞に報じられた。

日経の記事は、中学校の新入生にタブレットを購入させていた和歌山大学教育学部付属中学校の事例を紹介していた。新型コロナウィルスのために休校になったと共に、ウェブ会議アプリを使った授業を始めた。生徒はタブレットを見ながら先生と質問や問題の意味などをやり取りする。ただし、「こういったオンライン学習への対応ができている学校は一部にとどまり、前提となる端末さえ児童生徒に行き渡っていない。教育でのIT機器活用拡大を目指し、文部科学省は2023年度までに小中学校で一人1台の端末環境を整備する計画だが、19年時点の全国平均は5.4人に1台にとどまっている」と報じている。

オンライン授業では、テキストはインターネットを通じて常に更新できるうえ、生徒はゲーム感覚で答えを入力することで知識が吸収されやすい。教師にとっても穴埋め問題はデバイス側が自動的に採点できるため、教師の採点作業が要らなくなり負担は軽くなる。何よりも生徒の成績が可視化されることで、教師の働き方改革にもなっている。今回のように休校でオンライン授業ができれば、どうしてもじっくり聞かなければわからない疑問点だけを直接、教師と面談できるようにしておけばよい。教師の負担はかなり軽くなるはずだ。

日経は「1週間の数学の授業で『デジタル機器を利用しない』という日本の生徒は89%。OECD(経済協力開発機構)加盟国平均を34ポイント上回り、新しい技術への消極性が浮かぶ」と述べているが、それだけ日本のIT教育が遅れていることを示している。全国一斉休校ということで、従来の紙ベースのドリルやプリントと、オンライン授業への取り組みによって教育の格差が生まれる懸念が出てきた。

新型コロナウィルスによる企業のテレワークは、働き方改革がつながる可能性も大きい。テレワーク向けシステムを手掛けるIT企業は一時的に無償でサービスを提供する消すが増えていると15日の日経MJが報じている。テレワークサービスは、日経クロステックによれば、ウェブ会議やチャットツールなどのコミュニケーション支援、リモートデスクトップやVPNなど業務環境のリモート化、さらには自治体の問い合わせ対応や会計ソフトなど60種類にも及ぶとしている。

中国では、AppleのiPadが品薄になっている、と12日の日経が報じた。教育機関の一斉休校により自宅学習で使うオンライン授業向けでiPadの需要が急増しているという。AppleはEMS(製造委託会社)に増産を要請しているが、生産の停滞が壁になっているようだ。「北京市などでは1月末の春節(旧正月)後の授業再開が延期され、小学校から大学まで休校が続き再開のメドが立っていない。5000万人以上の生徒がネット大手アリババ集団のチャットアプリ「釘釘」を通じ授業を受けているとされる」と報じている。

IT教育の一環として、ITビジネスを発展させるためのコンテストや研修の機会も増えている。光関連デバイスの第一人者である浜松ホトニクスの社長の晝馬明氏は、光産業創成大学院大学の理事長も兼務しており、光産業創成大学院大学は、光技術を使った事業計画を競うビジネスコンテスト「フォトニクス チャレンジ 2020」を1月に開催した。晝馬氏は、「光はいまだ未知未踏に満ちあふれている。新たなビジネスや産業を創り出そう」と呼びかけたという。

IT産業界で人材不足が指摘さえている分野がAI(人工知能)だ。ソニーネットワークコミュニケーションズ(SNC)は、写真素材販売サイトのピクスタ(東京・渋谷)と共同で、画像分類AIの開発コンテスト「ニューラルネットワークコンソールチャレンジ」を開催する、と13日の日経が報じた。その募集期間は3月4~27日。SNCが提供するAIアプリの開発ツールを利用し、写真などから学習データを作る前処理と、AIモデルを作る作業を競う。

(2020/03/16)
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