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ロームやHOYAなど攻めの投資が目立ってきた

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半導体産業の成長を見据えた積極的な投資が目立ってきた。ロームが600億円をSiCの増産に投資、パワー半導体での地位を確立する。SamsungがNANDフラッシュの西安工場に80億ドルを投資するなど海外メーカーは今に限っていないが、国内メーカーも積極的な攻めの投資をし始めた。海外への投資が目立つ一方、海外企業の日本市場への攻めも始まった。

12月14日の日本経済新聞は、ロームが600億円規模の投資を報じた。すでに生産ラインを持つ宮崎県の工場では25年3月期までの増産だけではなく、新規に福岡県筑後市に新工場の建設を開始した。2009年に買収したSiC結晶インゴットの工場SiCrystal社でもウェーハ増産を計画しているという。もともと家電用半導体が強かったが、国内の家電メーカーが軒並み衰退、半導体も落ち込んできた。ロームは脱家電を謳うものの、なかなか抜け出せないでいた。SiCはInfineon Technologyがオーストリアのフィラハに新工場を設立することを昨年発表しており、SiCがクルマに搭載されると不足することは間違いないためだ。

コネクタメーカーのヨコオは半導体をテストするプローブの生産能力を4割増強するため、2020年にマレーシア工場に設備を投入、マレーシア工場の能力を6割引き上げ年産500万個に上げる。日本の既存工場と合わせると全体で生産能力は4割上がり、年産700万個になる。米国や台湾の半導体メーカーからの引き合いが増えているためだと12日の日経は述べている。

東ソーは韓国ソウル近郊で半導体製造に使う石英ガラスの工場を建設する、と12日の日経は報じた。2020年3月までに現地法人を設立し、21年はじめに石英ガラスの加工工場を稼働させる。投資額は数十億円だとしている。石英ガラスは半導体製造工程のあらゆるところに使われており、半導体メーカーは言うまでもなく製造装置メーカーも顧客になる。

今後のクルマ用半導体の開発に向け、トヨタ自動車とデンソーが新会社を設立することをすでに明らかにしているが、その会社名が決まった。「ミライズテクノロジーズ」である。デンソーの先端技術研究所に本社を置き、従業員500名でスタートし、これから増員していく。資本金は5000万円で、デンソーが51%、トヨタが49%を出資する。インバータやオンボードチャージャー向けのパワーエレクトロニクスと、LiDARやミリ波レーダーなどのセンシング、信号処理や制御のSoCという3領域を主力に据えている。

半導体マスクメーカーのHOYAがニューフレアテクノロジーに対して仕掛けた買収提案も積極的な攻めの戦略である。TOB(株式公開買い付け)を実施し、最大1447億円を投じて全株取得を目指す。16日の日経産業新聞によると、2017年以降、ニューフレアに対して複数回、提携を打診していたという。しかし、返事がどうだったのか明らかではないが、11月13日にはニューフレアの支配株主である東芝デバイス&ストレージ社によるニューフレア株式を公開で買い付けするというアナウンスをニューフレアが発表した。事実上のHOYAによる買収拒否宣言である。その一月後に当たる12月13日にHOYAがニューフレアの株式を公開買い付けすることをニュースリリースで発表した。

HOYAによると、東芝のニューフレア株の買い付けを発表して一月経ち、東芝側の公開買い付け期間の12月25日までにニューフレア株が売却されない場合に、HOYAが公開買い付けを行うというもの。HOYAとしては東芝の買い付け価格よりも1000円高い1万2900円を1株あたりの価格に設定した。

HOYAはこれからのEUV用マスクブランクスやフォトマスクを製造しているが、フォトマスクの形成には電子ビーム露光技術が欠かせない。電子ビーム露光装置はニューフレアが製造しており、ニューフレアを手に入れられるようになるとガラスからマスクブランクス、フォトマスクまで全てワンストップで用意できるようになる。

一方の東芝は、これまでにニューフレアの公開株式を実施しても、企業としては守りの姿勢から脱出できていない。HOYAが電子ビーム露光装置部門を欲しいと言っても応じなかったのではないだろうか。HOYAに対してむしろ「敵対的に」ニューフレアを買収しようとした姿勢は守り以外にない。東芝デバイス&ストレージ社の攻めの姿勢、すなわち成長戦略が提供されるのはいつになるのだろうか。

(2019/12/16)

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