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新型コロナウィルスの製造業への影響が出始める

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新型コロナウィルスの影響が2020年第1四半期の業績に出てきそうだ。先週、日本経済新聞がさまざまな角度から分析している。また、コロナウィルス収束後の回復に備えた研究開発の動きも始まっている。SamsungやTDK、中国紫光集団、スタートアップ企業も活発になっている。

2月17日の日経は、2020年第1四半期(1〜3月期)の世界企業1万2000社の業績見通しをQUICK・ファクトセットを通じて分析した。2019年第4四半期は前年同期比16%増だったが、20年第1四半期には同5%増に留まるとした。特に中国は同期間に16%減とマイナスに転じるとみている。自動車メーカーの業績が懸念され、新型コロナウィルスによる春節の後の工場停止期間があり、今週(17日から)再開される企業が増えている。1月の新車販売は前年同月比で18%減となり、電気自動車大手のBYDは42.7%も減少したとしている。

海外企業の中国工場の稼働率も落ちている。米産業機器やオートメーションの大手のEmerson Electricの中国工場の稼働率は5割にとどまり、20年第1四半期は7500万ドル〜1億ドルの売上額が減少すると見ている。建機大手のCaterpillarも20年12月期には1株当たりの利益が減少するとの見通しを発表している。日本企業も20年第1四半期には前年同期比6%減益になりそうだとしている。

英市場調査会社Informaの日本調査部ディレクタの南川明氏は、中国の工場が1カ月停止すると世界の電子部品産業は5000億円の影響を受けると試算した。半導体は、中国で生産している金額は小さく、しかも中国内向けがほとんどであるため影響はほとんどないと見ている。しかし、受動部品などが滞れば、装置やデバイスの生産ラインも滞るため、半導体の在庫が増え影響は受けるだろう。

つまり中国での生産には世界中の部品が使われ、中国以外の生産でも中国製の受動部品やディスプレイ部品が使われているため、世界的なサプライチェーンが大きな影響を受けることになる。中国からの部品が滞ると、日本国内工場の稼働が止まるのである。9日に報じられた日経と日本経済研究センターの試算によると、中国の製造業の生産が100億ドル減ると、海外での生産や販売は67億ドルを押し下げることになるという。

コロナウィルスが収束した後の新しい需要を見越す開発も進んでいる。Samsungは動画配信のNetflixや、XboxゲームのMicrosoft、音楽配信のSpotifyなどと提携し、Appleの定額コンテンツサービスを追撃する。Samsungのスマートフォンに、これらのコンテンツをサービスする仕組みを盛り込むようだ。

TDKは買収したInvenSenseやChirp MicrosystemsのMEMS技術を伸ばしていく考えを12日の日経産業新聞が報じた。InvenSenseの6軸の加速度+ジャイロセンサをトラクタや産業用ロボットに向け、Chirpの超音波MEMSセンサを使ったToF(Time of Flight)測距センサを民生用のドローンなどに組み込む。

中国の投資会社でありメモリ半導体メーカーでもある紫光集団に副総裁として入社した坂本幸雄氏のインタビュー記事も12日の日経産業に掲載されている。同氏はDRAMを担当、NANDフラッシュの開発は米西海岸が担当しているという。DRAMグループには旧Qimondaのエンジニアが200名ほどいるため、彼らを活用したうえで、中国人200名、日本人100名の体制を作ると述べた。ただし、人集めは難しそうだ。セミコンポータルがSEMI ChinaのプレジデントであるLung Chu氏に昨年12月にインタビューしたとき、「電子工学科の学生は、Tencentや百度、アリババなどインターネット企業に就職したがるため、半導体分野にはなかなかやってこない」と嘆いていた。

スタートアップでは、Snowflakeの日本法人がサービスを始めた、と12日の日経産業が報じた。同社はAWSやMicrosoft Azure、Google Cloudなどのクラウドを借りて、その上でデータ分析基盤を貸し出すサービスを提供する。クラウドの世界は、仮想マシンを大量に揃えているが、Snowflakeは分析すべきデータ容量に応じて、処理するコンピュータ(仮想マシン)の性能を柔軟に選択できるサービスを提供する。大容量のデータを短時間で処理したい場合には高速コンピュータ、時間に余裕のある時は割安なコンピュータ、と使い分けることができる。

NTTドコモは、スタートアップに出資するNTTドコモ・ベンチャーズが開催したスタートアップ企業の技術展示会を開いた、と14日の日刊工業新聞が報じた。日本のスタートアップだけではなく、米国やイスラエル、英国のスタートアップにも出資しており、VRやAI、SNSなどのサービスを紹介している。

(2020/02/17)

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