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東芝メモリがキオクシアに社名変更、半導体景気が上向き始める

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東芝メモリが2019年10月1日に社名を「キオクシア株式会社」と変える、と発表した。事業会社の東芝メモリグループを統括する持ち株会社の東芝メモリホールディング株式会社はキオクシアホールディングス株式会社に変更する。また、半導体産業が上向き始めたというシグナルが出始めてきた。

東芝メモリが社名を変更するのは、49.9%の最大株主が、Bain Capitalをはじめとする日米韓のPangeaグループで、東芝は40.2%の株式を持つが、2番目なので子会社関係はない。このためPangeaグループは東芝という名称を外すことにしたようだ。ちなみに、キオクシアとはメモリを意味する記憶(キオク)とギリシャ語で価値を表すaxiaを組み合わせて、付けた名称だとニュースリリースで述べている。英語では、Kioxia Corporationと表記する。

これに合わせて東芝メモリの関連会社も「キオクシアxx」と変更する。例えば東芝メモリシステムズはキオクシアシステムズに、東芝メモリ岩手はキオクシア岩手に変更する。キオクシアのミッションは、「記憶の可能性を追求し、新しい価値を作り出すことで、これまでにない体験や経験を生み出し、世界を変えていく」としている。東芝からは独立した企業となって自らが自由に運営していける会社となる。新社名の表示、包装表示、ラベル名、ロゴなどは10月出荷分から順次変えていく。

半導体産業の景気が上向いてきたことを示すサインが出てきた。TSMCが2019年第2四半期(4〜6月)の売上額は前年同期比1.4%減の77.5億米ドルにとどまった、と7月18日に発表した(参考資料1)。ただし、為替の影響を受けているため、台湾元ベースでは3.3%増の2409億9900万元である。しかも第1四半期に予測した見通しは75.5〜76.5億ドルだったため、実績はこれよりも上向いている。しかも、第3四半期の見通しは91〜92億ドルと1割近く成長することを明らかにした。

この結果を受けて、19日のTSMCの株価が台湾株式市場で前日比3%近く上昇した、と20日の日本経済新聞が報じた。TSMCはAppleのiPhoneの心臓となるアプリケーションプロセッサの製造を担当しているだけに、今年のiPhoneの新製品による売り上げ増が期待される。また、TSMCの売り上げと第3四半期の見通しを受けて、Applied Materialの株が4%、東京エレクロトンの株も3%上昇し、アドバンテストの株も一時8%まで値を上げた。

TSMCの業績発表を報じた19日の日経朝刊の見出しは、「TSMC、スマホ低迷重く、4四半期連続減益、4〜6月は10%、反転攻勢へ大型投資も」とネガティブに表現されていた。また、営業利益という表現だけで記述しているため売上額はこの記事では示されていなかった。しかも、営業利益に相当する英語は、辞書にはOperating Incomeとあるが、むしろ経常利益に近い。TSMCのOperating incomeは、利益率が31.7%であるため、28.4億ドルとなり、米ドルで表現すれば前年が24.57億ドルであり、10%減の利益というほどではない。ただし、為替の影響で元建てだと10%減で記事に間違いはない。

また、DRAM価格も輸出規制発動前に比べ9%高くなっている、と18日の日経が報じた。韓国への半導体材料の実質規制によって供給が細くなるとの観測から、メモリを確保しておこうというユーザーの思いが反映されており、一時的な値上がりで在庫はダブついている、というアナリストのコメントも掲載されている。これらの結果からは、メモリが回復しているのか、一時的な思惑なのか、現時点では判断できない。

TSMCの売り上げの半分近くが16nm以下で、16nmプロセスが23%、10nmが3%、7nmが21%となっており、微細化すればするほど売り上げ単価も大きい。このため微細化プロセスこそが、TSMCの収入の強い源泉となっている。応用別では、データセンターなどのHPC (High Performance Computing) が対前四半期ベースで23%増と急増している。


参考資料
1. TSMC Quarterly Results

(2019/07/22)

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