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コロナウィルスを逆手に取るビジネス、回復期に向けた技術開発も進む

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新型コロナウィルスが蔓延する中で、マイナスの影響を予測して景気の下方修正が出ているが、逆にこれをプラスに転じさせようというビジネスも現れた。また、回復期に備え、企業と大学のいわゆる産学共同や企業同士のパートナーエコシステムの構築なども盛んになってきた。

IT市場調査会社のIDCは、スマートフォンの世界出荷額が2020年に2.3%減の13億3980万台にとどまるという予測を発表した。2019年11月には同1.5%増の14億360万台と予測していたため下方修正となった。特に2020年上半期は前年同期比10.6%減とみており、今年後半に5G携帯・スマホが本格化し始めるため、プラスに転じるが、トータルで2.3%減になると予測した。2021年には回復し、前年比6.3%増の14億2420万台を見込んでいる。

新型コロナウィルスの産業への影響はまだはっきりした数字としては出ていないものの、台湾のIT/エレクトロニクスの代表的な企業19社の1月の売上額は前年同月比9.9%減となったと2月27日の日経産業新聞が伝えた。これは旧正月の影響で営業日が少なかったことが主因だとしている。

新型コロナウィルスによる需要を見込む企業も現れている。ファブレス半導体のザインエレクトロニクスは、AIによる顔認証機能を備えた非接触型の体温検知システムを3月までに始める、と2月28日の日経産業が報じた。最大16人の体温を同時に検出できる。赤外線温度計の参照体としての黒体も利用することで精度が上がり、16人を同時に測定できたとしている。ザインエレクトロニクスは元々ファブレス半導体企業として出発したが、AIとIoTを組み合わせたAIoTを使ったソリューションも展開するようになっている。AIoTソリューションはグループ会社のキャセイ・トライテックが提供する。中国のAIスタートアップ、YITUテクノロジーと共同で提供する。

Cisco Systems社は、遠隔のテレビ会議システムであるTelePresenseやWebexなどを提供しており、3月2日の日本経済新聞に日本法人のDave West社長とのインタビュー記事が掲載されている。これによると、Ciscoは「不測の事態に陥っても、ITを活用して社会や企業が活動を続けられるように。誰もがどこからでも安全に働ける環境を整備するためのデジタル技術を揃えている」と語っている。

新型コロナウィルスの半導体市況への影響は、これから出てくるものの、回復期が来れば需要の急増がありうるとの株式市場の見方を26日の日経が伝えている。特に後半には5G需要が戻ってくると見ている。

需要回復期に合わせ、ソリューション開発も進んでいる。ソリューション開発にはパートナーが欠かせない。本格的な産学共同も進んでおり、先週には3件のニュースがあった。ダイキン工業は、2020年から東京大学との協業予算を2倍の年20億円に引き上げると3月2日の日経産業が報じた。100名規模の研究者を受け入れ、効率の高い熱交換器を共同研究する。また、大阪大学とはAIを使いこなす社員を育成する。ダイキンには空調技術者は多いが、化学やITなどの知見を求めて大学とパートナーシップを組む。

JVCケンウッドは、昨年10月に認知症の早期診断向けに視線計測装置「Gazefinder(ゲイズファインダ)を大阪大学の医学系研究科のグループとの共同開発を発表したが、この開発にエーザイも加わっていることを27日付の日経が明らかにした。このシステムでは、横幅40cmのモニター上に図形や数字、魚の絵などの画像を映し出し、「上と同じ図形を見つめてください」、「仲間外れの絵を見つめてください」などの問いに見るだけで応えるという。およそ5分で結果を点数で表示される。従来の認知機能検査では、専門医による問診が主流で、簡単なものでも20分程度かかっていた。検査する側に一定のスキルが求められ、患者にも長時間の負担を強いていた。

ソフトバンクは北海道大学と協力して、AIを使ったチョウザメの効率的な養殖についての共同研究を始めた、と27日の日経が伝えた。養殖場にカメラを設置しリアルタイムで監視する。収集した映像から機械学習でチョウザメの行動を分析、異常行動や病気の早期発見につなげる。ソフトバンクは、今後チョウザメを飼育する企業や自治体に養殖技術を提供する見込みだとしている。

(2020/03/02)

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