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華為への制裁が続き、Computexの話題しぼむ

中国の華為科技(ファーウェイ)への制裁は先週も続いており、5月28日から台北市で開催された世界最大のコンピュータ展示会Computex Taipeiの報道は、ArmやAMDへの華為に対する考えを聞くインタビューなどが紙面を賑わした。国内でも経済産業省が対内直接投資に係る事前届け出対象業種の追加を発表した。

5月27日の週間ニュース分析(参考資料1)で扱った華為に対して米国への輸出禁止から始まり、IntelやQualcommなど米国製半導体の華為への供給制限から供給停止、さらにArmのライセンス供与を停止、という一連の措置があった後も、華為を巡る話題は続いた。

28日の日本経済新聞は、Computex Taipeiでの講演に参加したAMDのLisa Su CEO、30日にはArmのIan Smithバイスプレジデントへのインタビュー記事がそれぞれ掲載された。AMDは華為にパソコン用のCPUを提供しているが、同社のトップは華為へのライセンス供与など技術移転は今後ないと言明している。Armは、華為の半導体子会社であるHiSiliconにモデムやアプリケーションプロセッサ向けにCPUコアをライセンス供与しているが、スミス氏は「米国の規制を順守しなければならない」と述べた。華為を価値あるパートナーと位置付けながらも取引を停止したことを示唆している、と日経は報じた。

華為に対する部品供給やライセンス供与の停止は、華為を追いつめることになるが、今のところは日常業務に影響は出ていない、と華為は28日の日経にコメントしている。しかし、Wi-Fi Allianceは、華為の会員活動の一時停止を決めたほか、電気電子技術者の団体であるIEEEも「米国の規定や法律を順守する必要がある」という声明を出しており、活動の一部を制限するとしている。ただし、華為外しを止める動きもあり、JEDECやSD Associationは華為の会員資格を復活させたとしている。

華為への活動制限を始めとする米中貿易摩擦は、それ以外の中国企業への投資が急速に減衰するなど影響が出てきている。28日の日経は、2019年1〜3月期のフィンテック投資が前年同期比88%減の1億9000万ドルと減少したと報じた。さらに、華為に部品を提供している米国以外の企業の株価は軒並み下落している、と30日の日経は伝えている。カメラ部品を供給している江蘇省のQ Technologyは株価を2週間で27.4%も下げたほか、広東省のバッテリメーカーBYDは19.6%下落、鴻海精密工業が7.2%下落、韓国のSK Hynixは11.2%、浙江省の光学部品メーカーのSunny Optical Technologyも22.9%下げた。

これらの動きに対して、中国でレアアース(希土類)を生産する江西金力永磁科技は習近平国家主席が視察に訪れ、株価が2週間で2倍以上に急騰したという。中国が対米交渉でレアアースを取引材料に使うとの思惑から政府の支援が期待できるとみられている、と30日の日経が報じた。

日本ではそれほど露骨な動きではないが、27日経済産業省のニュースリリースに、「対内直接投資等に係る事前届出対象業種の追加等を行います」という告知が出された(参考資料2)。これには、有線・無線の通信事業として7業種の「情報通信サービス関連業種」と、半導体ICや通信機器産業、コンピュータ産業など10業種の「情報処理関連の機器・部品製造業種」、組み込みやパッケージのソフトウエア業種など3業種の「情報処理関連のソフトウエア製造業種」を対象としている。つまり、コンピュータ・通信・半導体の企業を外国企業が日本で設立したり、日本企業を買収したりする場合には、届け出なければならない、ことになる。

その理由として、「近年、サイバーセキュリティーの確保の重要性が高まっていることなどを踏まえ、安全保障上重要な技術の流出や、我が国の防衛生産・技術基盤の棄損など、我が国の安全保障に重大な影響を及ぼす事態を生じることを適切に防止する観点から、集積回路製造業等を追加する等、所要の措置を講じることとし、(以下略)」とある。つまり、外国企業といっても、この告示は日本の安全保障に脅威を及ぼす恐れのある国の企業を指している。

参考資料
1. 中国の通信機メーカー、華為への打撃が強まる (2019/05/27)
2. 「対内直接投資等に係る事前届出対象業種の追加等を行います」、経済産業省ホームページ (2019/05/27)

(2019/06/03)
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