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IoTの活躍の場が広がる、工場から小売り、デジタルツインにまで拡大

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IoTでは夢物語から現実問題の解決に事業化が活発になってきた。モータやロボットの大手、安川電機がIoTを使い、顧客の工場の稼働状況を監視するサービスを始め、小売業でユニクロを経営するファーストリテーリングはRFIDを商品に取り付け在庫管理を自動化している。さらにデジタルツインにもIoTデータを活用する例も出てきた。

安川電機は、2019年6月にIoTデータの収集から管理、可視化、保存、解析までを担うプラットフォームともいうべきソフトウエアツール「Yaskawa Cockpit」をリリースしたが、事業を担当する責任者のインタビュー記事が23日の日経産業新聞に掲載された。同社は、顧客の工場に導入したモータのトルクをリアルタイムで常時監視しておき、不具合を検知し、故障の予測につなげるとしている。すでに取引先へ導入し始めており、2021年度までに1000社の利用を目指すと野心的な目標を掲げている。

「Yaskawa Cockpit」は、エッジコンピューティングにインストールされ、リアルタイムでデータを収集し、実行する。エッジで解析した情報をパソコンやPLC(Programmable Logic Controller)にフィードバックし、可視化する。このことで、生産の無駄を見ることができ、効率を上げることに使う。

8月21日の日本経済新聞は、IoTシステムがサービス業にも拡大している様子を報じた。ファーストリテーリングは、ユニクロとジーユー(GU)のほぼ全商品にRFIDタグを取り付け、無線通信でタグを読み取り、商品に直接触れることなく、商品のサイズや製造時期、価格などの情報を得ることができる。複数の商品を同時に読み取ることができるため、在庫管理の手間が大きく減った。従来は1枚ずつバーコードやQRコードで読み取っていた。これによって、倉庫内の人員は従来より9割も減った。商品の入庫作業の速度は80倍、出庫速度は19倍に上がったという。UHF帯のRFIDのタグの単価は10円程度になったことが普及のきっかけとなった。

従来防犯目的だったカメラをIoTセンサとして使うことで、購買分析ツールに変えることができる。ディスカウント店大手のトライアルホールディ ングス(福岡市)は、4月に新装開店した福岡県新宮町の店舗に1500台のAIカメラを導入した。人物や商品をカメラが認識し、来店客がどの商品に触れたかの特定や、棚単位での細かい商品の売れ行きを把握できるとする。

米化粧品大手のプロクター・アンド・ギャンブル(P&G)は1月の展示会でIoT機能を盛り込んだ化粧水ボトルを発表した。ボトルには開閉センサや無線通信機能を内蔵、スマートフォンなどと連動させ、フタの開閉などからユーザの利用状況を記録する。集めたデータは、化粧水が残り少なくなった際などの効果的な販促や、新商品の開発などに役立てるとしている。

現場の工場や建物を、コンピュータシミュレーションで全く同じものを作り出す、デジタルツインにもIoTの活用がある。コンピュータシミュレーションで工場や建物を描くだけではなく、建物に使われているレンガやコンクリート材料の温度変化や強度劣化などをIoTセンサからのデータでとらえ、シミュレーション図面に重ね合わせることで、どこが劣化しやすいかを可視化でき予測につなげることができる。

東芝は阪神高速道路会社と組み、神戸市に実在する東神戸大橋をコンピュータシミュレーションで精緻に再現した。実物に加速度計や風速計を取り付け、風や自動車の通行に伴う揺れもシミュレーションモデルに取り入れた。コンピュータで、さまざまな条件を振ることで橋の状態が探れる。コンピュータシミュレーションの条件と実際の揺れのデータから劣化に至る期間をある程度予測できる。2025年以降の応用を目指すとしている。

(2019/08/25)

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