半導体市場の明るいニュースが続出、設備投資・CMOSセンサ増産
半導体市場に明るさが出てきた。直近の2019年4〜6月期の決算は良くないものの、今後に向けた投資の動きが出てきた。さらに株式市場でも半導体関連株が上昇している。長期的に半導体が成長産業であることが認識されたようだ。AppleがIntelの5Gモデム部門買収を決めというニュースもあった。
日本電産が発表した2019年4〜6月期の連結決算は減収減益となった。連結売上は前年同期比3%減の3608億円、営業利益はどう39%減の279億円となった。この原因を中国経済がまだ良くなっていないからだというコメントを7月25日の日本経済新聞が掲載した。部門別の売上額では、家電・商業・産業用の製品が3%強、車載向けも2%強の減収だったという。
韓国のSK Hynixは、NANDフラッシュの生産を昨年に比べ15%減らすと25日に発表した。これは4〜6月期の決算発表で明らかにした。前回の発表時には10%減産すると表明していたが、ASP(平均単価)が前四半期比で25%減少したことでビット出荷数は40%高まったとしている。また、4~6月期の連結売上額は前年同期比38%減の6.45兆ウォン(1ウォン=0.092円)、営業利益は6380億ウォンと営業利益率は10%弱になり、前年同期の54%から大きく落としている。DRAMの値下がりは続いており、前四半期比でビット出荷は13%増加したものの、ASPは24%減となっている。対韓国規制の影響はまだ出ていない。
2017年~2018年のメモリバブルから一転、メモリ不況が続いている反面、CMOSセンサは好調に推移している。スマートフォンの台数が飽和し始めているものの、1台に3〜4個へと複眼化へと進んでいるからだ。25日の日経産業新聞は、ソニーのCMOSイメージセンサの2018年における世界シェアが50.1%になったとIHS Markitの発表を元に報じた。ソニーの国内工場の稼働率が高止まりしており、20年度までの3年間で6000億円の設備投資になるとしている。また、長期需要を見越してさらに1000億円規模の新棟建設も検討していると報じた。
SK Hynixはメモリ不況を乗り切るため、韓国仁川工場のDRAMラインM10 FABでのDRAM生産を中止し、CMOSセンサの生産へ19年後半から切り替えるという。DRAMの生産能力を減らし、CMOSイメージセンサ事業を強化する。
半導体の長期的な成長を見込み、日立ハイテクノロジーズは半導体製造装置の新工場を茨城県ひたちなか市に建設すると25日の日経が報じた。総投資額は300億円で2021年2月に竣工する予定だという。
また信越化学工業は、4〜6月期の連結売上額が1%増の3862億円、純利益は14%増の840億円となった、と25日の日経が報じた。収益をけん引したのはウェーハ事業で、その営業利益は前年同期比31%増の394億円となった。300mmウェーハの値上げが奏功し長期契約で価格が徐々に上がる契約になっているという。
24日の日経は、主な半導体関連銘柄で構成するフィラデルフィア半導体指数(SOX)が3カ月ぶりの高値を付けたと述べた。Micron Technologyが4%高、東京エレクトロンが3%高、Applied Materialsが6%高、TDKが2%高だったとしている。株式市場ではフラッシュメモリの回復が今年の後半に早まると期待されている。
AppleがIntelのモデム(変復調器)部門を1000億円で買収するというニュースが業界を賑わした。Apple、Intel共にニュースリリースを発表した。旧Infineon Technologies本社(ミュンヘン)の敷地内にあるIntelのモデム開発部門をAppleが買収する。数カ月前にAppleとQualcommが特許論争で和解するというニュースがあったが、その直後にIntelは5Gモデム開発を断念すると発表した。Intelはデータセンター事業に注力しており、HPC(High Performance Computing)だけではなく通信インフラのコア局へもビジネスを展開している。民生用のスマホビジネスには関心がなく、スマホ用のモデム事業は手放したかった。今回Appleが買ってくれるというので、IntelとしてはうれしいM&Aとなる。Appleはこれによって5Gモデム設計を確立すれば、Qualcommのチップは不要となる。TSMCをはじめとするファウンドリにとっては、顧客がAppleに代わることになるだけで、影響はほとんどないだろう。