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キオクシアでの船出始まる、データセンター需要も回復で好スタート

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東芝メモリが10月1日から「キオクシア(KIOXIA)」と社名を変更した。先週は、その直前の9月30日に、Western Digitalの技術&戦略担当プレジデントのSiva Sivaram氏とのインタビュー記事や、四日市工場への投資計画などの記事、HDDのディスクを生産する昭和電工の記事などSSDとHDDの記事が、新生キオクシアを後押ししている。

キオクシアと社名を変更したのは、東芝メモリの株主構成として東芝が40%程度、残りの日米韓連合が60%となり、東芝が少数株主になったことで、東芝の名前を消すことになった。キオクシアという社名は、記憶(Memory)を思い浮かべることで日本人には比較的なじみやすいが、外国にはKから始まる社名は少なく、外国の半導体企業ではほとんど聞かない。MEMSデバイスの生産でKionix(カイオニクス)という企業はあったが、今はロームの傘下に入っている。読み方として「キオ」ではなく「カイオ」と読まれる可能性もある。辞書を引いても、Kioと続く単語は非常に少なく、Kiosk(キオスク)とKiowa(カイオア族)しか見当たらない。

9月30日の日刊工業新聞は、「(東芝メモリは)四日市工場に最先端3次元(3D)NAND型フラッシュメモリの製造棟を新設する。2020年12月に着工し、22年夏の完成予定。総投資額は最大3000億円の規模を見込む。20年9月に計画する新規株式公開(IPO)で調達する資金の一部も充当する」と報じた。さらに、四日市工場の近くに用地を取得し、次世代3DNAND型フラッシュを生産する「第7製造棟」を新設する方向だとしている。日刊工業は「すでに社内にプロジェクトチームを立ち上げ、詳細の検討に入った。総額1500億〜3000億円に上る一連の投資は、提携する米Western Digitalと分担するとみられる」と続けた。

これまでも四日市工場は、WDと投資を分担し、1社だけの負担を軽くするパートナーシップ投資を取ってきた。しかし、2年前は東芝経営陣とWDがメモリ事業の売却を巡り難しい交渉を繰り返してきた。しかし、現場は友好関係を保ちながら仕事していたため、この当時は業務がやりにくく、効率が落ちたようだ。現在は元通りの友好関係に回復し、共同でウェーハ生産を運営できるようになった。6月の停電事故による一時停止に関してもSivaram氏は、30日の日経産業新聞のインタビュー記事の中で、「当社(WD)やパートナー(旧東芝メモリ)のエンジニア、従業員が一生懸命頑張った結果、現在は正常な生産体制に戻った」と東芝のエンジニアに対しても敬意を表している。

今後のNANDフラッシュの市場は、飽和したパソコンやスマートフォンではなく、データセンターであり、昨年から今年にかけて在庫調整に追われたが、今後の成長が期待される市場であることは間違いない。というのはデータセンターにはクラウドコンピュータがあり、企業ごとのオンプレミスではなくクラウドも一緒に使う方向が見えているからだ。クラウドの拠点となるデータセンターは、AmazonやMicrosoftでは1カ所や2カ所ではなく、巨大なキャンパス敷地に一つのデータセンターを世界中に数十カ所設けてあり、しかも2〜3年おきに新しいアーキテクチャが生まれ、それに必要なストレージも増えてきている。

WDのSivaram氏によると、顧客のビット需要は年率30〜35%で増えているが、供給過剰にならないように、注意深く見ていきたいという。これからのデータセンターでは、ストレージシステムにSSDとHDDがバランスよく、両者ともビット需要を増やしていき、SSDがHDDを全て置き換えることはまずありえない。ビットコストは、HDDの方がSSDよりもずっと安いからだ。

ただし、メモリ階層構造の中で、HDD、SSD、ストレージクラスメモリ、DRAMメモリモジュールがこれから普及していくだろうが、東芝はNANDフラッシュをTLCやQLCのような高集積に向かうだけではなく、SLCのように高速化することでストレージクラスメモリという提案を、学会レベルだが、している。Sivaram氏は「新しい不揮発性メモリの研究も進めているが、今後5年以内にNANDに取って代わることはないだろう」と述べており、新型メモリがストレージクラスメモリにはならないと見ている。

またHDDのキャッシュとしてNANDフラッシュを使う方法が普及しつつあり、ここにもNANDの需要が確実にある。WDはSSDもHDDも両方持っており、お互いに食い争うのではなく、両方で組み合わせる需要を取り込むことができる。しかし、キオクシアは、NANDフラッシュしか持っていないためSSDしか発展させられない。HDDは東芝デバイス&ストレージ社が持っており、HDDとSSDとのシナジー効果を生みにくい。

HDDでは、ハードディスクを生産している昭和電工は10〜12月期の生産設備の稼働率を前期比で2割引き上げる、と10月1日の日刊工業が報じた。データセンターや監視カメラ需要が回復しているためだとしている。HDDはデータセンター需要が前期7〜9月期は前年並みであり、これからは今年の第4四半期のデータセンター需要は1年前よりも増えると見ている。

(2019/10/07)

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